短編小説 『ki.do.ai.ra.ku』
この小説はクスッと笑える、漫画化したい作品となっております。
読了目安時間:15分程度
【あらすじ】
メイル、レイチェル、おじさんはそれぞれの色の国から異世界へ飛ばされてしまう。 彼らにはある共通点が。 異国の人と触れ合うことで新たな感情が生まれる。その時、何かが起こる…!? ショート作品なので、是非読んでみてください。
プロローグ
今この文章読もうとしてる人は西暦何年の人たち?まあいつだって良いけどっ!笑これから話す物語はね、今からずーーっと先の未来に起こった話ってことにしておくね。
始まりはね、
ある星の国に魔法が使える王様がいたの。
その王様の名前はカラート。子供は3人いて、全員肌の色が違ったの。
長男は肌の色が赤。次男は黄。三男は青。
王様は肌の色がこんなにも違うことにビックリしたけどね、たいせーつに育てたんだ。だけど段々と歳を重ねると三者三様性格に違いが出てきたの。
長男はとにかく怒りっぽい。
次男は中性的でどんな時も笑顔。
三男はとにかく自由人で1人で楽しめるタイプ。
この性格の違いを面白がった王様は3人にそれぞれの国を与える事にしたの。
長男は赤い国
次男は黄色い国
三男は青い国
しかもカラード王はね、
子供3人が大人になるにつれて、とっても仲が悪くなった事にも面白がってね、互いの国に踏み入る事ができないように魔法をかけたんだ。
ただし、カラード王はねその国に生まれた人たちが国外に出れる方法をひとつだけ作ったの。
その方法は………これからのお楽しみね!
それをするとね、何にも染まってない新たな国
〝白い国”
に行けるように魔法をかけたの。
よくわからないでしょ?これから読み進めるとわかってくるから安心して。
今回の物語はカラード王が死んでから200年後がスタートね。前提は理解した?
赤い国の話から行くよ?
第一話 赤い国
〝ガーーーーーガガガ”
〝グォーーーーガガガ”
〝バンバンバンッ”
メイルの目覚まし時計はこの音だ。
彼が住んでいる地域は赤い国の北部、スーリ州。ここは工業地帯であり、住んでいるのは貧困層だ。
赤い国は他の二国と比べると一番文明が発展しているらしい。国民は怒りっぽい人たちしかおらず、何をするにしても弱肉強食社会。それゆえに貧富の差が激しい国だ。
メイルは毎朝父が鉄屑をクレーンで運ぶ騒音で目が覚め、こう思う。
『いつになったらこの生活が変わるのかな』
彼の家は貧困地帯の中でも一番貧しい環境にいる。弱肉強食ピラミッドの最下層だ。父は鉄屑を細かくして製鉄会社に販売する仕事をしている。朝から晩まで仕事をしているのに、全く儲からず常にお客さんから怒鳴られていて、ヘコヘコと謝っている姿をよくみる。
そんな父はメイルに対してよく暴力を振るっていた。虐待だ。メイルは父に勝てるはずもなく、黙って受けるだけ。ただ、この国ではそんな家庭はよくあることだ。怒りの矛先は迷った挙句に下に下に弱い人間へと行く。
いや、メイルはそれだけじゃない。近所の同年代からもいじめられてた。怒りの矛先を下向きにしたとすれば、ピラミッドを逆さまにした頂点にメイルがいた。
彼はそれが悔しくて、ただ何もできない自分に対して怒り、自分の体を傷つける事しかできない。
メイルは8歳の少年だが、当然学校には行っていない。というか、いけていない。金がないからだ。そして身体が弱く、ケンカなどした事もない。彼にはこのまま教育を受けることができず、父の仕事を受け継ぎ死んでいく将来が見えていた。
「おい!!!いつまで寝てんだ!!早く起きて手伝え!!!」
外から父の怒鳴り声が聞こえる。
「すみません!今行きます。」
メイルは飛び起きて雨の溜水を手ですくい、それをさっと顔に当てると拭きもせず走っていつもの作業場へ行く。彼の仕事は父がクレーンで拾いきれない小さな鉄片を運んで一箇所に集める仕事だ。それを一日中繰り返す。
(いつになったらこの生活が変わるのかな。
いつになったら父親から怒られないようになるのかな。
いつになったら僕にも怒れる人が現れるのかな。
……今日は変だ。いつもよりもイライラしてる。)
「おいメイル!メイル!!!どこ見てんだはやくそこの運べ!!!」
父の声が段々と遠のいていく。過去、父や近所のあいつらから受けた暴力を沸々と思い出す。
(もう嫌だ、こんな気持ちは2度としたくない。
この家も、スーリ州の人間も、この国もみんな無くなればいい。ふざけるな。こんなところ出てってやる!!!)
彼の思いは爆発し、家の工場から聞こえた父の怒鳴り声も無視して飛び出した。当てもなくとにかく気が済むまで走り続けた。
……息ができない、彼は自分の体力のなさに怒りながら走る。
「ふざけるな!ふざけるな!!ふざけるな!!!ばかやろぉぉうう!!!」
彼は右手に握りしめていた鉄屑を目一杯遠くに投げた。
カンッカンカン!!
……どこに行ったかわからないが、何かに当たった音がする。
するとその刹那、あたりが急に真っ白になった。
「なんだこの風景…ここ……どこだ…!?!?」
第二話 黄色い国
〝ハッピバースデー トゥーユー ハッピバースデー ディア ミーチェ〜”
〝はい、ミーチェ ローソク消して消して!”
〝フーフーフーッ”
〝わーーーよくできました〜!!!”
(……気に入らない。パパとママの愛が、分散してる。)
そう思っているのは、今日誕生日を迎えたミーチェの隣に座っている姉のレイチェルだ。
4年前にレイチェルの状況が変わった。今まで両親への愛はレイチェル一心に注がれていたが、ミーチェが生まれた事によって構ってもらう時間が少なくなったのだ。
「もうお姉ちゃんなんだから。」
この単語に嫌気がさす。
最近はさらに気に入らない事が起こった。
それはママの3人目の妊娠がわかった事だ。パパとママは私だけのものなのに…と悔しがる。
この国はみんな幸せそうだ。喜びの感情が渦巻いている気がする。世界が黄色いこの国は他の二国と比べると、中性的な性格で協調的な人が多い。常に〝幸せ”や〝喜ばしい事”を生み出す事に必死で、赤い国よりも競争社会ではないため文明の発展は劣る。
ただ、側からみたらレイチェル一家も幸せな家庭だ。パパは一般的なサラリーマンでママは専業主婦。学校にも通えてクラスに友達もいるし、クラスのみんなも楽しそうに毎日を過ごしている。
この国では常に〝喜ばしい事”を探していて、国の祝日は2週間に1回ペース。カラード王の末裔である現在の黄色い国王カラーチェの〝初めてハイハイできた日”なんてものがあるくらいだ。それ以外にも学校独自の祝日がある。この国の週の平日は2020年頃の日本と比較すると平均して1日程度少ない。
自分がワガママだってことはわかっている。ただ、こんなにも時間がゆっくりで競争が起きないこの国の社会に対して、10歳のレイチェルは既にどこか刺激が足りないと思っているし、妹が2人できる事にやり場のない苛立ちを覚えている。
「あーー、なんか面白いことないかなぁぁ!」
今日、学校のクラスでこんな事を呟くと、みんなからは
「変な事言わないで?私たち充分幸せじゃない。明日祝日嬉しいな何しよっかなーー!」
なんて返された。こいつらは何にもわかっていない。
学校からの帰り道、レイチェルはいつも通りチャリで家へ向かう。
(あぁぁぁぁ、もうつまらない!この世の中全体がつまらない!!もぉう!!)
ママとパパのミーチェを見つめてる幸せそうな顔、クラスのみんなの私への表情、カラーチェ王の妙に整った口ヒゲなどを思い浮かべるうちにイライラがピークになり、下り坂なのにも関わらず、ペダルを漕いでさらに勢いをつけた。
スピードは最高潮、風を切る音は騒音へと変わる。
〝ビューーーーーーーッッッ”
22インチの車輪はフル回転している。レイチェルはその速さのお陰で次第にストレスが消えていく感覚に喜ぶ。
「そろそろブレーキだ」
そう思った刹那、脇道から一台のトラックが徐行してくるのが見えた。しかし、レイチェル持ち前の動体視力で間一髪ギリギリのタイミングで避ける事が出来た。
……っとおもった。
(なぜ…自分の体が浮いてる…!?!?たしかに避けたはずなのに…!?)
人は死ぬ間際に今までの記憶が走馬灯のように写るという。そんなことはなかったが、全てがスローモーションになっているようだ。。。
体は空中に浮いていて、自分がくだってきた坂が見えた。
(そうだ、私は猛スピードでここを下った、そしてあのトラックをギリギリ避けた。
そうだ、そうか、避けた瞬間、振り返ってトラックみちゃったんだ、同時に思いっきりブレーキかけたから自分だけすっ飛んだんだ。)
(…けど、こんなにとぶ!?……ヤバイ、このまま向かいの石に当たりそう、死ぬ!?)
「ばーかーーやーろーーうーー!!」
トラックのおっさんが運転席から私の自転車をみて、そう言ってるようにみえる。
(…いや、ワンテンポ遅くない!?)
〝バタン!!!!”
「イッテエエェ!!!イテテテテテ。あーーまじイタイ。。……ん、………ん??どこ??え??
誰ですか!?!?ていうか、あなたなんで肌赤いんですか!?!?」
第三話 青い国
性別:男
年齢:72歳
体系:鏡餅
趣味:釣り
備考:2年前に妻と死別。子供なし。飼い犬のパピーが唯一の生き甲斐。
この国の人間は皆、自由に生活して人生を楽しんでいる。自給自足の生活をしている家庭が多く、腹が減ったら畑で育てた米や野菜、海で釣った魚を食べる。仲間と酒を飲み、デートし恋愛して結婚した後(異性との結婚であれば)子供を作る。
そして、この国の人間は皆カネに執着せずに時間に囚われていない。そのため、文明は他の二国よりも圧倒的に劣っているが、そんな事を気にしている人は誰もいない。自分が生きたいように生きる、ただそれだけ。
青い国のおじさんは今日も行く。
妻は生前、料理が好きで家の一階をレストランにして生計を立てていた。そもそも自給自足の人が多いのでレストランが繁盛することはないが、細々と続けるくらいは集客出来ていた。この国の人間なので、もちろん毎日オープンしているわけがなく、開けたい時に開ける、メニューは気分によって変えていた。
夫であるこのおじさんは〝レストランに必要な材料の調達”が主な仕事だった。海、山、川、畑で自由に採りたい物をとって妻に渡す。そんな生活が大好きだった。
妻の死後、おじさんの生活は急変した。生き甲斐が無くなったからだ。おじさんには自由を一緒に楽しむ人が必要だったのだ。子供もいない彼が路頭に迷って歩いていた時、偶然おんなじ顔をした野良犬に出会った。それがパピーだ。
最近はパピーにご飯を与える事だけを生き甲斐としている。
「ワシの生き甲斐はパピー、お前さんだけじゃ」
「ワシみたいにな、この歳で身寄りがいないとな、不自由を求めるようになるんよ、パピー」
「パピー、今日は頑張るよ、大物を釣ってみせるよ、パピー」
まだ薄暗い朝4時、パピーのいびきで起きた青い国のおじさんは釣りの支度をする。長靴を履き、いつものように3キロ先の堤防までのそのそと歩く。そこではパピーが大好物の魚がよく釣れるが、最近は何かとてつもなく大きな獲物がヒットする感覚がある。毎回その大物を取り逃してるが今日は絶対に釣ってやるぞと意気込む。
釣りの最中、最近のおじさんは他の国について考えている事が多い。
(他の二国の文明はどれくらい進んでいるんじゃろか。ワシらの国の若い衆に将来はあるんじゃろか。いまのワシらの生活は一体幸せと…よべる…んじゃ…ろか…)
考えているうちに72歳のおじさんは疲れてウトウトしてしまい、1日に何匹か獲物を逃している。
〝ビクッビクビクビクッ”
オーバースローで釣竿を大海原へ投げてから30秒。でた。またこの食いつきじゃ。大きい、大き過ぎじゃ。
今日のおじさんは開始すぐのかかりだったので反応が速かった。
「ぬぉー!ぬぉぉぉー!!」
おじさんが踏ん張る。
〝ギギギギギギ”
信じられないぐらい竿がしなる。おじさんも必死でリールに付いてるハンドルを回す。
〝グルグルグルグルグル”
今までにない食いつきにおじさんは高揚する。いや、この獲物に振り回されてる糸の不自由さに高揚してるのかもしれない。どっちでもいいがおじさんは興奮を抑え集中する。
(影が見えてきたぞ。今日はパピーを喜ばすんじゃ。)
「ぬぉーーぬぉぉぉー!!!」
水面まで見えてきたが獲物はまだ弱ることなく暴れている。おじさんの持っている全背筋を使って、竿を目一杯引き上げた。
この掛け声と共に。
「ばかやろぉぉぉう!!!」
おじさんの引き上げる力は想像以上であり、獲物は遂に水面から姿を現し、口に糸をくわえたまま空中に舞う。
おじさんは引き上げた勢いで尻もちをついた。
「ぬぁ、イテテテテテ」
最終話 白い国
「なんだこの風景…ここ……どこだ…!?!?」
メイルは鉄屑を投げ、どこかに当たる音が聞こえた途端に風景が真っ白になった事に対し、驚きを隠せない。
〝バタン!!!!”
「イッテエエェ!!!イテテテテテ。あーーまじイタイ。。……ん、………ん??どこ??え??
誰ですか!?!?ていうか、あなたなんで肌赤いんですか!?!?」
レイチェルは白い国の景色よりもメイルの肌の赤さに驚く。
「お、お、お前こそ誰だよ!なんで肌が黄色いんだよ!!」
ビビりながらもメイルはレイチェルに怒鳴る。
「あれ…もしかして、赤い国の子?今怒ってる…?ほんとに怒りっぽい人が多いんだ!笑 出会えて嬉しい!!!」
喜びの国からきた刺激が欲しい年頃のレイチェルには、白い国と赤い少年が目に映ってることがとてつもなくイケてる状況なのだ。
〝ドテンッッ”
「ぬぁ、イテテテテテ。んぁ…なぁ…はっはっ、どこじゃ?ここは。ワ、ワ、ワシのサカナはぁ、ワシの魚はどこじゃ!?!?」
「………あ、青い国の人!?」
メイルとレイチェルはハモった。2人は目を合わし、ちょっと恥ずかしくなる。
「ぬぁ?君たちは赤と青の国の子じゃろ…?なんでここにいるんじゃ?そういえばここはどこじゃ?……たしかワシは思いっきり魚を持ち上げて…」
「おじさんは今まで魚釣りしてたって事?ワタシはここに来る前、チャリで爆走して坂で体が吹っ飛んで石碑みたいなのに当たりそうになったらここに着地したわ…」
「ボクは全速力で走ってから思いっきりばかやろう!!って言って鉄屑を投げて…どっかに当たった音を聞いたら…」
「ぬぁ、キミも『ばかやろう』と言ったのかね!」
「おじさんも…?」
「そ、そんなことよりパピーはパピーはどこじゃ…」
「うるさい!!」
またメイルとレイチェルはハモった。また2人は目を合わし、今度はクスッとお互い笑った。
(なんだこの気持ち…)
メイルははじめて誰かと心が通じ合った気がした。
これが〝嬉しい気持ち”だと今はわかっていない。
(なんかスカッとしたわ)
レイチェルはおじさんに怒鳴りつけた事に快感を覚えた。怒った後に起こること全てが悪い結果ではない、と思った瞬間だった。
(な、なんじゃ、72にしてはじめて怒られたぞ。はじめての感情じゃ…)
「そういえば、ワタシもすっ飛んだ時にトラックの運転手がばかやろうって言ってた気が……これが3人の共通点かもね。なんか謎解きみたいで楽しい!」
「……けど、真っ白なここ。変だよ、はやくこっからでようよ」
臆病なメイルはこの不可解な現象にはやくもビビっている。
「なんだかよくわからんが、少年の言う通り、脱出する方法を探してみよう」
そこから2時間、3人はあたりを見渡すが、そこは白い土に白い空が広がっており、音もなく殺風景で何の手がかりもない。
……段々とあたりが暗くなる。日暮れが近い。
「ボク…赤い国でいじめられてるんだ。弱肉強食社会で、まわりは怒りっぽい人ばかり。お母さんはボクが産まれあとすぐ死んじゃって、お父さんの仕事を手伝いながら2人で生活しているんだ。ボクは背が低いし臆病だし仕事が遅いから近所の子からもお父さんからもいつも怒鳴られるんだ…
お父さん心配してるかな…」
2時間脱出方法を探した後、メイルは一旦探す事をあきらめ、赤い国での環境について話し始めた。
「…そうなんだ。。。ワタシの国もあんまりいいところじゃないわよ。周りの人達はみーんな協調的。平和で祝日多くて幸せな国なんだろうけど、どこか刺激がないの。それに妹のミーチェが生まれたことなんてワタシにとったらぜーーんぜん嬉しくない。けど、パパとママ、私が帰ってこなくて心配してるかな…」
「……2人とも自分の国に不満を持っとるんじゃのう。ワシもその気持ちは同じじゃ。ワシの国は自由で…」
おじさんが話し始めたとたんにまた2人がハモる。
「帰りたい。」
「ボク…やっぱりお父さんに会って謝りたい。」
「ワタシも…刺激がないなんて言ってごめんなさい。。パパとママとミーチェに会いたくなってきたわ…」
メイルとレイチェル2人揃って普段なかなか気付くことができない、家族への〝愛”が芽生え始めた。
「ワシもパピーに会いたいのぉう…パピー…、でもどうやって出るんじゃ」
3人は全員、この国から脱出できない状況に〝悲しい気持ち”になり、あたりに〝哀愁”が漂い始める。。。
すると、白い国の空が次第に色彩を帯び始めた。数分後には赤、青、黄、橙、緑などと様々な色が重なり、虹色の景色へと変化し始めた。
〝モソ。モソモソモソ。モソモソ。ピカーーーーン”
3人が〝悲しい気持ち”になった後、白い土から1人の冠をつけた男が出てきた。
「カ、カ、カラード王!?!?」
「フハハハ。よくぞ気づいたな、赤い国の少年よ。近頃の赤い国はどうだ?まだ弱肉強食の世界か?あいつは長男のくせに弟たちにひどい扱いを……
………エヘンエヘン。驚かせて申し訳ないな。私はこの国の初代王カラードだ。
君たちが今ここにいる理由について、説明しよう。
今から200年前、私には3人の息子がいたが、三者三様肌の色と性格が違っていてな。私の息子3人は性格上、どうしても一緒に行動することができなかったんだ。これを私は面白がり、それぞれの子供に国を与えた。そして互いの国に踏み入れることができないように魔法をかけたんだ。
瞬く間に三国の分断は深刻化してしまった。そしてやっと自分の愚かさ気づき、魔法をかけた事に後悔した。
私は子供3人に対して、互いの気持ちを理解し合えるような人に育てなければいけなかった。そして1人ひとりが〝喜怒哀楽”をもち、豊かな社会を築けるように育てねばならなかった。
……ただ一度かけた魔法は解くことができなかった。そして私は魔法を使った事で相当な体力を消費し、寝たきりの状態になってしまったんだ。
後悔してもしきれなかった。なぜ私は面白がってあんな事をしてしまったのか………
ただ、それから死ぬ間際に3人の中で1番中性的な性格だった次男のカラーチェから頼まれたんだ。
「ひとつだけ、それぞれの国から出れる方法を作ってくれ。それが親父の罪滅ぼしだ。」と。
「ただし、長男と三男に気づかれたらややこしい事になるからこっそりとやってくれ。」と。
そう、残念ながら息子たちは魔法を使う事ができなかったんだ。つまり、その時が魔法をかけれる最後のチャンスだったんだ。
そこで私は、各国に小さな自分の墓をたてたんだ。そして、面白がって魔法を使ってしまった私の墓に対して〝ばかやろう”と叫び〝何か物を当てたら”、何にも染まっていない新しい国〝白い国”へ行ける様に魔法をかけたんだ。
その魔法をかけた事によって私は現実世界からは去って、今ここに亡霊としているんだよ。
……もうわかるな?君たちがなんでここに来たのか。
少年は鉄屑、少女は自分自身、おじさんはでっかい魚が私の墓に当たったんだよ。
そして今ここで、3人が協力しあい、互いの心を理解した事によって、この200年生まれることのなかった〝複数の感情”を生み出せたんだ。
そう、人類はたった1つの感情では豊かな社会を作り出せないんだ。
人間には〝喜怒哀楽”があり、1人ひとり物事の捉え方が違うから人生が豊かになり、世の中が発展していくんだ。
とても素晴らしい。キミらはこの短時間で人間が本来持つべき感情、〝喜怒哀楽”に触れる事ができた。そしてみんなが〝愛”を再認識した事で、この白い国が虹色になったんだ。これこそが私が200年待っていたものだ。今の時代ならいつかのように全人類が協力し合える気がするんだ。
……だから私カラード王からキミらにお願いがある。よく聞いてくれ。
少年、少女、おじさんよ、この国を発展させてくれ。まずはそれぞれの国に帰り、この国に来る方法を広めるんだ。あとはまかせた!!キミ達ならきっとできる!!!!」
〝ムクムクムクムク”
カラード王は登場よりも素早く土へと沈んでいった。
「……え?え?途中感動的っぽいこと言ってたけど結局こうなってるのってあいつのせいだよね?そしてどんだけ勝手な王様なの!?」
とレイチェル。
「と、いうか結局それぞれの国に帰る方法教えてくれなかったよね…??」
とメイル。
「…………カラードッッッ!!!!」
メイル、レイチェル、おじさんは声を揃えて怒鳴った。
おわり。
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いかがだったでしょうか。
結局オチそこかよと思われた方多いと思いますが…笑
喜(黄)怒(土)哀(愛)楽(落)をテーマに、を作品中に入れて進めてみました。
感想お待ちしております!笑
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