ルールって必要なの?―自己啓発・組織運営に効く文化人類学入門#14
第7章 組織運営文化人類学(続)
ルールの意味と限界
組織には必ずルールがあります。
なぜルールを作るのでしょうか。効率よく動くためです。
法律も同じです。法律はみなが納得するルールを決めますが、それでも、大切な1つのことがわかっていないために、政治家が批判を浴びます。
それはひと言で言うと、
ヒント ルールは権限を委ねられた側のためではなく、立場が弱い側のためにある!
ということです。
一部の人が権限を握ると、著しいパワーの不均衡が発生します。この不均衡を是正するために、範囲を設定するという意味がルールにはあるのです。
権限を委ねられることの意味
組織には必ず、権限持っている側とそうでない側があります。雇用・被雇用の関係もそうです。
大切なことは、権限に関する理解です。
初代アクトン男爵ジョン・エメリク・エドワード・ダルバーグ=アクトン(英: John Emerich Edward Dalberg-Acton, 1st Baron Acton、1834年1月10日-1902年6月19日)という人がいます。
イギリスの歴史家・思想家・政治家です。アクトン卿(Lord Acton)と呼ばれることが多いようです。
この人が言った有名なことばがあります。
「権力は腐敗する、絶対的権力は絶対に腐敗する」
特定秘密保護法が議論されたときに、このことは話題になりました。
権限を委ねる側も委ねられる側も、このことを理解しておかなければなりません。
権限は権力になります。
権力とは人事権と予算権です。人とお金を操作できる力を手にするということです。
ですから、権限を委ねられた者は、他人の人生を葬り去ることができる恐ろしい力を手にしたという認識を持っていなければなりません。
なぜ権限は腐敗するのでしょうか。
人間は権力を手にすると、自分は裁かれないと思い込みやすく、この誘惑に勝てる人間はいないからです。
リーダーは、自律的に正しいことを行うことができる心の強さがなければ、この誘惑には勝てないでしょう。
ヒント リーダーは自分で自分をチェック。信頼につながる。
ルールは守ればうまく行くのではない!
ルールは字義通り守っていればうまく行くかというと、そうではありません。
ここで文化人類学的視点が重要になります。
理想的文化パターンと実際的文化パターンのお話しをしました。
ルールや法律は、ここでいう理想的文化パターンです。
しかし、実際には理想どおりに動きません。ある程度の幅があって動きます。それが、実際的文化パターンです。
もし社会が、理想的文化パターンと実際的文化パターンを一致させる社会だったら、ものすごく息苦しい社会になります。
組織は、ものすごく息苦しい組織になり、緊張度の高い空間が出来上がります。そうすると、裁き合いが始まります。いわゆる心理的共食いです。
人間の心理は微妙で、あまりにはずれた人がいると困るので、ルールで一定の規律を保ちたいと考えます。
しかし、寸分違わずルール通りにしたいとは思っていません。
ルールでコントロールする組織ではなく、それ以上の何か、信頼関係などが多少でもないと、組織は病むことになります。
ルールを作ればなんとかなる!?
リーダーは、メンバーが自分のイメージどおりにならないと、全体をコントロールしたくなります。
抑え込むために簡単なのはルールです。
そのために、ルール化したくなります。
ところが、最初は良くても、一つルールができると、ルールはどんどん増えます。これは黄色信号です。
これは、先ほど述べた、理想的文化パターンと実際的文化パターンが一致してしまうコミュニティーです。
ルールはなるべく少ない方がよいのです。
ルールの範囲で運用していればよいのではない!?
さて、ルールを使うのはだれか。これは大きな問題です。
組織がギクシャクする背景にこの問題があります。
図をご覧ください。前出の「理想的文化パターンと実際的文化パターン」の図に、少し書き加えました。
実際的文化パターンの端のところに、「限界点」があります。
権限を委ねられた側が、実際的文化パターンからはみ出さない範囲で、権限のない側寄りで運用している限りにおいて、つまり②の運用を心がけている限りにおいて問題は起きません。むしろ、現場から信頼される要素になります。
ただし、④まで行くと混乱を招きます。
いくら柔軟にルールを適用すると言っても、違うところから不協和が出ます。
公平性が損なわれるという指摘が出され、えこひいきをしているという印象を与えることにもつながります。
このあたりのダイナミズムを間違えると、組織はギクシャクします。
ヒント ルールの範囲内で運用していればよいのではない。要は、現場寄りか。
続く ―次回は、会議の文化人類学です。
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