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#44 ガンが可愛いサイズになりました。

2021年 1月下旬診察室。

先「ん?あれ?どこら辺でしたかね」

毎週行なわれる検診。
鼻から入れたファイバースコープを手元で操作し、モニターを見ながら先生は呟いた。

先「あ、いた。これですね」

モニターの写真には
2ヶ月前、喉の奥にいたいびつで薄気味悪い忌々いまいましいガンの姿はなく、小さく白い丸いガンがちょこんといた。
自分も写真を確認して一言。

岡「え?これですか?ずいぶん可愛くなりましたね」

先「そうですね、だいぶ可愛いサイズになりましたよ、すごく薬と放射線が効いてますね」

めちゃくちゃ嬉しかった。

薬と放射線が効いてバッチリ結果が表れている。
先生が探さないといけないくらい小さくなってる!
これらの結果を目視出来たことも良かった。

倦怠感、気持ち悪い、体重減、食欲不振、首の皮のただれ、声枯れ、ありとあらゆる体の不調の不安は一気に吹っ飛んでいった。

確実にガンは弱っている。
でもまだいる。

んじゃ倒すまでだ。


何度も何度もネガティブに心を持っていかれそうになり、挫けそうになり、落ち込んだりしたけど、治療終盤に来て俄然やる気が出てきた。

でもまだまだ細かい課題は山積している。

先「首のやけどが少し広がってますね。しっかりクリーム塗ってください」

岡「クリームの塗り方、首の洗い方はしっかり習いました」

先「良かったです。あとやっぱり声が出しづらそうですね」

岡「声はそうですね、なんか掠れてきました」

先「しょうがないですね、放射線が当たって声帯付近の粘膜が炎症起こしてるからだと思われます。時間とともに声は戻って来ますが、前の声とは少し変わってしまう可能性がありますね」

岡「え?変わるんですか?」

先「おそらく…でも人によりますけどね。変わらない方もいますし、少し低くなったって方もいましたよ。中には歌が下手になったって言う方もいたらしいですよ」

なんだって?!歌が下手…
岡安、歌はそんなには上手い方ではない。
そういう人はどうなっちゃうんだ?
ド下手になるのか?
まあ声が変わっちゃっても、歌が下手になっても
そんなのどうって事はない。
ガンがいなくなるなら安いもんだ…

ただ…
電車の車掌さんの声が出せなくなるかも?
小学校の時から始めて、長年苦楽を共にしてきたあの耳に残る独特な車掌ボイス…
それはいやだな。
というか死活問題になりかねない…

司「電車コントでお馴染みのななめ45°岡安さんです」
岡「(低い車掌さんボイス)ご乗車ありがとうございます!岡安です!出発進行ー!」
司「ん?あれ?車掌さんの声がなんか低いですね。どこの路線ですか?」
岡「低いと言うことで地下鉄でぇす…なんちゃって」
司「…」

退院したら特訓しなきゃだな。
どんな特訓すればいいかわかんないけど笑

                     つづく


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