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フォードvsフェラーリ、これは音の引き算の映画だ!

フォードvsフェラーリをスタジオで聴いてみました。
本当は、映画館に行こうとしてサイトをみたら、上映はとっくに終わっていて配信が始まってました、、。
コロナで自宅自粛していたので、時期を逃してしまったようです。

弊社には7.1chドルビーアトモス対応のホームシアターもあるのですが
音を近くで聴いたりメーターを見たりセンターだけ聴いたり
どんな音作りをしてるか調べる為、AppleTVでレンタルして、スタジオで5.1ch視聴しました。

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ホームシアターは140インチ、スタジオと同じスピーカーメーカーのB&Wで統一してます。映画の中身に浸かりたい時は、ホームシアターで。
音の研究をしたいときは、スタジオで見る様にしてます。

スタジオで聴いて数分で、
「これは映画館で流れた劇場用オリジナルではなく、小部屋用にミックスし直したものである。」と感じました。

理由は、遠くで喋っている俳優さんのセリフが、全て近くで聞こえたからです。最近の映画はそのような作り方になってますが、これは極端すぎる。
という訳です。

そして、「セリフの音量を全体的に上げてあるな」という印象も受けました。通常のミキシングだと、エンジン音がもっと大きく聞こえるだろう
という所も、セリフの方が大分大きかったからです。


エンジン音
自分はケイターハムスーパーセブンに10年乗っていた事があり
このエンジンがフォードのケントエンジンでした。購入当時は、このエンジン音に惚れまくり、たまに深夜の首都高をグルグルしてました。
ウェーバーからの吸気音とか、最高でしたね。

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因みに英国車党だったので、こんなラインナップでした。
この後直ぐジャガーも加わるのですが、完全に病気ですよね、、。
都内マンションの駐車場には1台しか止められず、離れた駐車場を数台借りて、車で車を取りに行くという、訳の分からない行動をしてました。笑


軽さを加える

エンジンに話は戻りますが、自分のスーパーセブンは1700ccで車体重量は約650キロ。これでも十分早く感じましたが、フォードvsフェラーリに出てくるGT40は7000ccで車体重量約900キロ、、。
これは、相当ヤバイ加速をしたと想像出来ます。

映画の中で、車体から部品を下ろすシーンがありますが、あれは英国車的な考え方ですね。「単純化せよ。軽さを加えよ」という発想なわけです。
軽い方が、加速はいいし、ブレーキに負担がかかりにくいですからね。


セリフの扱い方

そんなレーシングカーのエンジン音が、セリフより小さい訳ないです
でもここは映画なうえ、小部屋で聴いても問題ないように、
セリフが大きくミックスし直されていると想像します。

これは音量以外でも、以下のような工夫がありました。
ナレーション的な扱いのものが、フロント左、センター、右の3chから出てました。これも劇場ではセンターのみで出ていた筈です。

一般的な劇場は、このフロント3chのスピーカーを同じものを使いますが
家庭用では、センターが邪魔になるのでスピーカーサイズが小さかったりします。その対策だと感じました。

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引き算
この様な映画は、エンジン音や効果音の派手さのバランスが難しく
全体的にどんどん大きくなっていってしまいますが
とてもバランスが取れて、うまく引き算を取り入れていると感じました。
エンジン音が続くシーンでも、加工で逃げず、音量と引き算をうまくされてました。

因みに自分が作った同じ様な内容は以下のCMです。
監督とブリジストンさんからのご要望で、音は極力足さず、オリジナル音で勝負してくれとのオーダーでした。


エンジン音
ただ、スーパーセブンを乗っていた人間からすると
「そんなにアクセル踏み込んだら、その加速じゃないでしょ」とか
アクセル踏んで、少し経ってからエンジン音が吹け上がるので
「これは、普段この手の車を乗ってない人間が作ってるな?」とも感じました。

失敗も?
撮影方法で失敗してるなと感じたのは、ピットのシーンですね。
あそこはエンジン音や歓声でとてもウルサイので、普通の声の音量では、全く聞こえません。
周りを静かにしてから撮影している筈なので、俳優さんが叫んでないのです。
普通の喋り方でシーンが進んでいきます。
あれは、撮影録音エンジニアが監督に伝えるべき事なのです。


まとめ

途中飽きて食事休憩を挟みましたが、最後までとても楽しめました。
レンタルはこのように、止めたり、もう一度聴いたり出来るのが最高ですよね。
でも、この映画はIMAXで見ておくべきだった、、と反省してます。
コロナがなければ、、いったかも、、。

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沖田純之介 サウンドデザイナー
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