『自信が無いなんて、最高じゃん!』
トランスジェンダー女性俳優モノローグ(一人芝居台本)
『自信が無いなんて、最高じゃん!』本文
作:奥村ひろ
みなさま、はじめまして!
森原芽子と申します。
えー、なぜかYouTubeチャンネルを開設してしまいました。
お芝居未経験の、高齢のトランスジェンダー当事者が、トランスジェンダー当事者役の演技の勉強をしていこうというチャンネルです。
普通はチュートリアルとか、面白い話をするとかなんだろうけど、私が勉強していこうっていうチャンネルだから、別にこれを見ても何かの役に立つとか、面白いってこともありません。
じゃ何でやるの?と言われると、何でだろね。
あっ、名前の芽子は、女優の梶芽衣子さんから付けました。
梶芽衣子さんといえば、女囚さそりシリーズも良いんですけど、やっぱり私的には「仁義なき戦い 広島死闘篇」なんですよ。
「ウチだって、たまにゃあひとりでいたい時もあるんよ」
あの役は素敵…
演技の勉強と言っても何をやれば良いか分からないんで、とりあえず本読みでもやってみます。
ワークショップとかね、誰かに教われば良いんだろうけど、正直怖いです。
ミスジェンダリング(※)される風景しか見えないというか…
男性が女性の演技をして、はいトランス女性な、とか…あぁ怖い!
何かお話もしていきたいけど、何を話していけばいいんだろう。
面白い話なんか何にも無いしなぁ…
私、たばこをやめて8年くらい経つんですけど、1日20本を20年以上吸ってたんですね。
それをもう明日からやめるって決めてから1本も吸ってないんです。で?
昔、ギャンブル依存症でした。お金も無いのに1日に何十万もギャンブルに使いました。借金まみれでした。で?
ん~…
小学校の時、4年生か5年生の時、運動会の練習中、濡れ衣で同学年150人くらいの前で謝らされたことがあります、濡れ衣でな。これ、トラウマです。
演技の勉強をしようとしてるわりには、実は舞台とか、お芝居を生で観るのが苦手です。
ちっちゃい頃、デパートの屋上で見たゴレンジャーショーで、あることをされたのが理由です。これも未だにトラウマです。
あぁつまんない。
こんな話、誰も聞きたがらないよ。
もう、うまくいかない。
何かやろうとしたら、いっつもこう。
あー、イライラしてきた。
(早口でまくしたてる)
当事者なら伝わると思うんだけど、ドラマとか映画でさ、トランスジェンダー女性役が基本的に女装した男性の俳優なわけじゃん。
それを見た時の絶望感よね。
あれは酷いよ。ほんと酷い。
あんなの見せられたらさぁ、何も知らない人は植えつけられんじゃん。
トランス女性=女装した男性だって。
事実だろっていう奴もいるけど、事実じゃねぇわ。あんなもん。
リアルに近づけるなら、まだ男性っぽいシス女性の俳優がやった方がいいって。
あと、トランス男性といいながらショートカットの女性俳優がでてきてさー。
「俺は男だ!」とかね。
あれも絶望よね、全くもって全然リアルじゃない。
トランス男性なんて、普通に無精ひげ生やしたお兄さんだったりするわけじゃん。
まぁ、おじさんだったり色々いるけどさ。
こんなこと当事者なら当たり前に知ってる。
何、この現状…
別に誰がどんな役やっても良いよ、けどステレオタイプ満載の脚本を女装男装の俳優が演じればさ、いくらお芝居が上手くても、周りが感動しても、当事者は生きづらいままなんよ。
題材としては利用されても、存在は完全に無視されてるよね。
いないことにされてるんよ。
こっちは、存在してるんだわ。
演技が下手なのは認める、つーか、まだ上手い下手の次元までいってない、何もやってないから。
だけど、いないというのは認められない、ここにいるんだ、私は。
私はカッコ悪くてもリアルを晒し続けるよ。
それが、このチャンネルの存在する理由です。
ではみなさん、次の動画でお会いしましょう。
森原芽子でした、またね。
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