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10.三題噺「動植物、起き上がりこぼし、観光バス」

 私たち三年生は、校外学習で動植物園に来ていた。

 かわいい動物や珍しい植物を楽しんで、今は自由時間だ。

 ほとんどの人は仲のいい人と集まっている。

 中にはカップルでデート気分を味わっている人たちもいる。というか半数はイチャラブしている。

「いいなあ……」

 私はお土産屋さんの前で思わず呟いてしまった。
 松ぼっくりの形をした起き上がりこぼしを倒しては何度も起き上がってくるのを繰り返していた。

「何が羨ましいんだ?」

 ふと声をかけられて振り返ると、生徒会長がいた。
 私の隣の席でありながら後輩くんの幼馴染だ。

「マカロンくんかぁ」

「それ定着したんだな。単にバレンタインにマカロン作って幼馴染に渡しただけなのに」

「だって、君は生徒会長っていうよりもそのエピソードの方が私の中で強いんだもん」

 まあいいけどさ、とマカロンくんは仕方ないと納得した。

「で、質問の解答は?」

「言わないとダメ?」

「聞いてしまったからには気になるところだな」

「マカロンくんはそういう人いないの?」

「……」

「あ、その反応、いるやつだ〜!」

「お前こそあいつとどうなんだよ」

「ふぇ!? 後輩くんとはなにもないし、知らないなあ」

 な、なんでマカロンくんが私の後輩くんに対する気持ちに気づいてるの⁉︎

「名前すら出してないのにあいつで伝わるところを見るとマジなんだな」

「……いやぁ。なんのことかなぁ?」

「とぼけかた下手すぎだろ」

「し、知らないもん」

 顔が熱くなるのを感じながら、私は誤魔化した。

「お前は満更でもなさそうだし、あいつは押しに弱いからいけると思うけどな」

「別に私は誰のことかは言ってないよ。でも、いいこと聞いちゃった……」

「……もうお前ら付き合っちゃえよ」

「何か言った?」

「いや、微笑ましいなと思ってな」

「もう帰る時間だし、観光バスに向かわないとね」

「先は長そうだな……」

 マカロンくんがジト目で睨んできた。

 詮索されるとボロが出そうだし、何より恥ずかしい。

 私は足早にマカロンくんから離れた。

「少し積極的になってみようかな……」

 頭の中は後輩くんでいっぱいだ。

 早く会いたいな。




作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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