怒鳴る父親と殺されると思った私
これは私が小学生の時の話。
休日の昼下がり、母は買い物か何かで出かけ、父は一階のリビングでテレビを見ていた。
私はいつも通り二階にある自分の部屋で一人、ゲームをしていた。
いつも通りの休日だった。
そんな時、唐突に父の怒鳴り声が響き渡った。
「オイ!!!!!!!!!!」
驚いて私は部屋を出ると、階段の下には鬼の形相をした父がいた。
「下に降りてこい」
そう言い放ってまた、リビングに戻っていった。
なにか怒られる様な事をしたのだろうか。
しかし何も思い当たらない。
だがいつにもまして物凄い剣幕だった。
なにか怒る様な事があったのならまず始めにそれを伝えはずだ。
私はついに父に殺されるのではないかと思い至った。
子供の私と体格も体重も桁違いの父。
そうではないにせよリビングに向かえばただでは済まないと思い、私は父に気づかれないよう玄関に向かい後ろ手に鍵を開け、裸足で外へ逃げ出した。
とりあえずいつも遊びに行っていた公園に身を隠した。
しかし家を出るまではいいがこれからどうする?
戻れば何をされるかわからない。
父は何を考えていたのか。
私の何が気に入らなかったのか。
謝るべきなのか。
警察に言っても何もされていないうちは何もしてくれないだろう。
そんなことを考えながら東屋の隅で縮こまっていると、近くに住んでいる友達のおばあちゃんに心配そうに声をかけられた。
公園を通りかかると孫の友達が裸足のまま何かに怯える様にしているのだから無理はない。
「とりあえずうちにきたら?」
そう言われたが、誰かの迷惑になると余計叱られると思いただ黙って首を横に振った。
そうした押し問答をしているうちに私を探しに来た父に見つかった。
私は黙って父についていき、一緒に家に帰った。
家に着くまでも、着いてからも父は何も言わなかった。
一体父は何を考えていたのか、私は未だにわかりかねている。