新人AD奮闘記~第1週
プロローグ
2022年7月、私はADに転職した。
前職は建築関係の営業。「地主に対してマンションの建築を提案する」という営業を飛び込みで行っていた。
ADに転職した理由は単純だった。
「テレビが好きだから」
仕事を続ける判断軸は大きく二つあると思っている。
①好きな仕事かどうか。
②向いてる仕事かどうか。
前職はこのどちらも満たしていなかった。建築に興味があるわけでもなければ、飛び込み営業という仕事も向いてなかった。
それに気づいたとき、転職を決意した。
そこでたどり着いたのがADだった。
社会人経験は1年ちょっと。建築の飛び込み営業しかしたことがないので、どんな仕事が向いているかは正直わからない。
なのでせめて好きなことを仕事にしようと決めた。それがテレビだった。
テレビ業界の仕事、とりわけADに関しては激務だといわれている。
寝る時間がないだとか、家に帰れないだとか、プライベートの時間が作れないだとか。
それは覚悟して入社した。好きなことなら続けられると思った。
ここに記録するのは、新人ADとして働く私の奮闘記である。
初めての仕事
「ドミノを並べる」
これが私のADとしての初めての仕事だった。
他二人のADと何時間もかけて数パターンのドミノを並べ、倒した。
正直言って、天職だと思った。
毎日お叱りを受けるために、一軒一軒お宅を回ってはインターホンを押していた前職と比べると、ドミノ倒しが仕事になるなんて最高の極みだった。
一緒にドミノを並べていたADも同世代で、とても居心地がよかった。
メンバーが違ったらまた気持ちも違っていたのかもしれない。
次の日から3日間はほとんどリサーチに時間を費やした。
放送の中で出てくる情報のあれやこれをとにかくGoogle検索の窓にぶち込み、裏取りできる記載がないかを探していく。
この作業は得意だった。正確には、「検索して情報を集める」という行為が得意だったのだ。情報を見つけるのが早いというわけではないが、この行為が苦にならない。
ここでまたもやこの仕事が、天職だと思った。
それに、テレビに出てくるちょっとした情報が、これほどまでに大変な工程を経て出されているなんて知らなかったので非常に興味深かった。
初めての収録
これがしたくてADになったのだ、という仕事が4日目に訪れた。
「初の収録参加」である。
演者の札を首からかけてリハーサルに参加したり、「バミリ」を貼ったり、アクリルスタンドを動かしたり、小道具を演者に渡したり、仕事がない時間は週録を生で見たり…
端的に言おう。「最高」だった。
これを経験するためなら何でも頑張れそうな気がする。そう思った。
1週間働いての感想
もちろん良いことばかりだったわけではない。
まずは圧倒的に働く時間が増えた。前職のように定時にきて定時にきっちり帰るということができない。
一応12:00出社21:00退社が基本だが、気づいたら21:00は超えているし出社時間も10:00になったり9:30になったりもした。
収録の日には始発で出社して19:00頃まで働いた。
土曜日にも会議があるし、リサーチの仕事が降られて深夜1:00~4:00くらいまでかけて資料を作った。まあこれに関しては私がまだ慣れておらずリサーチに時間がかかりすぎたというのも要因としては大きい。
ただ、私や他のADが作った資料をさらにまとめてくれたADもいたので、近い将来そういうことをしなくてはいけないのだろうとも思う。
会議ではアジェンダがなく、もっと効率的にできるだろうと思った部分もあった。(無論、下っ端のADには共有されていないだけでディレクターや作家陣には共有されているのかもしれないが)
どちらにせよADが議事録をとるのだから、アジェンダの用意は必須では…と思いながら必死にメモを取っている。
そしてPCのスペックもある程度重要だと知った。
私は大学入学時に購入し、ここ1年くらいは動画を見るのにしか使っていないPCしかなかった。容量もパンパン。そんなものでは太刀打ちができなかった。
周りはMacだが私だけWindowsだったので、Airdropが使えないのがまずちょっと不便だった。また、動画のコメントおこしを頼まれてもそもそも動画をインストールできず。PCの容量をひたすら開けるという作業に時間がかかった。
容量を開けていざインストールしたと思っても、音声のみで映像が流れず、コメントおこしにも大変な労力を費やした。
どれくらいのスペック、どれくらいの容量が必要かということは、入社前に確認しておくべきだったかもしれない。
Amazonで7万円弱で購入した少し古い型のMacbookが昨日届いたので、次週からはこちらを使うことにしている。
とは言っても突然のMacでわからないことや不具合が起こるともわからないのでとりあえずは今まで使っていたWindowsと二台持参していこうと思っているが。
最後に
新人AD奮闘記、第一週目の記録はこんなところだろうか。
正直、今のところはとても楽しい。だがこういう自分が好きだと思い込んでいる仕事こそ、過度な期待はNGだ。期待を裏切られて時の反動が大きくなってしまう。
今がどれだけ楽しくても近い将来必ず辛くなる時が来る。
そう考えながら今は仕事を覚えていくこととしよう。