2023年は〇〇投資の年
今回のnoteでは、インフレや利上げなど不透明な環境の中でリスクリターンの観点から魅力的に思える投資対象について考察していきます。
先に結論だけお話してしまうと、2023年は債券投資、特に社債投資の年になるかもしれません。ものすごく儲かるというよりも、「リスクリターンで考えると魅力的」という意味ですが、その背景について世界最大のヘッジファンドの相場見通しを参考に紐解いていきます。
今回参考にするヘッジファンドはBridgewater Associates。1月6日に2023年の見通しをHP上で公開しています。以下ではその要点をまとめ、個人的な考察をしていきます。(金融政策や景気動向など、すべて米国を対象とした内容です)
Bridgewaterによる2023年見通し(要約)
マーケットを動かす主要因
2022年:大規模で急速な利上げ
2023年:高い金利がどこまで経済に影響を与えるか
今後起こり得る3つのシナリオ
①最も発生確率が高いと想定されるシナリオ
【高インフレ定着で金融引き締め第2ラウンド】
このシナリオは以下の順序で展開する。
金融引き締め(2022.3~2023.1現在 進行中)
景気減速・インフレ率の低下(2023年中にどこまで顕在化するか)
金融引き締めの停止(2023.3と見込まれている)
資産価格の上昇とそれによる景気の持ち直し、ドル安
インフレの再加速 or 高インフレの持続
金融引き締め【第2ラウンド】
金融引き締めの第2ラウンドがあるかどうかは、賃金動向次第。モノの物価上昇が落ち着きつつあるが、サービス価格のインフレはまだ高水準。サービス価格は賃金動向に左右されるため、賃金インフレが3%以下まで低下しない限り、インフレ率2%の達成は難しい。
②2番目に発生確率が高いと想定されるシナリオ
【ハードランディング = 景気後退によるインフレ根絶】
このシナリオでは、十分な規模と期間で金融引き締めがなされ、景気後退が生じてインフレ率が2%に戻る。これには以下両方の実現が必要。
名目GDP成長率が、少なくとも年率5%以下まで減速する
失業率が、少なくとも2%上昇し、高い失業率が18ヶ月程度続く
③最も発生確率が低いと想定されるシナリオ
【ソフトランディング = 景気後退せずにインフレ根絶】
このシナリオでは、利上げによる大きな景気後退がなく、インフレ率が2%に戻る。2023年3月に金利がピークに達し、以降2年間で2%の利下げが行われるが、インフレの再加速は生じない。
これは、Bridgewaterが最も生じにくいと予測しながらも、市場ではメインシナリオとして現在想定されている。
個人的な考察
③ソフトランディングの可能性はゼロではないものの、①高インフレ定着 or ②ハードランディングのどちらがメインシナリオとして顕在化するかを見極めたいところです。見極める指標として、インフレ率(特に賃金インフレ率)やGDP、失業率の動向の他、景気後退が迫っているかどうかについて「ハイイールド債のスプレッド」に注目しています。
2023年1月現在のハイイールド債のスプレッドを見る限りは低い水準で推移しているため、景気後退の兆候は乏しく、①高インフレ定着が今のところメインシナリオと言えるかもしれません。最近、2年以内の利下げ期待で株式や債券価格は持ち直していますが、このシナリオが顕在化した場合は2022年のように利上げ相場が再来する可能性に要注意です。
一方、もしハイイールド債のスプレッド上昇とともに②ハードランディングのシナリオが実現する場合、既に魅力が出てきている債券投資が一層報われる展開を想定しています。この場合、利下げによるドル安が起こり得るため、ドル建て債券の場合は以下2通りの方法が考えられます。
為替ヘッジ無しで満期まで持ち切り、インカムゲインを狙う
為替ヘッジ有りでインカムゲインの他、キャピタルゲインも狙う
ただし、2の場合は①高インフレ定着による利上げ第2ラウンドが行われると戦略としては崩れてしまうため、リスクリターンの観点からは1の方が無難です。また、1の場合、より高い利回りが得られるように国債と比較して社債に投資妙味があると言えます。社債の場合、②ハードランディングが起きる過程でスプレッド上昇が政策金利の引き下げを帳消しにしてキャピタルゲインが取れない可能性もありますが、満期まで持てば問題ありません*。
BlackRockも2023年の相場見通しで投資適格社債を債券の中で最もオーバーウェイトの見通しにしていますが、これは上記のような考察とも整合性が取れています。
以上、2023年はリスクリターンの観点から社債投資が魅力的かもしれないというお話でした。Twitterでも「ちょっとディープな資産運用の話」を呟いているので、興味のある方は是非覗いてみてください。
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本noteは情報提供を目的としており、特定の有価証券への投資を勧誘するものではありません。尚、情報の正当性、有効性、正確性について保証するものではありません。また、本noteで提供している情報は個人の見解です。
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