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妖の推し活と進展
麒麟さんが源さんと仲良くしっぽりとおでんをつついていた時、眠る前の推し活時間として彼女は近くのビルの屋上でファミチキを食べていた。
コンビニのジャンクフードは24時間体制でマジで神だ!そう思いながらコーラと一緒に飲み込む。
彼女は薄らとだが、自分が他の妖から名前で呼ばれた事が無い事も、妖になる前の僅かな記憶からでさえも自分の名前が分からなかった。
麒麟さんに自分を認識して欲しい。
でも、自己紹介からして難しい。
冬の屋上でファミチキとピザまん、限定の練乳入りカルピス迄飲み込んだ所で溜息をついた。
その時、夜中によく食べんね~と、聞き覚えのある声が後ろから聴こえた。
なんせ愛しの声だから、聞き間違える筈がない。
麒麟さん?
あれ?源さんは……?
と、言うと麒麟はゲラゲラ笑いながら、本当に君は俺をよく見てくれてるね、あんがとさん。
んでさ、名前の悩みが聞こえちゃった訳で飛んで来たのよ。
そう、いとも簡単に麒麟は伝えた。
彼女はアルコールも入って無いのに既に顔は真っ赤でたじろぐ。
しかし、今を逃したら後は無いと言う直感もあった。
麒麟さん、私に名前を下さいませんか?
彼女は震える手をぎゅっと握りながら麒麟の目を見つめて伝えた。
麒麟はうーんと言いながら、ストーカーだからストちゃん……すぐに照れて真っ赤になるからベビちゃん……ネーミングセンス無いのよね、俺。
でもさ、こーゆうのも滅多に無いし、こっちの世界に引き込んだのもぶっちゃけ俺だから責任は持つよ。安心してな。
そう言って麒麟はタバコに火を付けた。
じーっと見つめる女子一名。
麒麟はタバコをぽっぽっぽと、輪っかの連続で煙を吐き出し、頬を赤らめ彼女の目が少女みたいな事に少し可愛さを覚えた。
お前、春みたいな女だな、そう言いながら麒麟はタバコを律儀に簡易吸殻入れに消しながら入れ、名前さ、花ちゃんなんてどお?って思ったけど、学校に居座ってるおカッパ女子と同じ名前じゃ可哀想過ぎるから、凛なんてどうだ?
春の香りの凛とした空気、俺は好きな訳よ。
どう?
推しからの自分の為への優しい時間に凛は一生この名前、大切にします!
ありがとうございます!
そう、お辞儀をぺこりと90度でした。
顔を上げると麒麟はニコニコ笑いながら、凛ちゃん、これからもよろしくねー
そう言ったかと思うと消えていた。
凛は自分の過去の記憶が薄まりつつある事も、妖と言う世界の深さへの緊張や不安も、自分に与えられた名前があるだけで前に進める様な気がした。
三日月を眺めながら、凛は満面の笑みを浮かべて居た。
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麒麟を見つめる凛
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