1-2 死に顔写真家

カツン、カツン、という鈍い金属音を響かせながら、磯辺、土屋の二人は階段を登っていた。
この階段もかなり老朽化が進んでみえる。
そもそも、このセンターが建立される前に、建物のある程度の補修やら、洗浄やらは国の機関が実施していたはずだった。
しかし、それも急拵えかつ、簡易的なものにすぎず、建物の至る箇所には、
恐らくはここが、ただの廃墟だった頃の名残であろう、下品な文字の羅列やら、奇怪なアートじみた落書きがそこら中に残されていた。
一応のところ、病棟部分は白いペンキ等で塗りつぶす等の修繕は施されているが、この屋上へと通じる階段に関しては依然として全く補修されていない、以前のままだった。

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