互いに背を向け、彼方に目を向け
今の状況を考慮して、正直に言おう。
僕は東京には行かない。というか、行くことができない。
無症状ながらにウイルスをばら撒き、知らないうちに感染を拡大してしまうのが、この新型コロナウイルスの怖いところだ。僕は就活生として、地方である地元に感染を広める可能性を大いに秘めている。感染を故郷に広めてまで、企業の説明会には参加しようとは思わない。感染を地元の高齢者に広めてまで、二次選考に進もうとは思わない。企業側からいまだに一切の連絡がないから、これまた驚きだ。だが、今この状況を考慮すれば、東京に行く決断はできない。
人命に関わる事態だ。
欧州の方では十代や二十代の死者が出てきたようだ。重大な疾患がなくとも、このウイルスで人は死にうる。人を殺しうるウイルスをばらまくような、そんな無責任な行動は僕にはとれない。
とんだ就職活動である。
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今日から新年度。同期たちは新社会人としてスタートを切った。仕事始めがコロナウイルスによって影響を受けている人も多いだろう。だが、これから長い社会人生活を、ぜひ楽しみつつ、まっとうしてほしい。
それぞれが、違う道を歩み始める。彼らはそれぞれ、どのような未来を思い描いているのだろうか。
とりあえず新入社員としてナンバーワンになる?
目の前の仕事を覚える?
先輩に怒られないようにがんばる?
環境に慣れる?
直近の目標で言えば、そんなところだろうか。それでは、もっと長期的に未来を見るとどうだろうか。
会社のお金で留学をしたい。
年収〇〇〇〇万円をもらいたい。
上の立場に行きたい。
海外を舞台に活躍したい。
考えただけで、広がる夢。確かにコロナによって希望を持てない人がいるかもしれない。だが、経済も人生もなんでも、波があるものだ。今色々と下がっているものたちも、いずれ時が来ればまた上がる。その勝機を信じて、今は耐えるしかない。
希望だけは、捨ててはならない。
輝かしく社会人としてのスタートを切った友人たちが、僕は少しだけ羨ましい。キラキラしていて、フレッシュで、希望そのものなのだ。だからかわからないが、僕は彼らに、何やら壁のようなものを勝手に感じてしまう。きっと今までの通りにLINEやMessengerでメッセージを送ることはできないだろう。気軽に何か、ということが、学生から卒業した彼らに対して、僕はできない。
だからどうってことはないのだ。
自分にできることは、自分の道をいくことだけなのだ。自信を持って、自分の人生を歩まねばならない。だからこそ、今の自分に問いかける。
僕は、これからどのような人生を歩んでいきたいのだろうか。
今までずっと自分に、その疑問を投げかけ続けてきたつもりだった。だが、それは”つもり”でしかなかった。どこか真剣さが足りなくて、どこか地に足ついていなくて。
でも、
その自分の解を見つけるために、毎日があるのだろうよ。
とりあえず。
新社会人のみんな、おめでとう。
僕もみんなに負けないように、力強く生きようと思う。
生きて、生きて、生きてやるんだ。
2020.4.1
おけいこさん