ハンター×ハンターは第一巻から凄い!コマ割りセリフなど冨樫義博の漫画能力を岡田斗司夫が解説
僕は毎週
週刊ジャンプ未だに買ってます
62歳になっても
今日のテーマは
ハンターハンターの魅力を再確認しよう
今僕らに出来ることは
魅力の再確認確認しかない
過去に放送した
岡田斗司夫ゼミの中から
ハンターハンター
第一巻について語った動画
ハンターハンターの魅力はもちろん
キメラアント編とか
グリードアイランド編とか
重厚なストーリーと人間ドラマ
があげられることが多い
本当にすごいと思うのは
コマの配置とか
話の構成とか
どういう風に見せるのか
コマ単位の見せ方
セリフの流れも凄い
漫画自体の上手さ
絵と言うか
漫画自体が本当に見せ方がうまい
今回はそれが最もよく出ている
第一巻 連載の走り出しの部分
数話を中心に解説
ハンターハンターの
第一巻の部分だけやるね
今日はとりあえず第一巻の凄さ
第一巻でキャラクターが
全員ポンと出てくるシーン
レオリオとクラピカと
ゴンが3人出てきて
これで3人ワンフレームで紹介される
上手いのはね
一番最初だから富樫さんの
絵の上手さを話そうと思う
レオリオがしゃがんでるところだよね
これ本当は身長差があるから
レオリオは背が高いんだよ
なので
ワンフレームでやると
もっとキャラクターが引いた絵になる
レオリオを屈ませることによって
背の高さを表現していて
3人の身長バランスがわかる
それぞれの表情がもう少し大きくある
本来はレオリオの顔の高さが高いから
これは嘘なんだよね
ゴンの顔の位置が一番高いのは嘘
ただこういう見せ方で
当たり前のようなシーン
3人いっぺんに出てくるシーンを
絵として飽きにくくしている
僕やっぱ好きなのは
レオリオは横目で見ていて
ゴンは真っ正面から読者を見てる
ところがクラピカだけ読者を見ていない
この目線の外し方が
最初からこういうキャラクターだと
決めて書いてることが分かる
普通これって書いたら
クラピカもやっぱりこちら側に向ける
ところがクラピカというキャラクターは
そういう風に横から人を見ない
後には横目とかいっぱい使うんだけど
レオリオのサングラスを
かけさせたまま読書を見せる
ゴンは正面から見据える
クラピカも正面から見るんだけど
目線を外してる
こういう使い方してる
この後ね
それぞれの自己紹介のところで
3人を乗せた船長さんに
お前たちは何でハンターになりたいんだ
「言え」と言ったら
そんなことを言われて
俺は気に食わなかったら
自分が納得しなかったら
決闘してでも言わないっていう
レオリオに対して
クラピカは色々しゃべる
この喋るのが
セリフがどんどん増えてきて
レオリオが相手にしてもらえなくて
あとで揉めるんだけど
レオリオがだんだんはみ出してきて
ついに何も言えなくなって
セリフの過剰さでキャラクターを作ってる
ゴンはそんなに
しゃべるキャラクターじゃないけど
レオリオとクラピカが
いっぱい喋ってくれるおかげで
ドラマが持ってる
特にドラマが持ってるのか
どんどん 高畑勲みたいなやつ
自分がナウシカの
プロデューサーをやらない
ということに関して
4時間しゃべるのと同じように
そんだけの手間かかるんだったら
ナウシカのプロデューサーやれよ
なぜ自分の志望動機が
言えないのかに関して
どんどん過剰に説明していてしまう
その意味では
すごく誠意があるキャラクター
誠意があって
なんで自分ができないのか
とことん正直に話そうとしてる
ところが彼の正直さ誠意によって
どんどん人間関係の摩擦が起きてきて
レオリオがどんどん追い詰められていく
コメディでありながら
ここら辺のシーンが上手い
この一連の中で好きなのは
幻影旅団 A級の賞金首
捕まえようと手を出したら殺されてしまう
幻影旅団がクルタ族の敵
ということ追っている
彼らを捕まえるんだ
クラピカ面白いところで
「敵を打つ」と言うのではなく
あくまで「捕まえる」と言ってる
でもそれを聞いてる側は
そんなこと考えると死んじゃうぞ
怖くないのかって言うと
クラピカの返事が
怒りが風化って表現が面白い
キャラクターを一番最初に作った時に
クラピカの何で説明できないのか?を
ダーッていうのと同じように
自分がやることに対しての恐れとか
死ぬことが怖いんじゃないんだって
自分の中の怒りが風化してしまう
「怒りが風化」とは何かって言うと
実は自分の目的は
クルタ族の奪われた眼を取り返すこと
でも
取り返すことを諦めてしまうとか
復讐することを諦めてしまう
これがクラピカの恐れてること
「風化する」の一段目
同時に二段目ももう
第一巻の最初のシーンからあって
風化するとは何かって言うと
復習が目的化してしまうこと
それは自分を失う恐怖
クラピカにとって一番怖いのは何か
自分を失うこと
だから復讐するモチベーションが
なくなってしまうのも怖いし
復讐すること自体が目的化してしまって
自分の中で怒ってるから復讐するんだ
というのがなくなってしまって
ただ単に自分自身に約束したから
全部目を取り返すと約束したからという
義務感で行動するのが
自分の中で一番恐れてること
だから怒りが風化することを恐れる
最新のクラピカの動きは
もうそれになってるんだよね
どんどんクルタ族の眼を取り戻してきて
何のためにやってんのかわからない
取り返した眼を祭壇のように並べて
じゃあ俺はどこに行くんだろう
って言ってるのが
この一巻の一番最初の
怒りが風化してしまわないかを恐れてる
実はもうクラピカの中では
怒りは風化しちゃってる
だからクルタ族のこと言われたら
反射的に怒るんだけども
この時のような
何が何でも幻影旅団を捕まえよう
っていうのがなくなっちゃってる
現在のクラピカの状態が
一巻から予言されてるところが
この作者はこのキャラクターを
最後まで使うつもりでこのセリフ言わせてる
というのが
なかなか面白いなと思う
好きなシーンだよ
キャラを立てる
これ・・まぁゆっくりやるね
カイトって言うね
ゴンが初めて会うハンターで
その人から色々教えてもらうシーン
18巻まで?
まあちょっと登場するんだけど
主人公のゴンは
お父さんのジンに合うのが目的
お父さんのジンに会うのが
目的なんだけど
お父さん出てくるのが18巻ぐらい
初めて18巻で
グリードアイランドのラストになって
ジン「会ってやらねえよ」
みたいなセリフがあって
初めてそこで
ちょっと出てくるシーンはあったんだけど
18巻まで出てこないんだけど
ところが主人公は
そこまで会いたいキャラだから
やっぱキャラを立てるわけだよ
キャラを立てるというのは
子連れ狼の原作者の
小池一夫が提唱して
1970年代に劇画村塾で使った表現
最近はマーケティングとか
自己啓発用語にもなってるし
芸人さんも「キャラを立てる」
という言い方をする
ブランドとかでの
パーソナルブランディングとかも
含めたやつでも
「ブランドを立てる」とか
「キャラを立てる」
という用語を使い出した
小池さんの予言の力というかね
将来を見つめる力は大したもんだと思う
カイトの
ジンさんに色々教えられて
彼は俺の知る限り最高のハンターだ
ジンさんに会わなきゃ
俺は駄目だ(のたれ死んでいた)
ジンさんに会うことは一番難しい
演劇用語で「聞いたか坊主」
聞いたか坊主っていうのは
歌舞伎で幕間に
小坊主が何人か出てきて
聞いたか聞いたか
聞いたぞ聞いたぞって
「何とかだそうだ」「そうなのか」
「四十七士が討ち入りするそうだ」
「なんとすごいことだ」
みたいなこと言うだけども
よく漫画でもドラマでも使うよね
関係ない登場人物とか
一般の登場人物が出てきて
設定を喋ってくれる
今出てきたウテナ?もそうだねウテナもあの聞いた聞いたっていう風なやつかん誰も聞いたか坊主のはまだ完全に聞いたか坊主っていうのを今日午後使うような感じやってるんだけども
見てる人に ジンの凄さ
ゴンのお父さんのジンの凄さを出す
俺やっぱりね
このカイトのセリフの
ジンさんに認めてもらうための
最終試験が彼を探し当てることなのさ
これがどんな狩りより難しい
彼は俺の知る限り最高のハンター
セリフとして大したことないんだよ
さらっと読める
ところが
それを家に帰ってから
ゴンが心の中で復唱
繰り返すシーン
ゴムがお父さんの写真を見ると
最終試験は彼を探し当てること
これがどんな狩りより難しい
彼は最高のハンターだって言うことで
このリフレイン
ジンの写真の
グローズアップを徐々に入れて
目の中の光に
ゆっくりとカメラが行くと
このゴンの視線の方向と
ジンが写真の中からゴンを
見つめ返してることが分かる
この中で徐々に
さっきは大したことがなかった
カイトのセリフが
すごい良いセリフみたいに生きてる
彼は最高のハンターだ
大したセリフじゃないんだよ
でもこの繰り返しの中で言われると
彼は最高のハンターだっていうのが
めちゃくちゃかっこよく聞こえてくる
良いセリフっていうのは
良いセリフを作るんじゃないんだ
その前のシーンまでの
大したことないセリフを
モンタージュして
映像的に並べることによって
ちゃんといいセリフとして作るっていう
漫画を使いこなす富樫の力量の凄さ
他の作家 絶対こんなことしない
俺は本当にハンターハンターが
もうどんなに待たされても
どんなに適当な絵でも
もう許すって言ってんのは
漫画界が生み出した
奇跡のようなやつだと思ってるから
もうちょっとみんな
好きにやらしてみようよって思ってる
こんなことできるやつって本当にいない
ちょっと面白いなと思ってるのは
漫画詳しい人間だったら
誰でも知ってることなんだけども
ここに隙間あるよね
変だろ?
何かって言うと読点「、」
「彼は、最高のハンターだ」
「、」を入れると
読者がそこで詰まっちゃう
「彼は□最高のハンターだ」と読ませる
これね
小学館以外の漫画全部そうなんだよ
小学館だけ違う
参考に出すのがね
「双亡弟壊すべし」
俺も これ最近ね
まとめて買ってはまってんだけど
藤田和日郎の漫画
これ読んでると小学館の漫画って
セリフの後に「。」まで入ってる
句点も読点も全部入ってる
小学館は漫画を
子供に読ませるための
国語教育の一貫として考えてる
小学館は今もそうなってるか
分かんないんだけど
小学館の雑誌は裏のところとか
角のところ見たらマークあるじゃん
少年ジャンプだったら
海賊みたいなマーク
小学館の本っていうのは基本的に
テーブルを挟んで「お母さんと子供」か
もしくは「お姉さんと弟」みたいなやつ
「いい子で本を読んでる」っていう
シンボルマークの会社だから
ちゃんと読ませようとしちゃう
だから
正しく文章の最後には丸
読みは分かちする場所はつまり
さっきの「彼は」の後だったら
ちゃんと点をつけなきゃいけない
わざわざやってくれる
でもね もう小学館ね
少女漫画ではやらなくなってるから
こっちでいいと思うんだけどね
彼は(隙間空けて)最高のハンターだと
この方が漫画の文法としてはいいと思う
ここら辺を愚直にやってくれるところがね
小学館の面白いところだと思うよ
はい お疲れ様でした
最近のハンターハンターですね
何が悲しいかって
連載がいつまでたっても
再開しないということ
それもあるんですけど
もう それどころじゃない
もう そんな段階ではない
本当に悲しいのはですね
作者の富樫さんに対して連載再開を
訴える声がほとんどいなくなってる
それはファンだけじゃなくて
編集部もそうなんじゃないかなと
原因がですね
もうみんなの優しい心が
いつまでも待ちます
先生焦らず腰を治して
ゆっくり自分のペースで書いてください
我々いつまでも待ってます とかですね
そういうのだったらいいんですけども
何かねそうじゃなくて
どうせ再開しないし
再会しても10週間ですぐに終わって
また何年も待つんでしょっていう
まぁいいよ
もう他にいっぱい面白い漫画あるから
読者もみんな諦めて
下手したらジャンプ編集部も
ハンターハンターを頼りにしてない
そんな状況じゃないかなって
「ハンターハンターすでに期待されてない説」
ちょっとあの微妙にですね
自分の言ってることに信憑性感じてる
なんでかって言うと
まずですね
オーソドックスなバトルもので
ストーリー的に熱量があって
読者の心を引っ張っていくっていう
そういうのがですね
一番強かったキメラアント編が
キメラアント編終わったのはもう2011年
実は10年前がハンターハンターの
クライマックスだった
それ以降ですね
ハンターハンターが連載してたんですけども
それは頭を使うわりと地味な話が多い
バトルがあって
ものすごいやり取りがあるような
クライマックスが10年前に終わっちゃって
そっから以降ですね
本当いえば
大きい話と大きい話の
つなぎの頭脳戦みたいなものが
実は途切れ途切れに10年間やってる状態
その間にですね
ジャンプの方向性が大きく変わった
最近のジャンプですね
元々少年ジャンプっていうのは
少年マガジンが青年誌化していった
いわゆる大きいお兄さん達も
見れる漫画を中心にしていった
少年サンデーも
ラブコメとかを中心にして
どんどん中学生・高校生の
お兄さんも読める本になった
しかし少年ジャンプだけは
小学校低学年の子も楽しめる
漫画雑誌であることを守っていた
2011年のハンターハンターの
キメラアント編 終了時の頃まで
しかしこの10年間で
出版自体の不況もずっと続いてる
少年ジャンプの編集方針も
大きく変わっちゃった
例えば一つの時代を築いた
ワンピースとかナルトなんかの
こういう作品
未だ人気あるんですけど
はっきり言って
もう頂点過ぎてる感じがする
ワンピースにしてもナルトにしても
小さい子供も楽しめる作品だった
今はですね
どちらかと言うと
別冊マガジン的なと言うか
かつて進撃の巨人は
少年ジャンプに載せられない
ふさわしくないと言われ
落とされたんですけども
今の少年ジャンプはそうじゃない
今のジャンプだったら
進撃の巨人アリなんですよね
鬼滅の刃なんかもですね
子供達に人気あるんですけども
実は内容かなりグロいところあるし
チェンソーマン
ポスト鬼滅って言われてる 呪術廻戦
まずポスト鬼滅の刃として呪術廻戦
その他チェンソーマンだって
言われてるんすけども
チェンソーマンなんか
かつてアフタヌーンに載るような内容
別冊マガジンに載るような
そういう内容なんですね
何でハンターハンターがすごかったのか
もちろん漫画自身もすごいんですけど
富樫さんでないと
あんな漫画ジャンプに載せられない
ジャンプにはジャンプのルールというか
コードと言うか
子供達に見せられる漫画という制限がある
冨樫さんの漫画っていうのは
実に見事に
残酷な描写・グロい描写をしながら
子供達に気を使って分かるような
お話の中にちゃんと納めてる
そういう制限みたいのが
今のジャンプからもう外れちゃってる
レギュレーションが変わってしまった
言い換えれば
時代がハンターハンターに追いついてしまった
まぁ連載再開がですね
いつまでたっても音沙汰がないとか
ハンターハンターの代わりの漫画が
既にもうある
再開したとしてもかつてのような
熱狂を迎えるのかは疑問というか
そこに行くまでに
今の頭脳戦を終えて
あと何年待たなきゃいけないのか
このような状況の中で
ジャンプ編集部でさえ
もうハンターは
頼らなくてもいいんじゃないか
諦めてもいいんじゃないと
思ってんじゃないのかな
まあそういう不安が僕にはあるので
さっきのような説になったわけです
ハンターハンターですね
いつか連載が再開されますように
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