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何度もたまごっちを殺して

我が家には「たまごっち」がある。
1996年発売のオリジナルモデルが2024年に復刻したモデル、「Original Tamagotchi Gen1」というやつだ。
Y2Kブームや、海外における日本カルチャーへの浸透が背景にあるのか、ここ最近、たまごっちのリバイバルブームが起きている。

娘が誕生日プレゼントでリクエストし購入した。しかし、3日後には呼び出し音が鳴ると娘は舌打ちをするようになり、部屋の片隅に放置されるようになった(画面には天使が表示されている)。
たまごっちは9時に起きて22時に就寝する。娘の生活リズムとは微妙に合わないから、お世話も難しい。
娘は自分でお世話はできないが、進化した姿は見たいとのことで、仕事が一番フレキシブルな私にお鉢が回る。

とはいえ、初代たまごっちの世話は非常に難しい。少しでも時間を空けてしまうと、空腹になり、病気になる。
同じ形態で2〜3度病気になると死を迎える。
育成のテクニックとして、たまごっち本体の時間を調整するテクニックがあるらしい。
仕事などで数時間世話ができない場合、時間を22時以降に変更し、強制的に就寝させるらしいのだ。「邪、邪道…」ゲームの育成を小手先のテクニックでクリアして何になるのだ。
そんなに育成のハードルを下げるのであれば最初からたまごっちをしなければいい。そう思っていました。

ゲームともいえど辛くなる

娘の誕生日から早3ヶ月。
その間、2〜3日のスパンでずっとたまごっちを殺してきた。

仕事が立て込んで忙しくなると、どうしてもたまごっちは後回しになる。
気がつくと天使マークに変わっている。
呼び出しにすぐに反応ができるよう、効果音を常にオンにし、ご機嫌アップゲームも頑張る。こうして手塩にかけて育てても、ほんの僅かな気の緩みで死んでしまう。

ゲームともいえど、中々辛くなってくる。
家族から「今たまごっちどうなってる?」と聞かれ、まるっちを見せると、逆算して2日くらい前に一度死んでいることがバレてしまう。「たまごっちって、これで進化終わりなの?」とめちゃくちゃ嫌味のように聞こえる素朴な感想を飛ばされる。
「お父さんだって、頑張って育てて…辛いんだよ」と心の中で叫ぶ。
子どもたちはたまごっちすら育てることができない父親を不安に思っているかもしれない。
(このくだり、もしかしたら「こち亀」でやってるかも)

禁断の方法に手を出してしまう

育成に頭を抱えていた私は、結局「時間操作」という邪道で禁断の方法に手を出してしまう。
仕事で対応が数時間できない時は強制的に22時にし、デスクワークなどですぐに対応可能なときに9時にする。
するとどうだろう。あっという間に、たまっちへと進化した(お世話が上手く行ってる時に進化する優等生キャラクター)。

完璧・理想主義からくる自ら課していたハードルのせいで、悩んでいた育成の難しさが一気に吹き飛んだ。ちょっと楽しいし、初めてたまごっちが可愛いと思えた。

たかが「たまごっち」ではあるが、この育成スタイルは割と個々人の美学や哲学が反映されると考えている。
私も、理想が高すぎるがあまり、重い腰が上がらなかったり、楽しめなかったりすることが多分にある(原稿書く仕事などがそれね)。
勿論、最初から何も考えずに楽な方に飛びつくことはまたそれはそれで違うのだとも思うが、ある程度考えた先に、こうして妥協したり折り合いをつけることもまた大事なのだと学んだ。


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