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【アトランティス】弱者男性が「男」になるまでの成長物語
※ネタバレを多く含みます
ウォルト・ディズニー生誕100周年を記念して制作された作品。
東京ディズニーシーのアトラクションとしての方が有名かもしれない。
パクリという評価を受ける事もあるし、曲が無いからと敬遠している人も少なからずいるだろう。
しかし安心して欲しい。この作品は確実に面白い。
あらすじ
博物館の学芸員で言語学者であるマイロ・サッチは、アトランティスに関する新しい学説を発表したものの館長に無視される。そんな時彼の前に、謎の女性ヘルガ・シンクレアが現れる。彼女に連れられ、富豪プレストン・ウィットモアの屋敷を訪れたマイロは、ウィットモア氏に熱意を認められ、アトランティスの探検隊に加わることになり、アトランティスの謎に迫っていく。
(Wikipediaより引用)
ディズニーらしからぬ暗さ
この映画はざっくり2パートに分けられる。
アトランティスを見つける前のパートと、見つけた後のパートだ。
アトランティスを見つけるまではとにかく暗い。
まず人が死ぬ。大勢死ぬ。
オープニングで洪水に巻き込まれて死ぬし、アトランティスへの冒険を始めてすぐ100人単位で死ぬし、数少ない生き残りも事故や怪物に襲われたりして死ぬ。
まずここでディズニーファンは違和感を覚える。
ヴィランズ以外人が死なないで有名なディズニー映画で、ここまでバタバタと人が倒れていくのは何かおかしいぞと。
その他にもディズニーらしからぬ違和感は色々ある。
登場人物が冒険に参加したのはマイロ以外全員金が目当てだったり、銃火器をドッカンドッカンぶっ放して暴力的に物語が進んだり、そもそもキャラクターのタッチが妙にリアルだったり…。
とにかくアトランティスを見つけるまで、ディズニーらしからぬ暗さが目立つ。
夢に生きるマイロと、現実を生きる周囲がとことん対照的に描かれている。
だがその分、アトランティスを見つけた時の達成感は並々ならぬものがある。
アトランティスの発見を最も興奮するシーンに仕上げるため、道中の苦労を丁寧に表現しているのだ。
ディズニーらしいプリンセス・キーダ
そのアトランティスで出会うのがキーダだ。
キーダは活発で、意志が強く、聡明だ。アトランティスの復興を信じ、決して諦めない。
曲を歌うことはないが、ディズニープリンセスとしての風格を十分に備えている。
そんなプリンセス・キーダの姿にディズニーファンも安堵する。
ああこれはいつものディズニー映画なのだと。
ここでアトランティスを見つけたマイロと、プリンセスを見つけた観客の心が一つになるのだ。
この仕掛けはおそらく意図的だろう。わざわざ作中でキーダをプリンセスと呼ばせるあたり、分かってやっているに違いない。
こうして彼は「王」になった
マイロはアトランティスへの冒険を経て、徐々に成長していく。
環境に引っ張られていただけの男が、最後は周りの人間を率いてプリンセス・キーダの奪還に向かうのだ。
物語の終盤、火山の噴火が危ぶまれる中で颯爽とキーダを助けにいくシーン。
彼女を救出し終えたマイロは、力強くただ一言叫ぶ。
「行け!!」
彼が男になった瞬間である。
ボイラー室でうだつの上がらない生活をしていた彼は、夢と信念を持ち続けて「男」になったのだ。