#37 退院のご褒美はこってりラーメンだ!
クリスマスも終わり、街が、世間が、
一気にお正月モードにバチンッと切り替わる頃
先「岡安さん、体調も安定してますので、来週退院しましょう。お正月はゆっくりお家で過ごしてください。」
よっーーーーーーーしゃーーーーーーー!
相変わらず食事は残してばっかりだが、白血球の数値が
安定していて先生から予定より早めの退院が言い渡された。
先「食べちゃいけないものとかも全然ないので、お家でご飯食べてしっかり栄養つけてきて下さい」
先生の言う通りに帰ってしっかりご飯を食べなきゃと思っていたが、
その前に退院したら絶対に食べたいものがあった。
それは…
こってりラーメン!!!!
なかなか食欲が湧いてこない入院生活だったが
これはなぜか食べたかった。
とろみの十分な濃厚スープに細い麺。
ぱらっとネギとチャーシュー、メンマが浮く
あの大好きなラーメン。
今回はこれと決めていた。
胃がびっくりしちゃう?
ごめん胃!脳がもうそのモードなんだ!
午前中に放射線治療を終えて荷物をまとめて退院。
久々のシャバの空気をたっぷり肺に入れながら
病院から直でラーメン屋さんへ
店「いらっしゃいませ〜ご注文は」
岡「ラーメンを…」
店「お味は」
岡「こってりで!」
店「こってり一丁いただきましたぁ」
着丼。
いい香りが嗅覚をくすぐり、涎を過剰分泌させる。
こってり濃厚スープに麺をしっかり絡ませ、
丼上空10cmまで引き上げ一気に口に運ぶ。
頂きまーす!
ずるるるるるるるる…ずるるる…ずる…
ん?
あれ?
うそだろ…味が…ない
あのこってりの味が全く届かない。
二口目を啜り入れても味がない。
首の皮膚炎とか口の中の乾燥はもう既に少し感じていたが
味覚障害は分からなかった。
確かに最近味が薄いなぁって思う事があったが、
そもそも病院のご飯が食べれていなかったので
味覚障害はすっかりスルーしていた。
えーーーーーー!
こんなに味わかんなくなるの?
こってりが…noこってり
せっかく楽しみにしていたラーメンを三口、四口…
無味のこってりラーメンはどこにも引っかからずに
喉奥に片付けられていく。
悲しい、悔しい。
その時だった。
ピキーーーーン!!!!!
あれ?今ちょっとだけ味がしたぞ!
少しだけ濃厚スープのあの味が口の中を走った。
どこだ、どこの部分が味を感じられるんだ!
濃厚スープをまるでワインテイスティングのように
空気を折り混ぜ香り立たせながら舌の上で転がす。
ラーメン屋さんは不思議そうな顔で岡安をチラッと見るが、そんなことはお構いなし!
探る!どこだ?味する場所は!
ん?いた!先っちょだ!舌先に味を感じるぞ!
舌先だけを頼りに、スープや麺を口の中で転がし
味がしたりしなかったりを繰り返し完食した。
病院のご飯がほとんど食べれなかった岡安にしては
とてもいい食べっぷりはではあったが…
食事は味気なく寂しく終わり、とぼとぼと家に帰った。
つづく
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?