使命感
4月も終わる。東北の春は今が盛りで、夕日に映える桜が見惚れるほどに美しい。桜の桃色が西日で見えずとも、目一杯にさく彼らには見惚れてしまう。花に背中で見せられる日が来るとは、思いもしなかった。
それもあと、一週間ほどの命か。
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社会人になって何日かが経った。
高校からずっと文系できて、この度ものづくりの会社に入った。会社の中に入って実際に働いてみるとなかなかの異世界である。物理法則に従いながら、そしてよく振り回されながら、技術の人たちは毎日格闘している。
この土地に産業を起こそうと、新しいものをこの世に生み出そうと、世界を変えようと、必死である。でも、どこか楽しんでいるようなところもあって、口角を上げながらみんな仕事に励んでいる。それもまた、異世界の一つ。
ものづくりの会社だから、主役はその技術の人たちだ。彼らが会社のカナメだし、
運命を握っている。大変なのはそうなのだが、戦うべくして戦っている。堂々と胸を張って、毎日ベストを尽くしているからかっこいい。ものを作るとは、すごいことだ。生ぬるい感想かもわからないが、この一言に尽きてしまう。
そんな中、自分の立ち位置を考える。
技術畑からきたわけでもない。世の中のことをなんでも知っているわけでもない。マーケティングが得意なわけでもない。営業をしたことがあるわけでもない。
文系出身の自分はもちろん勉強の毎日なのだが、僕が主役となってこの会社を引っ張っていくものではないことは、十分に理解したのだ。会社の社長からは、将来その会社を引っ張る一員になって欲しいというようなことをたまに言われはするが、僕は違う気がする。
それは僕の性格のせいもあって、誰かに使われるというのが嫌なのだ。こう見えて、自分が主役になりたいタイプなのだ。技術の会社は、やはり技術をよく理解し、視野が広い人が引っ張るべきである。そう、今の社長のように。
じゃあ僕は将来どうするべきかを考える。
今は会社のプロモーション的な役割を得ている。勉強しながら、試行錯誤をしながら、なんとかもがいてはいる。だが、ずっとそれをしているわけにもいきまい。
これから先、自分がどうしたいか。
少なくとも、今と同じorそれ以下のクオリティ/世界観の仕事はしたくない。だとすれば、会社に勤めながらでは、その域を出ることはなかなか難しい。今はその会社に共鳴するところがあって、東北に産業を起こすことを願って働いているが、いつまでもそうしているわけにもいかない。
自分がこれから、どうしたいか。
地元への思いは変わらない。だから、産業ができたとして、それからその地域を、その地域で、その地域から、何をどうしていきたいのか。僕たちの世代は、そういったことを考えなければならない。
今がどんな時代で、来る時代はどんなものか。
僕たちが作る。そのためにも、僕はまだまだ考えなくてはならない。
2021.04.23
おけいこさん