劇場版『ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』の愚痴。

私、これ封切り日に見たのですが、「何か薄くて、軽いなぁ~」と思ったんですよね。でも、そんなに悪かったわけでなく、寧ろよく出来ていて、別にそんな貶す所も無い。そんなわけで、今、冷静になると、「ほぉ~ん、公式さんはそっち派かぁ~」という感想が正しい気がしています。というのも、この作品は…

アグネスタキオンが壊れたから、ジャングルポケットはダービーを勝てたという前提で作られている。

それはたぶん間違いではない。けれど、そう思っていない人間もいる。私もその一人なので、その辺りに食い違いがある。で、実際に対戦したら~云々はタラレバ、妄想の範疇なので、別にするとして、予想印をどうしていたか?の話をすると、私はアグネスタキオンの出否に関わらず、本命はジャングルポケットでした。そういう人はたくさんいたと思います。そして、その根拠になったのが、共同通信杯四歳ステークスです。これが愚痴の1つ。

共同通信杯の描写が甘い…

いや、分かるんですよ。主要キャラとの対戦があったわけでもないし、アグネスタキオンに絶対性を持たせるなら、ここはサクッと流さなければいけない。正しい。正しい。でも、解せない。あの共同通信杯ですよ。スタートから天井を向いて、終始ふわふわした走りで、直線はステッキでふら付いて、未完成全開のレース振り。それでいて、楽勝も楽勝だった。あぁ、ダービー馬だ、こいつが今年のダービー馬だ。そう思わせるには十分なレースでした。だから、ねぇ~

「ナベさん…あるよ(ダービー)、ポッケは本物だ…」
「まだ…、真面目さが足りん…」
「厳しいなぁ~」

それでいて、期待を隠せないタナベトレーナーとフジキセキみたい描写が欲しかった。というか、それを見て、だよな!だよな!ダービー馬だよな!ジャングルポケット!と確信したあの時の気持ちを思い出したかった。まぁ、やらなかった意図は理解できるので、ほぉ~んという感想。

この後、皐月賞でジャングルポケットは3着に負けるのですが、最内で出負け、外々追走と明確な敗因があるので、この敗戦を引きずる描写も何だかなぁ~と思うのですが、それは別にいい。そもそもこの頃は共同通信杯→皐月賞は死のローテの1つだったので、皐月賞は捨てたなぁ~ぐらいの感覚で見ていたとか言い出したら、キリがなくなる…で、本題の愚痴はこっち。

アグネスタキオンはちゃんと壊れて欲しかった。

いや、無期限云々~とかいらないのよ。ちゃんと壊れろよ…いや、確かに壊れてそうな雰囲気はありましたけど…そう思ったのは、アグネスタキオンの故障は記憶が鮮やかなんですよ。当時はネットなんて普及してなくて、競馬の最新情報は日刊のスポーツ新聞の競馬面なわけです。でも、あの時は違った。「タキオン、屈腱炎、春絶望」は一面のトップニュースでした。あの虚無感というか、何とも言えない無の感情は、ちゃんと明確に壊れてくれないと表現できないと思うんですよね。

ちゃんと絶望する故障の描写があって、あぁ、ウマ娘のアグネスタキオンはここから始まるんだという救いが欲しかった。何か中途半端な描写のまま終盤にウマ娘のアグネスタキオンが始まって、うん?みたいな気持ち…あれをマイルドと言うか、ぼかす必要があるのか?よく分からない。

そのせいで、ダービーの雰囲気も変な感じになっていて、これはアグネスタキオンがちゃんと壊れずに、長浜先生の会見がないからだろうなぁ~とあの頃の気持ちを思い出してしまうわけです。

アグネスタキオンが故障した時、管理していた長浜調教師が会見で言ったことは、「(レースに)出られない時点で、負けなんだ」、「出られないのは、弱いからだ」、簡単にまとめると、この2つなんですが、今でも、有力馬が故障すると思い出すんですよね。無念で悔しくて仕方がなかったはずなのに、競馬界全体を考えた発言で、他陣営への敬意を示した会見が、あの年のダービーの威厳を守ったと思っています。だから、ねぇ~、こう皐月賞の後のアグネスタキオンを見ると…

お前、長浜スピリッツが1㍉もねーな!


と、思ってしまう。確かにあのキャラ設計なので、そうなるのは仕方がないし、あれがウマ娘のアグネスタキオンとしては正解なんでしょうけど、いや、お前、くっ、これはキャラ作りの敗北…と思ってしまった。

後々、長浜先生は自身最後のダービーになったアグネスフォルテの鞍上に松山弘平を指名しています。ノーチャンスだったわけではなく、乗り替える選択もあった。それでも、「これが松山くんにとっていい経験になって欲しい」と言って、乗せたんですよ。翌年、松山はアルアインで皐月賞を制してGⅠ初勝利、皐月賞馬でダービーに挑むに当たって、前年のダービーに騎乗していた経験がどれほどだったか?その先のデアリングタクトにも繋がっていますよ。長浜先生の競馬界全体を考えた先見の明の何と素晴らしいことか。アグネスタキオン、お前、本当に…

長浜スピリッツが1㍉もねーな!(2回目)


まぁ、キャラ作りの敗北なわけで、改変してまでやると、ウマ娘のアグネスタキオンが好きな人に申し訳ないので、長浜スピリッツは全カットされたのでしょうけどね。それでも、アグネスタキオンの故障で、ダンツフレームの鞍上が河内になったことなども踏まえて、私は…

「俺と、おめぇ、どっちがつえーか、はっきりさせるんじゃなかったのかよ!」
「出られるなら、出ているさ、残念ながら、プランAは御破算、私の脚は完全に壊れていてねぇ~」
「お前、それ…」
「あぁ、どちらが強いかだったか?それなら、キミだね、出られない時点で私の負けだ…」
「何で、そんな…」
「弱いからさ、走れないのは…弱いからだ…」
「タキオン、お前…」
「納得いっただろうか?そうそう君達には大いに期待しているんだ、私に、ウマ娘の可能性を…」
「タキオン!」
「何だい?」
「お前は、弱くねぇ、俺が証明してやる!ダービーでな!」

強張った表情のまま出て行くジャングルポケット、それを見送ったアグネスタキオンは…

「ダンツくんだったか、頼みがあるんだが…」
「わかってますよ、私だって勝ちたい」
「ふむ」
「ポッケちゃんにも、あなたにも、だから、絶対にポッケちゃんを一人になんてしません!」


こういうのが欲しかった。長浜スピリッツを浴びて、ふおおぉ~となりたかった。あぁ、ここからウマ娘のアグネスタキオンは始まるんだなぁ~と思いたかった。あの世代のダービーはもっと熱くて美しかった気がするんですよね。そうすると物語のピークがそこになってしまうのですが、それで良くない?ダービーって、そういうもんでしょ。

おまけ。

「何だい?ジャングルバゲットくん?」
「うるせぇ、本当はやっちまったんだろ?アグネスポキオン!」
「…ポキオン、ポキオン…」
「お、おい…」
「そうだね、私は、ポキオンだ…(グスグス)」
「いや、お前、泣いて…」
「見るな!見るなっぁ!」
「いや、そんな…」
「今のはポッケちゃんが悪いよ」
「オトモダチも引いてます」
「だって、先に言ったのは…うっわぁ~」

走り出すポッケ、行先はフジ先輩の胸の中。

「はいはい、分かったよ、ポッケ」
「だって、俺、先に言われたからぁ~」
「うんうん、でも、悪いとは思っているんだろ?一緒に謝りに行ってあげるから」
「フジせんぱぁ~い」

「ポキオン、ポキオン…」
「まだ言っていますね」
「重症だねぇ、何かあったのかなぁ?」
「スフィーラ、それはアナザーヴァースの記憶だね」

閑話休題、そんなわけで、大き目な愚痴はこの2つです。フジキセキ≒アグネスタキオンなので、もっと強調して良かったとか、ジャパンカップでオリビエ・ペリエに乗り替わった描写がう~んとか、諸々ありますけどね。

でも、結構手放しで誉められている作品に思うところがあるのは幸せなことだと思うのですよ。あの時代の競馬の思い出が濃厚な証なのでね。いつ見ても、テイエムオペラオーにイライラできるのが幸せなのか?という疑問はありますけど…最後にアグネスタキオンが走り出すのを見て、あの屈腱炎は全治6ヵ月だったはずだから、ギリギリで治ってるか?今なら、細胞移植で復帰できたかなぁ?何だかんだ種馬かなぁ?なんて思えるのは財産ですからね。EDのライブを見て、タガノテイオーも入れてくれねぇかなぁ?と思って、ちょっと切なくなるのですよ。

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