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為替介入でも円安が続く理由4選

2022年9月22日、政府・日銀は24年ぶり円買い介入を実施しました。歯止めがかからない円安に対する措置ですが、効果について疑問視する声も少なくありません。そこで、このnoteでは「なぜ円買い介入の効果が限定的なのか」「いつ円安が止まるのか」について簡単に考察していきます。

「円買い介入の効果は限定的」と言われる理由4選

①米国との協調介入ではない
②金融緩和(円安圧力)と円買い(円高圧力)、相反する政策の同時進行
③介入可能な金額に上限あり
④ドル資産売りで皮肉にもドル高・円安が助長される可能性

①米国との協調介入ではない

為替介入は自国単独でなく他国、特に基軸通貨国の米国との協調でないと効果が限定的になると言われています。「では米国に協調介入を呼びかければよいのでは?」という疑問も生じますが、米国がインフレ退治に躍起になっている間は可能性が限りなく低いと言えます。理由は後述します。

②金融緩和(円安圧力)と円買い(円高圧力)、相反する政策の同時進行

日銀は2013年からの大規模緩和を継続しています。これは低金利にして、国債を買い入れる政策で、結果として円安圧力が働きます。このように日銀が円安圧力を作り出している中での円買い介入となると、必然的に効果が限定的になります。

③円買い介入ができる金額に上限あり

円買いドル売り介入をするため、政府はドル資産を売る必要があります。ドル資産として外貨準備(主に米国債)を売る必要があり、外貨準備の上限が円買い介入の上限と言えます。

具体的にいくらが円買い介入の金額上限かは断言が難しいですが、日経新聞の記事によると「20兆円程度」とされています。ただ、この金額で今回のドル高円安を制御できるかはおそらく誰にもわかりません。

④ドル資産売りで皮肉にもドル高円安が助長される可能性

前述の通り円買い介入には米国債を売る必要がありますが、米国債の売却は米国債の需給悪化要因になります。つまり、「売りたい人が多いので価格が下がる」という状況になり、価格下落によって米国債の利回り上昇に繋がりかねません。投資マネーは「安全なわりに利回りが高い」資産に集まる傾向があるため、米国債の利回り上昇はドルの魅力を高め、ドル高を誘引します。

ドル高(円安)
 ↓
日本政府の円買い介入・米国債売却
 ↓
米国債の価格下落・利回り上昇
 ↓
ドル高(本来、ドル安を目的とした施策がドル高に繋がってしまう)

では、いつ円安が止まるのか?

今回の円安は「円が売られている」側面もありますが、円以外の通貨を含めて「とにかくドルが強い」と言えます。

円の他、ユーロなど複数通貨に対する相対的なドルの強さを示す指標「DXY」は上昇が続く

そのため、「円安が止まるとき」=「ドル高が止まるとき」と考えるのが自然です。

では、そもそもドル高の背景は何でしょうか?
それは米国でインフレが社会問題となっており、FRBが金利を急速に引き上げているためです。そこで、過去にインフレに伴い米国金利が上昇した局面で、ドル円がどのように推移したかを振り返りましょう。

1970年代:高インフレと異例の金融引き締めで50%超のドル高に

1970年代~1980年代初めにかけて、米国は10年以上も高インフレに悩まされました。一時期10%を超えたインフレを鎮静化させたのは当時のボルカーFRB議長。1979年10月から異例の金融引き締めを行い、インフレ抑制が軌道に乗った1982年10月に引き締めを解除しました。この間、為替は56%もドル高・円安に振れています。

1979年10月~1982年10月に56%のドル高・円安

FRBの金融引き締めによってもたらされたドル高ですが、これは当時の主目的であるインフレ抑制を達成するにあたり2つの点で効果的です。

  1. ドル高により輸入物価が下がる

  2. ドル高により海外展開している米国企業のドル建て収益が悪化する

1点目がインフレ抑制に理想的なのは直感的に理解できます。
問題は2点目で、「なぜわざわざ中央銀行が不況を招くようなことをするのか」という疑問が生まれるかもしれません。しかし、インフレは需要と供給のバランスが「需要 >>> 供給」のように大きく崩れることで生じます。そのため、インフレ退治には需要を抑制する必要があります(供給を増やすのも選択肢としてはあるものの、例えば天然ガスのパイプラインを数ヶ月で2倍にするなどの劇的な変化は難しく、改善に数年の単位を要するため難しい)。需要抑制のためには失業率の増加が伴い、企業収益は悪化します。

1985年:プラザ合意で50%超のドル安に

このようにドル高はインフレ退治に効果的ですが、インフレが解決された後には企業業績の悪化を招く厄介な存在になります。FRBは①物価の安定、②最大雇用という2つの使命を担っており、①が実現されている間は②が優先事項になります。そのため、今度はドル安により米国企業の業績を引き上げるインセンティブが高まります。
実際、1982年までの金融引き締めで景気後退に陥った米国は、1985年のプラザ合意でドル安に誘導しています。

1985年9月プラザ合意後、約2年で50%程度のドル安・円高

まとめ

誰にも未来は予想できませんが、以上のようにFRBがインフレ退治を目的とした利上げの手綱を緩めない限り、ドル高・円安のトレンドは変わらないと想定した方が良いかもしれません。ただ、その後どこかのタイミングでドル安・円高への反転も十分に可能性があります。とにかく、今はFRBの政策とインフレの動向に要注目です。

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