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【フリー台本】隠れ家レストラン シナリオ第二部(男性2 不問1)

割引あり

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【概要】

あらすじ

夢叶えて自分の店をもった料理人のもとに、サラリーマンになった幼馴染が開店祝いに訪れた。
久しぶりの再会に酒を飲みかわしながら、少年の日の不思議な体験を懐かしく思い出す。
それは金木犀の香りがいざなう、二人だけの秘密の思い出話。

情報

声劇台本 3人用
編成   男性2人 性別不問1人
   (少年時代が長いので、男性の配役を女性が演じてもOKです)
上演時間 約40分

短編小説「隠れ家レストラン」を声劇シナリオ向けに再編したものとなります。

全三部中の第二部。
第三部は編成が4人になります。ご注意ください。

登場人物

◆晴翔(ハルト) <男性>
大人時代……二十九歳 男性。 財閥系巨大企業のエリートサラリーマン。
子供時代……九歳。 裕福な共働き夫婦の一人っ子。親の顔色を伺いつつ、基本は品行方正。父親は単身赴任、母親は帰りが遅く、いつも寂しい。
(※モノローグも読みます) 

◆大地(ガイア) <男性>
大人時代……二十九歳 男性。 苦労のすえ、念願の自分の店を持った料理人。
子供時代……九歳。 父親と二人暮らしで、その父親はネグレクトな環境で、遅くまで家に帰ろうとしない。けれど、本人は明るく前向きで、誰とでも友達になるタイプ。

◆令(レイ) <性別不問>
十、十一歳くらいの男の子。自分のことを話さないので、大地ガイアの友達だということくらいしかわからない。歳のわりに大人びた雰囲気

◆ナレーション <レイ役兼>
レイ役の人がナレーション箇所を読みます。
別にナレーション役を立てても大丈夫です。


【本文】

ナレーション(レイ兼)
  都会の裏路地うらろじ突然とつぜんあらわれる森。その森のようなにわけるとこじんまりとしたレストランが現れる。
  閉店近くの時間、店主で料理人の大地ガイアもとに、幼馴染おさななじみ晴翔ハルトが開店祝いにおとずれた。
  二人はカウンターをはさんで、ハルトがお祝いにと持ってきた金木犀きんもくせいの香りがいざなう思い出話に、花をかせていた。

  テーブル席のカップルが立ち上がったことに気がついて、ガイアは、ぱっと顔をあげてレジへと移動し、会計の対応たいおうをした。
  とびらのベルを、カランカランと小気味こきみく鳴らして出ていくカップル客を、ガイアは丁寧ていねい見送みおくる。
  “openオープン”)のふだを“closedクローズ”に裏返うらがえし、入口いりぐちまえいてあった、メニューが書いてあるイーゼルを店内へと運びこんだ。


ハルト
 「ああ、そっか。ごめん。もう閉店だよな。そろそろ失礼しつれいするよ」

ガイア
 「いやいや、ちょっとまって! 閉店したんだから俺も飲むぞ! 付き合ってくれよ。ハルトと会うのも、久しぶりなんだから」

ハルト
 「それは願ったりだけど、いいのかな」

ガイア
 「もちろん! ちょっとだけ、待っててな。テーブル席の片付けだけ終わらせるから」

ナレーション
  ガイアが店内を行ったり来たりと動いて空気がらぐたびに、ふわりと鉢植はちうえのキンモクセイの香りがただよった。ハルトは自然とオレンジ色の小さな花に目をやる。

ハルト
 「そういえばあの頃、からのプリンカップに水って、その中にこの花らして、乾杯かんぱいしてたよね」

ガイア
 「ふふふ、あるぞ、それ」

ハルト
 「ある、って?」

ガイア
 「えっと……たしかこの辺に……」

ナレーション
  ガイアは酒瓶さかびんならたなからある一本を探して取り出すと、カウンターに置いた。

ガイア
 「桂花陳酒けいかちんしゅっていう中国のお酒なんだけどな、白ワインにキンモクセイをんだものなんだ」

ハルト
 「へぇぇ!」

ガイア
 「空のプリンカップに入れたいところだけど、生憎あいにく、用意がないな」

ナレーション
  ガイアはグラスを二つ並べると、桂花陳酒をそそれる。そして、どこからか椅子いすを持ってくると、カウンターをはさんで、ハルトと向かい合わせにすわった。

ガイア
 「はい、乾杯」

ハルト
 「おつかさま。それから、あらためておめでとう」

ガイア
 「うん、ありがとう」

ハルト
 「美味うまいな、これ。あまくて、ジュースみたいだ。あの時の金木犀ジュース、こんな味だったかな?」

ガイア
 「どうだったかなぁ? こんな感じだったような気もするし、ちがう気もするし」

ハルト
 「あのころは本当、ほとんど毎日秘密基地ひみつきちに行ってたなぁ。そこに行けばガイアやレイがいるし、すごく居心地いごこちがよかった」

ガイア
 「うまいことというか、不思議というか、雨風あめかぜも入ってこなかったから、天気悪くても問題なかったしな」



*    *


ハルト(幼少期)
 「ごちそうさま! はぁ……おいしかった!」

ガイア(幼少期)
 「うん、満腹まんぷく!」

ハルト
 「あ、もうおなかはいんないかな? 今日は良いもの持ってきたんだ!」

ガイア
 「そのコンビニぶくろ 気になってたんだ。なにってきたの?」

ハルト
 「お菓子かしだよ。プリンとか、ポテトチップスとか……ほら、ほかにも色々あるよ」

ガイア
「すっげぇ! これどうしたんだよ!」

ハルト
 「最近さいきん、コンビニでお弁当べんとう買ってなかったからさ。よるはんようのお金で買ってきた」

ガイア
 「どういうこと?」

ハルト
 「うち、お母さんが帰ってくるのおそいからさ、毎日テーブルにお金置いてあるんだよね。でも、秘密基地で食べて帰るから、何日か使ってなかったんだよ。
  そうしたら、お母さんが『ちゃんと夕飯食べてる? 何食べてるの?』って」

レイ
 「ああ、なるほど。お金がってないのが不自然ふしぜんだったんだね」

ハルト
 「そうそう。今までもおりがあったら貯金箱ちょきんばこに入れてたから、それ使ったことにしたけど……。これからは、こうやってみんなで食べるお菓子に使ったり、めといたりしようと思って」

ガイア
 「すごいなぁ。いいなぁ! 子どもにお金くれて、好きになんでも買わせてくれるなんて、めっちゃ金持ちだな!」

ハルト
 「そうじゃないよ。ぼくに興味きょうみがないだけ。お金だけわたしとけば、ごはん作るために早く帰って来たりしなくても、コンビニが用意してくれるもんね……」

ハルト(モノローグ)
 (うらやましく見えるかも……けど、僕にとって千円札せんえんさつは、お母さんからの絶縁状ぜつえんじょうに見えるんだ。)

ガイア
 「うーん、そんなもんなのかぁ」

ハルト
 「そういえば、ガイアとレイのおうちの人も、帰りがおそいの? くらになっても外にいて、おこられない?」

ガイア
 「オレんとこも、子どもに興味ねぇんだよ。オレが毎日、夜ごはん食べてるかどうかも知らないと思うぜ?」

レイ
 「僕は……そうだね。同じ感じ」

ハルト
 「ふふ。ぼくたち、ちょっとだけてるんだね」

ガイア
 「オレはさ、秘密基地でママゴトが本物になるようになってから、お腹すいたの我慢がまんしなくて良くなったんだ!
  夜ご飯は父さんがたまに、“端数ハスウ”っていうお菓子やスルメを持って帰ってくれるくらい。給食きゅうしょくいっぱいおかわりしても、足りなかったもん。」

ハルト
 「えぇっ! 興味ないって、そんなレベル? うちはお金置いてあるだけマシなのかなぁ?」

ガイア
 「マシ、マシ! 絶対マシ! オレなんか、いなくていいんだろうな。父さんにとっては」

ハルト
 「ああ、でもそれは一緒。ぼくなんかいないほうが、お母さんも好きに仕事できるんだろうなぁって、思うよ。
  けど、セケンテイがあるから、ぼくがコンビニ弁当食べてるのは秘密だし、たくさん勉強して立派りっぱな人にならないといけないんだってさ」

ガイア
 「ええー! 勉強させられるのはいやだなぁ。そのへんはオレのほうがマシだな! 勉強しろなんて言われねぇもん」

ハルト
 「勉強しなくていいの、うらやましいなぁ」

レイ
 「秘密基地でもないと、こういう話ってできないよね。友達に大声で話すようなことじゃないし。内緒ないしょばなしってなんかいいね」

ハルト
 「外で家のこと話すと、お母さん怒るしねぇ」


*    *


ガイア
 「全然ちがう話するけど、オレ、将来しょうらいの夢をコックさんにしようと思うんだ」

ハルト
 「そういえば、道徳どうとくの時間に将来の夢の話やったね。ぼく、何にも思いつかなくてサッカー選手せんしゅって書いたよ。サッカーやってないのに」

レイ
 「ガイアはどうしてコックさん?」

ガイア
 「今はさぁ、葉っぱや花をならべたものが、なんでかホンモノになってるけど、それでも作ったものをお前らに食べてもらってるの、すごくうれしいし、なにより、いつでもごはんにありつけるだろ? 自分が!」

レイ
 「うん、ガイアが作るごはん、美味しいよ」

ガイア
 「でも、あれはホンモノだけどニセモノだからな。もうちょっと大きくなったら、家出いえでして修行しゅぎょうする!」

ハルト
 「ガイアは、すごいなぁ……」

ハルト(モノローグ)
 (いつも自由で明るくて、足がはやくて友達も多くて、なんのなやみもさそうで……。将来の夢まで決まってるなんて、すごいし、カッコいいし、うらやましい。
  でも……可哀想かわいそうな話を聞いて、本当はちょっとだけホッとしてるのは、なんでだろう)

ガイア
 「ポテトチップスとか食べてたら、のどかわいてきたね」

ハルト
 「しまったなぁ。ジュースも買ってくればよかった!」

ガイア
 「水筒すいとうは?」

ハルト
 「とっくにからっぽ」

ガイア
 「だよな。オレも」

レイ
 「水飲み場まで行く?」

ハルト
 「あっ! ねえ! 料理がつくれるならさ、ジュースもつくれたりしないのかな!」

ガイア
 「そうだ! なんでいままで思いつかなかったんだろう!」

ハルト
 「この、さっき食べたプリンのカップを、コップにするのはどう?」

ガイア
 「いいね。なに入れる? 水だけでジュースになるかな?」


ナレーション   
  その時、ふわりと甘い香りが風にはこばれてきて、三人は同時に「コレだ!」と立ち上がった。からになったプリンカップを手に手に、秘密基地のフェンスをくぐりぬけて、街灯がいとうたよりの真っ暗な公園にした。


ガイア
 「この匂い、公園の中とか、通学路つうがくろとかでよくにおってくるけど、正体なんなんだろうな?」

ハルト
 「花っていうのはわかるけど、匂いがしてもその辺に花がいてるとは限らないよね?」

ガイア
 「わざわざ、どの花の匂いかなんて探しに行かないしなぁ」

レイ
 「あれはキンモクセイの匂いだよ」

ハルト
 「キンモクセイってどんなの? あのへんの花壇かだんに咲いてる?」

レイ
 「キンモクセイは木だよ。木にちっちゃいオレンジの花がいっぱい、ついてるんだ」


ナレーション   
  三人はにおいをたよりにキンモクセイを探した。秘密基地の小さいランタン型ライトは持ってきたけれど、こう真っ暗では、小さい花を探すためにいちいち木に近づいてみないといけなかった。
  道すがらにあった水道で、プリンのカップを洗って水をひたひたに入れ、こちらは準備万端じゅんびばんたんだ。

  ようやく見つかったキンモクセイは、秘密基地うらの、がけの上にあった。あちこちと歩くうち、いつのまにかぐるりと大回おおまわりをして、崖上の森に来ていたようだ。
  そのキンモクセイは、ドングリのなるシラカシのように背が高かった。子どもの手がとどくところにも花をたわわにつけていたので、オレンジ色の小さな小さな、つぶのような花にれてみる。
  むしり取ろうと力を入れたわけでもないのに、花はポロポロと簡単に落ちた。
  彼らが花が密集みっしゅうしている下にカップをかかげて、なでるようにれると、カップの中にはたくさんの花粒はなつぶが入った。
  水面すいめんいていたり、だんだんしずんでいったり、カップの中におどるキンモクセイの花粒を街灯にかすと、それはそれは特別なジュースになることを予感させた。


ハルト
 「じゃ、秘密基地にもどろう。もっかいぐるっとまわる?」

ガイア
 「この崖低いから、ここりたほうはええよ」

ハルト
 「いけるかなぁ?」

ガイア
 「急だけど、坂道さかみちみたいになってる場所あるよ。こっからならちょっとすべる感じで……」

ハルト
 「わっ大丈夫? 水、こぼすなよ?」

ガイア
 「余裕よゆう余裕よゆう! レイもハルトも、こっから降りてこいよ」

レイ
 「うん。……あっ! ちょっとこぼれた!」

ハルト
 「あわわっ……っとぉ!」

ガイア
 「よし、秘密基地に到着とうちゃく! ハルト、ちょっとカップ持ってて。順番に入ろう」


*    *


ハルト
 「どう? もうジュースになったかな?」

ガイア
 「でも、見た目変わってないよ? 花も浮いたままだし。
  泥団子がハンバーグに変わるみたいに、わかりやすくオレンジジュースの色になったりしないのかな?」

レイ
 「きっと、ジュースになってるよ。僕、飲んでみる」

ハルト
 「……レイ、どう?」

レイ
 「うん、おいしい!」

ハルト
 「なにジュース? リンゴとか、サイダーとか?」

ガイア
 「オレも飲んでみる!」

ハルト
 「どう?」


ガイア
 「初めて飲む味……。キンモクセイ味?」

ハルト
 「ジュースにならなかったってこと?」

ガイア
 「ちゃんとジュースになってるよ。キンモクセイジュース」

ハルト
 「泥団子どろだんごハンバーグは泥味どろあじじゃなくてホンモノになってるのに?」

ガイア
 「ツベコベ言ってないで、お前も飲んでみたらいいだろ?」

ハルト
 「……あ、ほんとだ。甘い。ちゃんとジュースでおいしいけど、初めての味だ」

ガイア
 「泥や草はまるで別物になったのに、コレは素材そざいの味のままなんて、不思議だなぁ」

ハルト
 「んん? じゃあ、やっぱりぼくたちは、泥や草を食べてたってこと?」

ガイア
 「そんなもん食べたら、おなかこわすだろ。あれはホンモノだよ!」

レイ
 「ちょっと前にかざりにしてた彼岸花ヒガンバナは、どくあるしねぇ」

ハルト
 「え! そうなの⁉︎」

ガイア
 「ほらな、本当にソレそのまま食べてたんなら今頃いまごろ、死んでるんじゃねぇの? 平気平気!」

ハルト
 「レイ! 毒って知ってたなら、使うの止めてよ!」

レイ
 「だって、大丈夫だいじょうぶだもん」

ハルト
 「大丈夫って……大丈夫じゃなかったかもしれないんだよ?」

レイ
 「大丈夫だって」

ハルト
 「うぅ……ん……。そこまで笑顔えがお断言だんげんされると……。大丈夫な気はしてくるけど……」

ガイア
 「そうそう。さんざん魔法みたいな料理を食べてて何も問題ないんだから、今さら気にすることじゃねぇって!」

ハルト
 「あ……ねえ。大丈夫なのは納得なっとくしたけどさ、不思議料理じゃないものも、たまには一緒に食べたくない?」

ガイア
 「え?」

ハルト
 「明日はさ、ぼくん|家(ち)においでよ! お金はあるから、スーパーでもコンビニでも材料買えるし、台所は火を使うやつじゃないから!」

ガイア
「ハルトん? え?」

ハルト
 「やってみようよ、ホンモノの料理! ガイア、コックさんになるんでしょ?」

ガイア
 「そりゃあ、すげぇやってみたいけど……。本当にいいの?」

ハルト(モノローグ)
 (本当はお母さんがいない時に友達を家にいれちゃいけませんって言われてるけど、どうせ友達が来るような時間にお母さんいたことないし。)

ハルト
 「大丈夫! 十時くらいまで帰ってこないから、証拠ショウコインメツしとけばバレないよ! お父さんはタンシンフニンでいないしね!」

ガイア
 「じゃあ、明日は学校が終わったらすぐ公園な!」

レイ
 「僕、秘密基地で待ってるよ」

ハルト
 「よぉし! ホンモノの料理をしよう作戦、決まりっ!」


*    *


ナレーション
  “ホンモノの料理をしよう作戦”は、さっそく決行けっこうされた。学校が終わると、ハルトとガイアは一目散いちもくさんに公園に行き、秘密基地へと走った。そこでレイと落ち合うと、三人でハルトのマンションに向かう。
  おしゃれで立派りっぱ門構もんがまえの高い建物を、ガイアとレイは見上げた。入り口のオートロックを、ハルトは首から下げたかぎで開ける。
  そして、自動ドアの向こうにあらわれた、これまたきらきらと明るくて、ソファや観葉植物かんようしょくぶつなんかが置いてある豪華ごうかなロビーに、ハルトは平気で入っていった。

ハルト
 「うち、ここだよ。いま鍵あけるね」

ガイア
 「ドラマに出てくる家みたい……」

ハルト
 「玄関げんかんにランドセル置いて待っといてよ。お金だけとってくる。」

ナレーション      
  買い物を終えて、はやる気持ちで小走こばしりにマンションへと戻る。けれどいざ帰り着くと、さあ、すぐに調理開始ちょうりかいしとはいかなかった。
  リビングダイニングに足をれたガイアの目に、一番にびこんできたものは、テレビにつながったゲーム機だ。

ガイア
 「わあ! これ、最新のやつ?」 

ハルト
 「うん、そうだよ。やる?」

ガイア
 「やるやる! 絶対やる!」

ナレーション
  買い物ぶくろを放り出してゲームをやっていると、時間はあっという間に過ぎていく。ガイアにとっては初めて触れるゲーム機だったし、ハルトは誰かと一緒にゲームで遊ぶのは初めてだ。夢中むちゅうになるのも無理むりはなかった。
  ハルトの家に来た当初とうしょの目的を、すっかり忘れて遊びに熱中ねっちゅうしていると、ほとんど鑑賞かんしょうにまわっていたレイが、ハルトのかたをツンツンとたたく。

ハルト
 「え?」

レイ
 「時間、だいじょうぶ?」

ハルト
 「うわぁ! 真っ暗! もうこんな時間! ガイア、はやくカレーつくろう!」


*    *


ガイア
 「よし、やるぞ」

ハルト
 「ガイア、包丁ほうちょう大丈夫?」

ガイア
 「初めてだけど、給食のスープに入ってるみたいな形にすればいいんだろ? 大丈夫大丈夫! ……ん? どんなんだっけ?」

ハルト
 「野菜って、洗うよね?」

レイ
 「ジャガイモ、土ついてるし、洗わないとダメでしょ」

ハルト
 「ぼくは、今のうちにごはんたいとくね」

ガイア
 「お、できんの?」

ハルト
 「お母さんがやってたのみたことあるし!」

ガイア
 「にんじんかったい! 玉ねぎ、めっちゃ目が痛い」

ハルト
 「わ、わ、わ! 洗ってるうちにどんどんおこめってくんだけど!」

レイ
 「なべ、水いれといたよ。これ、どうやってあっためるの? 火は?」

ハルト
 「火は出ないんだよ。スイッチいれたら、電気であったまるんだって」

レイ
 「へぇええ」

ガイア
 「野菜と肉、切ったから入れるな」

ハルト
 「味付けはカレールーとはちみつだけかな?」

ガイア
 「いちおう、塩コショウもしとく?」

ハルト
 「あ、でも、グツグツしてきて、すごくカレーっぽい!」

レイ
 「こんなにいっぱい食べれる? なべのふちギリギリまであるけど」

ガイア
 「わあああああ!! めっちゃこぼれたぁああ! タオル⁉︎ ティッシュ⁉︎」

ハルト
 「ちょっとまって! すぐ持ってくる」

ガイア
 「どうしたらいいの、これ!」

レイ
 「ひとまず、スイッチ? 消しとこうか!」


ナレーション 
  れない手つきで何時間もかけて出来上できあがったカレーは、お世辞せじにもいい出来とはいえなかった。
  おかゆみたいにべちゃりとしたご飯と、スープのようにサラサラのカレーを、ガイアがお皿にける。盛り付けだけは、いつも給食当番でやっているからお手のものだ。

ガイア
 「なーんか、ちがうよね」

レイ
 「見た目は良くないけど、おいしいかも?」

ハルト
 「スプーンとコップも用意したよ! 飲み物、麦茶むぎちゃでいいよね?」

ガイア
 「じゃあ、せぇの!」

ハルト
ガイア
レイ
 「いただきます!」

ハルト
 「……味うすい。うすいのにすごく甘い」

ガイア
 「ジャガイモ、まだ固いよ」

ハルト
 「リンゴって、こんなゴロっとした形で入ってるものだっけ?」

レイ
 「全体的にべっしゃべしゃだね」

ガイア
 「でも、食べれないってことはないな!」

レイ
 「それにすごく楽しかった!」

ハルト
 「うん! またやりたいね!」


ナレーション   
  おいしいのは当然、秘密基地のごはんだけれど、ホンモノ料理のワクワクにはかなわない。
  今度こそ成功させようと固くちかい、次のメニューはカレーリベンジに決まる。そしてまた来週やろうと、失敗カレーを無理に飲み込みながら、計画と作戦も立てた。

 第三部につづく

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