#28 『岡ちゃんが好きな空だよ』
昼過ぎには全ての行程が終わり無事に退院。
2週間ぶりの外は寒いけど日差しが暖かくて気持ちよかった。
ゆ「お疲れ様ぁ」
ゆうちゃんも病院まで迎えに来てくれた。
ゆ「そういえばモハがこの前…」
ゆ「今度の月曜さぁ…」
毎日電話はしていたが、電話で話し切れていない近況報告で会えなかった時間を埋めながら駅に向かう。
すると、突然ゆうちゃんが言う
ゆ「ねぇ見て、岡ちゃんが好きな空だよ」
岡「……ん?」
空を見上げるがいつもの冬の空…
病院からも見ていた、ごく普通の冬の空…
はぁ?何言ってんだ?
ちょっと待った!
その前に岡安はそんな事言ったことがない。
岡「ねぇ、空を見てごらん。俺はねぇこういう空が好きなんだぁ」
絶対に言うわけがない。
言った記憶が全くない。
酔っ払っても言わない。
百歩譲って
例えば、朝日が綺麗で澄んでいる空だったり、
雲がモクモクしてて立体感のある空だったり、
橙色の夕日に染まった寂しそうな空とかだったら
「なんか空がいい感じだよ」
くらいは言うかもだけど
今は普通の空だし、特別な空でもなんでもない。
岡「そんなこと言ったことないでしょ!この空が好きとか」
ゆ「言ったことなかったっけ?」
岡「勝手に作らないでよ。空エピソード」
ゆ「あははは」
なんだかよくわからない会話。
なんでそんな事言ったのか、本人もわかってない笑
でも笑った。
わけがわからな過ぎて笑った。
電話じゃ聞けなかった生笑い声。いいねぇ。
ゆ「お腹減った?なんか食べて帰る?」
岡「うん、そうしよう」
退院の時に栄養士の先生と面談して言われた。
栄「とにかく体力を落とさないように。制限は特にありません、沢山ご飯を食べて下さい。」
と。
ゆ「何が食べたい、今日は一時退院祝いでおかちゃんが食べたい物にしよ」
イエーイ!やったあー!
迷うな…何がいいかな…
グラコロも食べたかったし、カレーうどん、ラーメン、ハンバーグ、悩む。
その時ある記憶が昨日のことのように蘇って来た。
いや、昨日だった。
昨日起きたチャーハン事件。
岡「中華にしよう」
駅近くの町の中華料理屋さんへ
特にメニューも見ずに注文したのはもちろん…
炒飯!
昨日の今日でリベンジだぁ!
チャーハンがテーブルに芳醇な香りを纏い着丼。
遠慮なくお皿を持ち上げ、レンゲでカチャカチャ音を立てて食べてた。
パク、モグモグ、
うんま!!
大変美味しゅうございました。
空腹が満たされた。ご馳走様でした。
でも、ふと思う。
病院もちゃんと食べなきゃだな。
バランスの取れたやつなんだから。
食事も治療の一つなんだから。
来週からは通院治療が待っている。がんばるぞ!
つづく