ピッチ・プレゼンは魅せ方が鍵~参考になるIR資料⑥グロース戦略編~
YJキャピタル(ヤフーのベンチャーキャピタル)の大久保です。本シリーズは、投資基準8選に対応する形で、プレゼンの際に参考になりそうな資料の備忘録です(随時更新)。今回は投資基準のPart6”グロース戦略”に対応してます。参考文献まとめはこちらです。資料は主に、上場タイミングで公開する「成長可能性に関する説明資料」から抜粋してます。
SanSan:
グロース戦略では、売上構造を因数分解して、各要素を改善していくという考え方が重要です。SanSanにおいても、「契約件数×単価」という因数分解をした上で、各項目が過去改善していること、そして、それに対してどのような施策を実施してきたかが明示されており、とても分かりやすいです。
フリー:
こちらも、「企業数×ARPU」の因数分解のそれぞれのKPIが改善しているのを上手く可視化しています。今後も双方が向上していくことが期待されます。プロダクト開発によって、TAM(企業数)の拡大、及び、単価の向上を目指していく戦略です。
ラクスル:
こちらの因数分解は粗利益ベース「売上高×粗利率」で実施しています。売上高は「顧客数×購入頻度×単価」に因数分解、粗利率は「付加価値と生産性」に分けており、非常に明快です。それぞれの要素を改善する打ち手を実施していくことで利益最大化を目指す戦略です。
ラクスル:
前述した売上の因数分解の3要素がそれぞれ改善していることを表しています。ユーザー規模を拡大しても、顧客の質が落ちていない(注文回数、注文単価の点)のはとても好印象です。
ランサーズ:
マーケットプレイス型は「流通総額×takerate(手数料率)」での因数分解が一般的です。takerateの多寡がマーケットプレイスの介在価値といえるでしょう。多いところでは30%超とるところもありますが、一般的には10%前後でしょう。
シフト:
3事業領域毎の粗利率・売上構成比の可視化です。複数事業がある場合にPL全体としての粗利率とは別に事業部毎の粗利率を明示しておくことも有用です。解像度高くPL全体の粗利率の説明が可能となります。
ツクルバ:
こちらは、営業利益を因数分解しているのが特徴です。売上総利益の最大化と、費用の最小化が、営業利益の最大化に繋がります。このように、事業全体の構造を可視化することで、ボトルネックの解明、どの要素に対する打ちてなのか、等の明確化が可能なのでおすすめです。
ラクスル:
いわゆる成長シナリオ「ぐるぐる図」です。正の循環が働くビジネスモデルほど、ネットワーク効果が働くため参入障壁を築くことができます。
メルカリ:
メルカリのぐるぐる図は、各種KPIも記入されておりより分かりやすいです。また、右図で、購入者が出品者にもなることを示すことで、ネットワーク効果がより強く働くことを示しています。
弁護士ドットコム:
こちらもグルグル図です。UGC型のサービスはすべからくグルグル図が適用することができます。複数競合がある場合には、グルグル図のいずれかのポイントで競合優位性を築くことで寡占化を目指していく戦略となります。
ランサーズ:
データが溜まるとアルゴリズムを強化することができ、それが、参入障壁となる、という説明は、ほぼ全てのサービスで適用可能な考えです。toCのみならず、SaaS等も蓄積されたデータをもとに、ソリューションの提供価値を高める仕組みが備わっていれば、スイッチングは起こりづらくできます。
ジーニー:
成長戦略の基本は「顧客の拡大(縦軸)」or「プロダクトの拡大(横軸)」のどちらかです。シンプルながらわかりやすく、まとまってます。
ポート:
分かりやすいグロースの3つの方向性です。このように、市場全体を2軸で可視化すると、相手に成長戦略を説明する際もすっと入りやすいです。
ハウテレビジョン:
こちらも、縦軸でジャンルの拡大、横軸でデモグラの拡大を成長戦略としています。図示されていると分かりやすいですね。また、縦軸、横軸に何を記載するかはセンスが問われるところです。
カオナビ:
ターゲットセグメントにおけるシェアの拡大をしていく成長戦略です。得意としているミドルから、エンタプライズ、及び、SMBに向け波及させていくことが伝わります。それぞれのセグメントに合わせたプラン・機能開発・チャネル開発をセットでアピールすることで効果的になります。
シフト:
個人的にIR資料が好きな会社さん。信長の野望感あふれる、業界のマッピングに市場規模・現在の市場シェア等が記載されており、とても分かりやすいです。この発想はあらゆる業種に応用可能です。ポイントはカテゴリーごとに市場規模概算・その中の現状シェアを記載する点です。
ユーザベース:
事業積み重ねフォーマットです。成長戦略スライドを締めくくるのによく使われます。幅を意識して作ることで、今後の事業の注力度合いを示すことができます。
マネーフォワード:
こちらも事業積み重ねフォーマットです。データ活用による新規事業の幅が大きいことからも注力していくことが伺いしれます。
UUUM:
マネタイズポイントが多岐にわたる場合は、このように、各事業セグメントの補足説明を活用することも有効です。売上項目・費用項目が端的に説明されております。欲を言えば、数字が入っていると規模感の比較が可能です。
イード:
成長戦略を説明する上で”既存アセット”を軸に事業展開をしていくストーリーがあります。既存アセットは、顧客、データ、システム、技術、チャネル、ブランド等多岐にわたります。本図では、メディアを効率的に運用するシステムを軸に様々な事業を展開していく図を表しており分かりやすいです。
シフト:
M&Aを成長の軸とした際の成長戦略の参考になります。M&A先の売上合算、及び、グループ間取引額をわかりやすく可視化してます。グループ間取引をシナジーの指標にしている模様です。
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