子どものネット利用に感じていた不安を、clubhouseで出会った若者が救ってくれた話
皆さん、はじめてインターネットに触れた時期を覚えていますか?
私がはじめては小学校の頃。メカ好きな父が知人から譲ってもらった、大きな大きな鉄の箱で開いた、Yahoo!JAPANの画面が全ての始まりでした。
その頃はまだまだインターネットなんて「知る人ぞ知る」という感じで、大人も子どもも、興味のある人だけが手探りで知識を深めていくという時代でした。
今思うと危ないこともたくさんしましたが、インターネット自体がそこまで発達していなかったのでなんとかくぐり抜けてこられました。
しかし、これが現代だったらどうでしょう。
私にも5歳の娘がいますが、我が子たちの世代は「生まれた時からネットがそこにある時代」。
技術も知識も無くても簡単にSNSもブログも始められて、だれでも手軽に発信できる様になりました。
それはとても素晴らしいことではあるのですが、同時にとても恐ろしい。「誰でもすぐできる」というのは、言い換えれば「学びながら失敗する期間もない」ということ。
「しまった!ネットのルールわからず大変なことしちゃった!」となってからでは、どうしようもないことがある。それがネットの怖いところかなと思います。
親として、ネットとどう付き合わせればいいかわからない
私自身、365日公私共にインターネットに触れている身です。
そんなネット漬けな人間でも、子どものネットとなるとどう付き合わせていけばいいかわからず悩んでしまいます。
いつからネットに触れさせたらいいのか
制限をかけるべきなのか
こどものプライバシーにどれだけ介入していいのか
そんな漠然とした不安を救ってくれた出来事がありました。
それはclubhouseで出会った、60代の一人の男性と、若者たちの話。
60代の意見を聞いて感じた違和感
今年になって日本でも爆発的にユーザーを増やした音声交流アプリclubhouse。私も情報収集に時々使っています。
その日私が顔を出したのは、30代くらいの親が集まって育児について語るルーム。
そこで出会った、60代の男性。お子さんが小さかった頃はPTA会長をされ、子育てに熱心なお父さんだったそうです。お子さんはすでにご結婚されているとおっしゃっていたので、まさに私の親世代ですね。
その方の主張は「小中学生に携帯は持たせてはいけない。そういう親は子どもを放置している。だから携帯を持っている子ども達は問題行動が多い」というものでした。
私としては「???」というのが正直な感想。
自分の中学生時代を思い返しても、特別そういった傾向は感じませんでした。もちろんそういう人もいたかもしれないけれど、携帯を持っていたのは夜遅くまで塾に通っている子が多かったので、むしろ優秀な子が多かったし、放置ではなく心配から持たせてもらっていた記憶。(ちなみに私は高校生からでしたが、それ以前から問題行動多かったです。笑)
そもそも男性が言う「問題行動」がなにを指すのかわからなかったし、「放置」というのも、私たちが考えているそれとはズレている感じがしました。
ここまで書くと「男性が間違っている」と言っている様に捉えられてしまうかもしれませんが、そうではなくこの「世代によるズレ」というのはとても面白いものだと思ったんです。
男性の言葉を聞いた時「あ、なんか懐かしいこの感覚!」と思いました。それは、自分自身が10代だった頃に親や先生から言われてきた事に似ていたからだと思います。
親は子どもの世界を知らない。だから恐れたり、制限したり、それっぽい決めつけをしたりする。あの頃私はそう思っていました。
「わかってないな〜、大人は」なんて偉そうに友達と話していたのが懐かしいです。今ならそれが心配からくる思いやりというのもわかるのですが。
60代の男性と、30代の私。
見えている世界がこんなにも違うんだなと痛感しました。
でもそれは我が子と自分の関係にも言える事。
私たちの目線は、子ども達にとってはもう十分古い目線になっているはずです。
10代の若者の声
そんな気づきをもたらしてくれた出会いの後、私は積極的に若者のルームを聞く様にしました。それまで聞くことのなかった大学生の言葉は、どれもフレッシュで、そして勢いがあり、深く考えられていました。
例えば「大学生は新聞どころかネットニュースすら見ない」という記事。それだけ読むと私たちは「若い人たちはニュースとかに興味ないのかな」と捉えてしまいがち。
ですが、彼らの言い分を聞くと全く印象が変わりました。
「確かに私たちはネットニュースも最近あんまり見ないし、ネット広告だけで衝動的にものを買わない。でもそれは、ネットニュースや広告のアルゴリズム自体がつまんないから。今って自分たちの検索履歴や年代性別、これまでのクリック率とかで『いかにもあなたが好きそうな記事(商品)ですよ!』ってサジェストされるじゃないですか?あれって心地いいけど、あれにばっかり頼ると馬鹿になっちゃうんですよ。だって自分の興味あることしか聞こえてこないから。自分の意見こそが正しい!みたいな感覚になる。だから私はTwitterのトレンドとかを頼りに情報を得てます。まあ、それすら操作されていないって保証はどこにもないんですけど。笑」
と語ってくれたのは、20歳の大学生でした。
…印象、ちがいませんか?
この大学生はネットの勉強をしてるわけでもなければ仕事をしているわけでもないらしいですが、グーグルアドセンスなどの仕組みや、情報が人によってカスタマイズされて届いていることも感覚的に知っていたんです。
頼りにしているSNSのトレンドでさえ、操作されているかもしれないという疑いをかけながら利用している。
これって私たちが子どもの頃にはなかった目線ですよね。
テレビで「人気がある!」と言われたら「へ〜人気があるんだ〜」って思っちゃう、受動的な子供だった私には目から鱗でした。
生まれた時からインターネットがあった世代ならではの新しい感覚。これら教えてもらったわけでもなく、感覚的に知っているのだから末恐ろしい。
「知らない」が不安を加速させていた
先程の大学生の話を聞いて、私は少しほっとしました。
インターネットが加速している分、子ども達のネットリテラシーもどんどん高まっていることがわかったからです。
むやみに規制するだけでは、その感覚はつかないかもしれません。
「ネットに疎い友達はまだまだその感覚がなく、ネットに利用されている人もたくさんいる」とその大学生は言いました。
私たち親がするべきなのは「わからない⇨だから放置する」でもなく、「わからない⇨だから全て制限させる」でもない。
子どもに正しいネットのリテラシー・使い方を学ばせて、自分自身もちゃんと今の子達が生きる現状を知らなければいけないなと改めて感じました。
「知る」ことで、子どもに寄り添える
私自身、同世代や先輩の声を聞く機会が多いですが、下の世代との交流は残念ながら今まで多くありませんでした。
でも彼らとの交流は学ぶことは大きく、自分の頭が古くなっていることに気づける絶好のチャンスでした。
「親には言えないけどこんなことがあった…」というテーマで聞いた学生達の経験談は、聞いていて「もしこれが本当に我が子に降りかかったらどうしよう」と背筋の凍ることばかりでした。
でも、当然ですが我が子にだって被害者になる可能性はありますし、なんなら加害者になってしまう可能性もあります。
そう言う時、親にはどうして欲しいか。どうしていれば防げれたのか。そういった議論をするのは、とても学びになりました。
記事にする許可をとっていないのでここには書きませんが、教えてくださった学生さん達には感謝しかありません。
ネットでのいじめや、ネットストーカー、SNSで知り合う顔も知らない人たちとの交流。
それらは私たちの時代にあったものが、ネットの力を借りてさらにパワーアップしたもの。
まだまだ知らない世界が続く子育ては、不安がつきません。
でも彼らの声を聞いていると、古くなった自分の目をアップデートしていく気持ちになります。
子供と同じ目線、にまではなれませんが、子供に寄り添える一歩になるんじゃないかなと感じています。
偉い専門家の声だけではなく、当人である若者の声を。親として、大人として、これからも聞ける機会を作っていきたいと思いました。