【マエボン2/制作の裏側第10回 大久保忠尚】 『水曜どうでしょう』の二人から教わった「失敗」との向き合い方
このnoteは、オンラインサロン・前田デザイン室で制作した雑誌『マエボン2』の制作の振り返り・裏話を、リレー形式で投稿しているものになります。
最後にリンクを付けているので、気になる方は是非ほかのメンバーの振り返りも読んでみてください。
こんにちは。大久保忠尚です。
マエボン2では、主にライターとして
◆『水曜どうでしょう』藤村さん、嬉野さんインタビュー
◆「得勝(エルカツ)」ページ
◆「失敗したくなる本・オシ本」ページ
のライティング、およびページ全体の編集・リーダーを担当しました。
その中でも最も思い入れも、熱量も込めていたのが
藤村さん、嬉野さんのインタビューです。
(もちろん、他も一生懸命やりました)
今回は、このインタビューについて記したいと思います。
話を聴くどころか「聴いてもらった」インタビュー
あの北海道テレビの人気番組『水曜どうでしょう』のディレクターである藤村忠寿さん、嬉野雅道さんからお話を伺えるというのは、今考えても凄いことです。多くの経験をされていて、その中で苦しいこと、辛いこと、同時に楽しいことも知っているはず。僕らとは経験値がそもそも違う印象でした。
会う前は、さぞかし凄い圧力で「どこの馬の骨とも分からないやつが」と思っているだろうなと、緊張していました。でも実際にお会いしたお二人の印象はカッコイイ大人。そして、なにより熱い人間でした。
そもそも、お二人からしたら名前も知らない僕たち「前田デザイン室」のために時間を作ってくださったんです。とてもありがたいことでした。僕らにチャンスを与えてくれていたんです。お二人はインタビュー中、強いけれどとても優しい目をして話しかけてくれました。
その期待にもっと応えたかった。
これが本音です。
正直言うと、インタビューは失敗でした。せっかくお時間をいただいたのに、本当に申し訳ないです。もっともっとお二人から聞ける話はたくさんありました。
「それっぽいこと」は、面白くならない
このインタビューでは、お二人のこれまでの著書やインタビューを抜粋しながら、エピソードを伺う内容で考えていました。過去の話を聞きながら、その中での失敗談を引き出せたら良いな、という考えです。
んー。
いま冷静に考えると、他の雑誌とか媒体でもありそうな内容ですよね。
それを見透かされていたんです。
藤村さん
「俺たちから”失敗談を聞こう”みたいな、よくある内容を期待してるならその流れには乗らないよ。君たちは普通じゃない雑誌が作りたくて、俺たちに話を聞きにきたんだろ?だったら普通じゃないことをしないと」
と言われてしまったんです。むしろ、言っていただきました。
おっしゃる通りでございます…。
このお二人の話を聞けるだけでもう満足というか、雑誌のコンテンツとして何とかなるだろう、という気持ちがどこかにあったのかもしれません。
出鼻を挫かれ、もうこの時点で当初の狙いは失敗。インタビューの骨子が無くなってしまい、もはや打つ手なし、という状態でした。
厳しくも優しかった二人の言葉
もはやインタビューと言って良いのかも分かりません。
インタビュー中に聴き手である編集長が醤油さしを手にとって「真剣に聴いているのか」と注意されたり、店員さんの方を見てしまって「こっちを見なよ」と言われたり。
文字で書いてしまうと、お二人が怒っているように思われるかもしれないけれど、決してそんなことはありません。それだけ、僕たちに真剣に向き合ってくれていたのだと思っています。
「もっと相手のことを真剣に見なきゃダメだよ」
「一生懸命相手のことを考えないと」
「今の自分が何をするべきかちゃんと考えて行動しないと」
インタビュー中にこんなことを仰っていただくなんて、あり得ないですよね。でも、お二人は「マエボン2」のことを見つめてくれていて、その上で僕たちに言葉をかけてくれました。
「失敗じゃなくて経験でいいじゃん、この時間もそう」
まだまだ君たちは甘い。でも、ここで知ることができたんだから、これから頑張れよ。そう言ってくれている気がします。
めちゃくちゃ格好悪いし、恥ずかしいです。憧れの人の前で、もっとちゃんとできていたら「君やるね、これからも一緒に面白いことしない?」って言ってくれたかもしれないのに。
でも、まだ早い、そう簡単なことじゃないと教えて頂いたのだと思います。もっとたくさん「失敗」ではなく「経験」をする。そうしたら、お二人のような大きくて優しい人になれるんじゃないかと、このインタビューを通して教えられました。
人生を振り返るきっかけに
インタビュー後、お二人の言葉を多くの人に届けたいと思い、文字にして言葉としてまとめました。良いメッセージだな、と思いながら同時に、自分の人生に言葉の一つ一つがグサグサグサー!って刺さりまくったんですね。
これまで自分でちゃんと考えて生きてきたかな?って。
今まで「それっぽいオシャレ」とか「外さない〇〇」みたいな、平均点を少し超えるような考えで何かを決めて生きてきたのかもな、と思ったんです。自分で考えずに、ネットのまとめ記事から拾ってきたような生き方ばかりしていたかもな、って。
相手を真剣に見つめることもそう。
真剣に向き合うようにはしてきたつもりだけど、そもそも自分のことをそんなにちゃんと見つめられてるのかとか。そんな人間が、相手のことなんてみられるんだろうか、とも思いました。
考えてみたら、人生の成功談もないし、失敗談も特に大きいものが思いつかないんですよね。もしかしたら、人生の機転になっている出来事がたくさんあるのかもしれないけれど、自分のことを見つめられていないせいか、すぐには思い出せない。
今まで「成功したい!」みたいに言ってきたけれど、実は「失敗したくない」だったのかもしれません。それじゃ挑戦もできないし、成功だってできない。
「自分にとって何が得か考えないと」とお二人はずっと仰っていました。失敗をしないことが自分にとって得だと考える人もいます。でも、自分はそうじゃないなと気付きました。
記事を届けるために、何十回も二人の言葉を聴いて、それを文字にして何十回も読みました。言われるたびに、読むたびに胸がチクチクしたけれど、おかげで全ての言葉を逃げずに受け止められました。
きっとこれまで社会の常識とか、一般的な考え、みたいなものに気付かぬうちに染まってたんですよね。自分で考えずに誰かの考えに責任とかを押し付けてた感じ。
そんなことに、このインタビューをきっかけに気付くことができました。
楽しみながら、考えられる「マエボン2」
藤村さん、嬉野さんのインタビューは、出来る限りお二人の言葉を残しています。『水曜どうでしょう』をちゃんと見たことがない方も、響くものがあるはず。そう思いながら編集しました。
マエボン2は陽気な見た目だし、明るくふざけた企画も多いです。楽しんで読んでもらうことが一番だと思います。
ただ同時に、「失敗」という言葉を考え、自分自身を見つめて、これからどう自分と向き合っていくかを考えるきっかけになる本にもなるはずです。
各コンテンツ、そして携わったメンバーそれぞれの「失敗」の捉え方を楽しみながらも、時々自分のことを考えるきっかけとして本棚に置いていただけると嬉しいです。
なんかちょっと迷ってるな、悩んでるな、という人も良ければ手にとって読んでくださいね。
読み終わる頃には、傷つきながらもほくそ笑む、表紙の「失敗くん」のような表情になっているはずです。
※
藤村さん、嬉野さん、そして事務所のみなさま
貴重なお時間とお話をありがとうございました!
6月1日からいよいよWeb販売と青山ブックセンターで書店販売がスタート予定です。クラウドファンディングで手に入れらなかった方はぜひ!
※スケジュールは都合により変更となる可能性があります。
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