気づきを与えるアプローチ:ex. 資料作成
ビジネスや社会の環境が急速に変化する中で、私たちが直面する課題への対応方法もまた、進歩する必要があります。この変化の波に乗り、それをリードするためには、ただ蓄えた認識や知識をアウトプットするような技術を磨くだけでは不十分です。そこでは、あと一歩踏み込んだレベルでの変革、知識を活かすための知恵や工夫が求められます。その鍵を握る要点の一つに「気づきを促すコミュニケーション」があります。
例えば、資料作成においては、すべてを資料で説明しようとするのではなく、資料はビジュアル素材としての使用に制限し、口頭での説明や補足を前提とした作りとすることで、対象に深い理解や気づきを促すアプローチを取ることができます。
資料を作成するのは、大抵の場合、理解してもらいたい意図があるからですが、理解してもらうための努力も、相手に(自らの意見や解決策をもって)「意図した答えを見つけてもらうこと」に焦点を当てることが重要です。
この度は、受け手が自ら気づく機会を提供する対話のためのアプローチとして、資料作成のポイントを考慮します。
資料作成における実践例
ビジュアルの利用
グラフ、図、画像などのビジュアル素材を活用して、メッセージを直感的に伝えます。これにより、口頭での説明が加わった時に、より豊かな理解が促されることを意図します。
キーポイントの強調
人は情報が多すぎると、重要な情報を見失い、判断を下すのが難しくなる傾向があります。資料や文書の中では、主要なポイントを強調し、詳細な説明は口頭で行います。言い換えるなら、資料を見れば分かる説明は不要で、資料と口頭の説明により、聞き手の想像と参加を促します。
質問を促す構成
資料の最後に、受け手が考えたり質問したりしたくなるようなポイントを意図的に含めることで、対話やディスカッションを促進します。
プレゼンテーションの準備段階において、これは少し緊張に似た印象を持つかもしれませんが、例えば、顧客や経営層へのプレゼンテーションに際して、着地として望ましいのは、貴方の意見による説得ではなく、貴方が提示する意見や提案をもとに、有用な検討が進むことです。大抵の場合において、有効な検討材料を提示するまでが、自身に期待される役割と考えることが重要です。
「すべてを語らない」アプローチ
「皆まで言うな」という表現がありますが、このアプローチの魅力は、相手に自ら考える余地を与えることにあります。情報の提示を切欠として、受け手が主体的に情報を整理し、自分なりの理解や解釈を形成する機会を提供します。このプロセスの目的は、相手の参加と積極的な関与を促し、より深い気づきへ促すことです。その先に、共感があります。
おわりに
理解してもらいたい意図がある時、理解してもらうための努力は必要ですが、そのプロセスが説得に近づき過ぎると、相手に防御的な態度を引き出し、本来の目的から逸脱してしまう可能性があります。このバランスを保つためには、資料の作成からプレゼンテーション、そして日々のコミュニケーションに至るまで、相手に気づきを与え、自ら答えを見つけ出すようガイドすることが重要です。
結局のところ、人はそれぞれに価値観を持つ為、相手に考える余地を与える質問をすることや、考える時間を設けることが、納得感のある答えを引き出す近道になります。また、このアプローチは、互いの理解を深めるだけでなく、新たなアイデアや解決策を引き出す可能性をも秘めています。
テクノロジーの手の届かない、時間を要するコミュニケーションの時間を、有意義にお過ごしください。❀