20年越しの牽引免許―50代のオジサン運転人生、免許をいろいろとってみた#5
第4章 20年越しの牽引免許
大型二種を取ってから年月が経ち、牽引をやってみたいという心の虫がまたムクムクと頭をもたげて来ました。
息抜きにでもやればと、家族も認めてくれました。
牽引をやってくれる教習所を探しました。県内に3個所くらいしかなく、通いやすいところに決めました。
教習所入校
ある日の夕方、時間をとって入校するためにでかけて行きました。
女性の担当者が丁寧に対応してくれました。
視力検査と深視力の検査があり、書類に記入し、写真を取り、一段落したところで、こう言われました。
「教育訓練給付金の申請はどうしますか。書類をお作りできます」
ひととおり説明も受けたのですが、何のことだかわからず、
「まあ、いっか」
と、よくわからないまま書類を作ってもらうことにしました。
家に帰って、ネットで調べました。技能を身につけるための費用の一部を国が負担し、転職やキャリア・アップを促すことが目的らしいです。
「50がらみのオッサンがわざわざ牽引を取りに来て、失業しているに違いない」
と思われたのか、しきりに勧めてくれました。別に失業していたわけではありません。
修了したときに、教育訓練給付金の申請はどうしたらよいのか尋ねました。そうしたら、近くのハローワークに行って申請してくださいと言われたので、早速出かけて行きました。
担当の方に尋ねたところ、
「会社などで雇用されていたことが前提となっている制度で、残念ながら該当しません」
というお返事でした。
話しを入校日に戻します。
入校手続きを済ませると、ちょうどその日に適性検査を受けることができるというお話しで、適性検査を受けて帰宅しました。
乗車の予約はすべてインターネットで行います。早速予約を入れました。
教習苦労話
教習が始まりました。教官の方から、
「まず自分が、修了検定のコースを走るから、よく覚えてください」
と言われて、どこでどうすればよいか、注意点を教えていただきました。
運転席を交替して、実際に動かしてみました。
内輪差を注意
車両のサイズは、トラクター(運転席)がだいたい4tトラックくらい。運転席の部分をトラクター、荷台をトレーラーと呼びます。
内輪差が大きいので、トラクターをかなり前に出してハンドルを切る感じです。
久々の大きい車両に何となく嬉しくもあり、また、思い通りに動いてくれないもどかしさも感じました。
直線バックができない
そのもどかしさがドッと出たのは、最初の関門である直線バックでした。
牽引車両はバックするときに、まったく違う動きをします。ハンドルの微調整をしないと真っ直ぐ後ろに進んでくれません。
今までの車両だと、バックしながら車体が右側に動いた場合、ハンドルを左に切りながらバックするとまた真っ直ぐになります。
ところが牽引車両の場合、バックしながらトレーラー(荷台)が右側に動いた場合、ハンドルを右に切りながらバックすると真っ直ぐになります。
しかも、大切なことは、チョット兆候が見えたくらいでサッとこの動作に入ることです。ある程度の角度がついてからでは手遅れになります。この微調整を何度も繰り返します。
困惑したのは、どうなったらトラクターとトレーラーが真っ直ぐになっているのかがわからないということでした。
両サイドのミラーを見ながらやってみましたが、最後はグニャグニャ、いわゆるジャックナイフ現象に陥ります。こうなったら、もう一度前進して真っ直ぐに立て直す以外にありません。
両サイドのミラーではだめかと思い、トラクターの窓から身を乗り出すようにしてやってみましたが、首が疲れるばかりで、これでも真っ直ぐなのかはわかりません。
こんなことを繰り返し、なんとか第1段階の見きわめをクリアすることができました。
方向転換はさらに難しかった
第2段階に入ると方向転換です。
直線バックが自由にできないと、ハンドルを切りながらバックする方向転換はまず不可能です。
ここでもハンドル操作が逆になります。
今までは、車体を右に後退させて方向転換をする場合、ハンドルは右に切りながらバックします。
ところが、牽引車両の場合、最初、左にハンドルを切りながらバックを開始します。
そして、ある程度角度がついたところで、今度はハンドルを右に切ってバックします。
トレーラーが凹みに入ったあたりを見はからい、ハンドルを右にいっぱいに切ります。
そうすると、牽引車両は、今まで味わったことのない不思議な挙動をします。ヘッドの部分が真っ直ぐに戻って行くのです。
この感覚が最初不思議で、しかし最後までからだにしっくりきませんでした。
「アレッ……」
と思っているうちに、少しずつトラクターとトレーラーが真っ直ぐに戻って行きます。
牽引一種は、凹みの部分に真っ直ぐに入っていなくても、とにかく入っていればOKです。
ハンドルを早く切りすぎたのか切るのが遅いのか、なかなか凹みにすら入ってくれません。何度も脱輪しそうになりました。実際に脱輪してしまった時もありました。
はたしてこの乗り物は自動車なのだろうかと思うほど、バックするときは、今までの感覚が通用しませんでした。
徐々に自信を失って行きました。
続く ―次回はこの続き、牽引免許合格までの話しをします。