【先行公開】フリー台本 ノールの方舟(男1女1〜)
※メンバー向けの先行配信となっております。メンバー様は一足先に閲覧、ご利用いただけます。
※一般公開は1〜2週間後の予定です。
※台本ご利用の前に必ず利用規約をお読み下さい。
【概要】
あらすじ
砂漠地帯に住む少年ノールは、言い伝えに語られる過去の高度な文明の存在を信じ、その証拠と考える「遺産」を掘り出すのが趣味だった。
行き倒れた女の子を助ける優しさを持ち、好奇心旺盛で、しかし周囲からは異端と思われている彼は、ついに、とんでもない「遺産」を掘り当てる。
情報
<>内はト書き。地の文として読み上げても、セリフのみ読んでもどちらでもOK
声劇台本 二人用
編成 男性1人 女性1人 から最大5人
上演時間 約40分
二人用台本になっていますが、演者を増やしてもOK
二人で利用する場合は兼ね役が前提となります。
登場人物
◆ ノール(男性)
砂漠の集落で畑仕事をして暮らす、感情豊かで好奇心旺盛な少年。
このような性格の人間は珍しく、周りからは変人、異端児扱いされている。
砂漠に埋まった「失われた文明の遺産」を掘るのが趣味。
主人公の少年「ノール」、「モノローグ(ノール(M)表記)」を演じます。
全編を二人で演じる場合は「謎の男」を兼ねます。
◆ テエト(男性)
ノールの友人。
感情表現に乏しく、物事に対する関心が薄い少年。
ただし、この彼の性質は民族性としてはごく一般的。
全編を二人で演じる場合は「テエト」と「ラナ」と「機械音声」を兼ねます。
◆ ラナ(女性)
砂漠に暮らす遊牧民の女の子。口減らしのために一族の集団から捨てられる。
ノールの集落で行き倒れていたところ、彼に助けられた。
全編を二人で演じる場合は「テエト」と「ラナ」と「機械音声」を兼ねます。
◆ 謎の男(男性)
謎の男。
一言だけあります。
全編二人で演じる場合は「ノール」役の人が兼ねます。
(別の人でもOK)
◆機械音声(女性声)
機械音声。
一言だけあります。
全編二人で演じる場合は「テエト」「ラナ」役の人が兼ねます。
(別の人でもOK)
【本文】
ノール さあ、わたしの話をお聞き。
かつて世界の王をしのぐ力をもった者がいた。
天候神セツリツシャ。 ──風雨を操り、人々に富をもたらし繁栄を築いた。
天候神はある時から傲慢になった。
人の子に心奪われ、失いたくないがゆえに独りよがりに力を振るうようになった。
その人の子はだれよりも繊細で情け深く、神の所業に人一倍心を痛めた。
人民はとても神を信じることはできなくなった。
神の働きは人民を幸せにするとは限らなかった。
英雄ノールは天啓により、人々を束ねて、セツリツシャの治める世に反乱を起こした。
戦いの末、かの人の子は失われた。人民は歓喜にわき、神は失望し怒った。
世を嘆いた神は世界の「破壊と再生」が必要だと考えた。
人間の「浄化」を決意した。
凄まじい嵐が世界を襲った。太陽は隠れ、強い風が吹き荒れた。
殴るような雨は降り止まず、雷は昼夜なき空を轟き続けた。
英雄ノールは神の怒りを予見していた。
戦いのさなか、ひっそりと大きな方舟を作らせていた。
運命の日に全ての生物一つがいずつと、ノールを信じる人々を乗せた。
方舟は1000日続いた嵐を耐えぬき、
ついに、延々と続く水面からのぞく山の頂に、降り立った。
我々ノールの子孫は、記憶に刻まねばならない。
この厄災を。
神をも惑わす情け深さと豊かな感情は、罪深きものだと。
テエト その話、好きだね。子ども向けの退屈な寝物語だろ?
ノール 全然退屈じゃないよ!
テエト だって……ふぁ……歩いてるってのに眠くなってきたよ
ノール 神話……いや、歴史だよ! 僕の名前の元になってる英雄ノールの物語だ。
テエト おとぎばなしだろう? もうそんな歳じゃないよ。
それに、お前の「ノール」も俺の「テエト」もまったく珍しくもない、よくある名前だし。
ノール オアシスに到着するまでの暇つぶしに、なんでもいいから何か話せって言ったの、君だろ。
テエト なんでもいいとは確かに言ったけど……。
退屈しのぎになったのは口を動かしてたお前だけだな。……ふわぁ……
ノール じゃあ、次は君がなんかしゃべってよ。
テエト 特にしゃべることないよ。そうだな……帰りは水瓶が重そうだなーとか?
ノール そんな当たり前の事を……。
もっとさぁ。農作業を終えるころの夕陽は綺麗だろうなぁとか、
また砂の中の遺物に面白いものは見つからないかなぁとか。
テエト お前、ほんとに変わってるよな。
ノール どこが?
テエト 夕陽なんて毎日同じで仕事の終わりを告げるだけだし。
お前が有難がってる砂の中の遺物? 遺産? あんなの、ゴミじゃん
ノール ゴミじゃないし!
テエト いやゴミだろ。わざわざ砂掘り返して、ゴミ集めてるのお前だけだぞ。
ノール あれはなぁ!「破壊」以前の「失われた文明」を解明する、手がかりになるかもしれないんだぞ?
ノール(M) ここは砂漠地帯だ。広く広く、見渡す限りに砂丘が続く。
オアシスと地下水を頼りに、所々に集落がある。
厳しい環境だけれど、飲料水も食べ物も「お上」からきっちり配給されるので、それを補う程度に、また多少の現金を得るために、ここの人々は農作物を育てて生活している。
そして、言い伝えでは、世界が水に沈む前には、信じられないほど高度に発達した文明があったといわれている。
本当にその時代のものかはわからないけれど、何かの道具か、建物の一部か、機械の一部かといったようなものが、砂の中からは多く見つかった。
テエト 失われた文明よりも、今日明日のメシの心配をしようぜ。
お上からの配給があるから死にはしないけど、
こう、ひでりが続くんじゃいつも腹ペコだ。
ノール 情緒がない!
もっと、景色や、歴史や、色んなものに目を向けようぜ!
テエト 情緒で腹はふくれんからな。……と、話してるうちについたぞ。
ノール(M) オアシスまわりの畑に着くと、今にも干からびそうな野菜や穀物に水をやる。
けれどそのオアシスの泉は最近、だいぶ底が見えてきていた。
湧き出る水より圧倒的に蒸発や利用で減る水の方が多いのに、もう雨など、いつ降ったかわからない。
ノール 水、また減ってるね
テエト 使ってるんだから当然だろ?
ノール このまま、水がなくなっちゃったら……?
テエト 不便になるなぁ。でもまあ、次に雨が降るまで、生きるに困ることはないだろ。
お前は本当、心配性っていうか……考えすぎていうか……
ノール(M) 水が貴重なはずのこの砂漠地帯で、水がなくなるかもしれない。
それを大問題だと感じるのは僕だけのようで、ずいぶんのんきに見える集落の人たちを見ていると、不安を覚える。
けれど、不安がる僕を見て、彼らは「お前は変わっている」と、
かわいそうな子を見る目を向けるだけなのだ。
なんと言う言葉が合うだろうか。無気力? 無関心? 無感動?
僕から見たら、みんながみんな、そんな風に見えてしまう。
かわいそうなのは僕じゃない。身の回りの物事に情を向けられない、みんなだ。
テエト 仕事おわったらさぁ、お前はまたゴミ堀りすんの?
ノール ゴミじゃなくて遺産だってば! ああ、もちろんやるよ。君も一緒にやろうよ。
テエト やんねーよ。 俺、先に帰るから。暗くなる前には戻ってこいよな。
ノール つれないなぁ。
テエト 畑仕事終わらせたあとのゴミ拾いに、つられるやつなんているかよ。
ノール(M) 帰路につく友人を見送り、僕はオアシスからほど近いところに作った基地に向かう。
多少の砂よけのために、不要になった半端なレンガを積んだ壁の内側が基地だ。
今までに砂の中から掘り出した遺産がたくさん置いてある。
いや、いつの間にか、僕が置いていたよりもたくさんのモノが積んであった。
きっと、だれかゴミ捨て場と勘違いでもしたんだろう。
基地と言えば聞こえがいいけれど、悔しいかな、
ゴミ捨て場だと言われても反論はできない様相ではある。
基地からスコップなどの道具を拾うと、
そこから少し離れた発掘場所に向かった。
風が吹けば砂も一緒に吹き込んで、なかなか発掘作業は進まなかったけれど、ようやく今日のひと作業で、取りかかっている大物の全貌が明らかになりそうだった。
これはきっとカラクリ装置のようなものだ。
何に使われていたものかはわからないけれど。
鉄かそれに似たものでできていて、背丈ほどもある、箱状のモノだった。
機構を動かすためなのかなんなのか、意味ありげなボタンもいくつかついている。
黙々と掘り進めていくと、質感の違うものにいきあたった。
見えていた金属の箱は本体の一部だった。
箱よりもさらに大きな球体が砂の中に埋まっていると想像できる、一部分が見えた。
それはガラスのような透明な何かでできていて、
袖でごしごしと表面をふいてみると、その中が透けて見えそうだった。
けれど、モヤがかって中身ははっきりしない。
ノール これは、いままで掘り出したものの比じゃないな。
見えてる範囲はほんの一部だし……。
今日はもう、暗くなってきたから、これ以上の作業は無理かな。
‹間›
ノール(M) 畑仕事を終えては発掘作業をする、いつも通りの日々を過ごしていたある日の朝のことだった。
ノール ん? おい、裏路地にうずくまってる女の子……? あの子大丈夫かな?
テエト どれ?
ノール ほら、あそこ。具合悪いのかな? 迷子かな?
テエト さあ? あ、つうか、ノールお前、もっと荷物持てよ。重いんだけど。
ノール 荷物じゃなくて! テエトもみんなも、どうして素通りすんの?
テエト 逆に、どうして、かまおうとするの? 無関係じゃないか。仕事に遅れるぞ。
ノール ──仕事に遅れて悪いけど、僕は、放っておけない。
‹ノールは、女の子の元に駆け寄る›
‹テエトは離れていくノールに向かって叫ぶ›
テエト あ! おい! 大人たちにどやされても知らないぞ?
そんなんだから、お前、異端児って言われるんだぞ!
ノール 君は何も知らなかったことにしといたらいいから!
テエト 言われなくてもな!
‹間›
ノール どうしたの? 大丈夫?
ラナ ……う……
ノール 唇がカラカラだ。まずはホラ。水飲んで。
‹ノールは女の子に水を渡す›
‹女の子は水を弱々しく口にする›
ラナ ……なんで?
ノール ん?
ラナ ふつう、死にゆく人を助けたりしないでしょ
ノール 君のどこが、死にゆく人だっていうの?
ラナ 砂漠の集落の裏路地に倒れているなんて、生きていけなくなった人と決まっているわ
ノール でも、君は生きようとしてるのに。放っておけないでしょ。
ラナ 生きようとなんか……
ノール じゃあどうしてここにいるの?
ラナ ……どういうこと?
ノール 本当に死にたいなら、集落になんて来ないで砂漠の真ん中に向かって、
どこまでも歩いて行けばいい。
ラナ ああ……
ノール 歩ける? 一緒に行こう。
ラナ え、砂漠の真ん中に?
ノール はは、違うよ。放ってはおけないど、僕も仕事にはいかないと。
だから、一緒に行こう。
‹ノールは女の子の手をとって、ぐいと立ち上がらせる›
ラナ え……と……あ、ちょっと! っぅわぁ!
ノール あ、ごめん。手、ひっぱりすぎたかな。
立ちあがるの助けたつもりだったんだけど……。痛かった?
ラナ びっくりしただけ……です。
ノール うん、しっかり立ててるね。
よかった、まだ衰弱しきってるわけじゃなさそうだ。
ノール じゃあ、オアシスまで一緒に行こう。
ラナ びっくりするほど強引……
ノール これくらい強引じゃないと、変化って起こせないからさ。
ラナ 変わった人ね。
ノール いっつも言われる。
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