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イェール大学アートギャラリー(動画No 7)

こんばんわ、お菊です。今回はアメリカ・コネチカット州にあるイェール大学アートギャラリーをご紹介します。なかなか勉強する機会のないアメリカの歴史を勉強するのにちょうどよい作品がたくさんあるので、ご紹介させていただきたいと思っています。


美術館概要

アメリカの名門大学アイビーリーグの一角、イェール大学に付随しています。アメリカ独立戦争期の重要な場面を描いた作品が多数所蔵されていることが私のお気に入りポイントですが、その他にも非常に広い年代に渡るアートを展示する美術館です。今回は歴史画ばかりに触れますが、さくっとバスキアなどのモダンアートが置いてあったり、最新のアーティストの特別展をしていたりとたいへん懐の深い美術館です。

行き方

ニューヨーク・マンハッタンの42丁目グランドセントラル駅からメトロノース鉄道のニューヘイヴン線に乗り、終点のニューヘイヴン駅へ。そこからタクシーで10分、徒歩25分ほどです。マンハッタンからの日帰りも十分にできる場所にあります。チケットは現地自販機でもアプリでも買えます。大学周辺以外はそこまで治安が良いわけではないので、Crime Mapを参考にしてください。アメリカに不慣れな場合はタクシーが良いでしょう。

大学の近くは安全。駅のすぐ近くも治安は悪くないが、駅から離れると寂れてくる

ジョージ・ワシントン

今回はジョン・トランブルという画家によるジョージ・ワシントンの絵画を複数紹介します。その絵画の場面に向かう流れをまとめると、下記のようになるかと思います。太字のものが、イェール大学美術館においてある作品の場面です。ジョージ・ワシントンは言わずと知れた初代大統領ですが、軍を率い重要な戦いに勝利にしアメリカを独立に導いた後に、一旦は自ら辞職しているというのは面白いポイントだと思います。

  • 1688年、名誉革命により英国はアウグスブルク同盟に加盟。英仏の争いが開始。ヨーロッパの争いが北米に伝播

  • 1689年ウイリアム王戦争(プファルツ継承戦争)、1702年アン女王戦争(スペイン継承戦争)、1744年ジョージ王戦争(オーストリア継承戦争)と複数のヨーロッパのお家騒動がアメリカの領土争いに発展

  • 1756年、フレンチ・インディアン戦争が勃発。

  • 1754年、ワシントンは大佐に任命される。

  • 1759年、ワシントンは逆玉の輿で社会的地位を上げる。

  • 1773年、ボストン茶会事件。代表なくして課税なし。

  • 1775年、アメリカ独立戦争が勃発、ワシントンは植民地軍総司令官に任命される。

  • 1776年、独立宣言。

  • 1781年、ヨークタウンの戦いに勝ち、アメリカ独立を決定づけた。

  • 1783年、得られた地位に拘らず、ワシントンは軍人を辞任した。

ジョン・トランブル(1756‐1843)

John Trumbull。独立後の初代コネチカット州知事の四男です。独立戦争時は兵士として戦っていましたが、戦争が終わった後に重要局面を絵画に残す案を思いつき、アメリカ独立戦争時の重要な人物、歴史的なことが起こった場所に赴き絵画の作成しました。10ドル札のハミルトンの肖像、2ドル札の裏面に残っていますし、イェール大学美術館だけではなく、米国議会の円形の大広間(Capitol Rotunda)に見学に行くと見ることができる作品にも多数見られます。

作品紹介

独立宣言、1776年7月4日

The Declaration of Independence, July 4, 1776
John Trumbull
1786–1820

みなさん、2ドル札を手にしたことはありますか?7種類ある米ドル紙幣の中では圧倒的に入手しづらいのが2ドル札です。1975年の発行以降、一度もデザインが更新されていないことでも知られています。その裏側に描かれているのがこのジョン・トランブルによる独立宣言の図となります。米国議会にも巨大な類似の絵があるのですが、参加している人物が僅かに異なっており、イェール大学の作品こそがお札の原画になっているように見えます。
2ドル札に肖像が描かれるジェファーソン、100ドル札に描かれるフランクリン、初代副大統領・第二代大統領のアダムズの顔もあります。

ヨークタウンにおけるコーンウォリス卿の降伏、1781年10月19日

The Surrender of Lord Cornwallis at Yorktown, October 19, 1781
John Trumbull
1819–1820

ヨークタウンの戦いは、アメリカ独立を事実上決定づけられた重要な戦いです。米仏連合軍が、イギリス軍最終拠点であったヨークタウンにて、チャールズ・コーンウォリス率いるイギリス軍約7,000を包囲、降伏させた場面を描いています。
左手のイギリス軍は文字通り白旗を上げ、降伏の意図を示しています。コーンウォリス将軍は体調を崩し、このセレモニーには出席しませんでした。ワシントンは白馬に乗る人物の後方を歩き、今にも絵の中心に出てこようとしている人物です。この後に1789年のフランス革命で活躍するラ・ファイエットや、ニューヨークの要人となり活躍し、10ドル札の肖像となったハミルトンらが描かれています。

ワシントン将軍の辞任、1783年12月23日

The Resignation of General Washington, December 23, 1783
John Trumbull
1824-28

ワシントンは正式な講和が成立するまで最高司令官として軍を率い、1783年アナポリスで辞任し、公的生活から一切の身を引きました。ワシントンが一切の政治的権力を捨てて農場に戻ったことは世界の大ニュースとなり、アメリカのシビリアン・コントロールを決定づけたとされています。しかし皮肉なことに1787年、議会は初代大統領にワシントンを選出し、ワシントンは再度公的な役職に戻ってくることとなりました。

ワシントンの辞任は、ローマ帝国のキンキナトゥス(シンシナティの語源)を見習ったもの(この逸話は2022年9月のボリス・ジョンソンの辞任演説にも登場)とされることがあります。

ボリス・ジョンソンのGood-bye Speech

https://www.youtube.com/watch?v=9Gf5X1BC7tY

(4:40~) And like Cincinnatus, I am returning to my plough, and I will be offering this government nothing but the most fervent support~

キンキナトゥスもワシントンも、辞職後2−4年後に選ばれて政界に戻りました。軍民転換 Swords to ploughshares (Isaiah 2:3-4)が参考にされていると思います。ボリス・ジョンソンも、また政界に戻って来たいという意思があるのかも知れません。

上記キャプチャは、保守党を讃えて、リズ・トラスを指名し、自分の功績をアピールした後、唐突にキンキナトゥスの名前を出した瞬間のキャプチャーです。現在(2024/07)は労働党が第一党ですね。

終わりに

いかがだったでしょうか。イェール大学美術館には他にもこのような歴史画だけではなく印象派、ポスト印象派などのよくある作品群から、モダンアートまで幅広く取り揃えられています。さすがアイビーリーグの一角だな、と思わされる美術館です。なかなか行こうと思わない場所にあると思いますが、行ってみると結構面白い充実度の高い美術館ですので、お時間がありましたらぜひお立ち寄りください。


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