#31 きっとうまくいくよ
ゆ「お風呂沸いたよー」
岡「ゆうちゃん先に入っていいよー」
ゆ「はぁーい」
退院後の楽しみの一つ。
ゆっくり家のお風呂に浸かること。
入院中はシャワーしか浴びれてないので風呂に浸かる
喜びはひとしおだ。
ゆ「お先にいただきましたぁ」
ゆうちゃんが出た後に入浴。
扉を開けると、さわやかな香りが充満している。浴室の片隅に見慣れないボトルが置いてあることに気づいた。
おっ!
今日のお風呂は入浴剤が入っているのか。
ゆうちゃんが買ってきてくれたんだ!
ありがたいなぁ。優しいなぁ。
ざぶぅーん
といざ入湯。
岡「ふぅー」
潤沢で満足げなため息に似た声がお湯と一緒に溢れた。
体の芯まで暖かさがやってきて本当に気持ちいい。
顔をバシャバシャ濯ぎ再び
岡「ふぅーーーーぅ」
副交感神経が刺激され色々ほぐれ、緩み、リラックスが
止まらない。
この温泉の素はどこのだ?
湯布院?草津?登別?
今日入っている入浴剤のボトルを確認する
【うっとり甘いバニラ&ハニーの香り】
と書いてある。
ゆうちゃんの好きそうなファンシー湯の素だった。
久々に湯船に浸かる岡安にバニラ&ハニーは
ちょっとミスマッチかなと思っていると
バニラ&ハニーの上に
【Everything will be fine】
と書かれていた。
【きっとうまくいくよ】
という意味も添えてある。
ゆうちゃん…
胸が一気にぽかぽかになった。
そうだよね。
岡安が今やっている治療はきっとうまくいく。
うん、うまくいってる。
先生たちも順調だと言ってくれている。
入院で疲れて岡安を癒すために
この言葉の入浴剤を選んでくれたんだ。
どんな温泉の効能よりも、この言葉が効いた。
一頻り湯を楽しみ、風呂からで出て
体を拭き髪を乾かした。
岡「ゆうちゃん…ありがとうね」
ゆ「ん?なにが?」
風呂上がりのスキンケアに余念がないゆうちゃん。
岡「なにがって、入浴剤」
ゆ「いいでしょ。あの香り。気に入った?」
岡「そうじゃなくて、あの言葉…」
ゆ「言葉?え?なに?バニラ&ハニー?」
岡「違うよ、【きっとうまくいよ】って書いてあったよ」
ゆ「うまくいく?ん?どういう事?」
岡「あれ?」
ゆ「うそ?そんな事書いてあった?」
岡「1番デカく…」
ゆ「クマさんの絵が可愛かったから買ったんだ…」
勘違いだった。
でも、無意識に選んでくれたんだ。
天然で選んでくれた天然・温泉の素だ。
岡安の予想はうまくいかなかった…
つづく