「誰か」という人はいない
「誰かやっておいてよ」
「誰でもいいからお願いね」
そんな言葉を耳にしませんか?
以前、「気づいた人がやる」ということについて書きました。
ここにも通じるのが、「誰がやるか」が決まっていない仕事の扱いです。
そこで今回は『「誰か」「誰でも」問題』として考えてみます。
1.頼む側の気持ち
「誰でもいいから」という言葉には、相手への配慮や思いやりが込められているのではないでしょうか。
専門性があったり責任が伴う仕事の場合は、「○○さんにお願いします」と指名するはずです。
それに対して誰でもいい仕事は、いわゆる雑用です。簡単で、わざわざ指名してまで頼むほどではないけれど一人ではできないことです。
例えば折り畳みの長机を運ぶとき。一人で無理をして傷めてしまうよりも、確実に安全に二人で運びたいですよね。そんな時に「誰か手伝って!」って言うわけです。
ここでわざわざ「○○さん」と指名するのはなんだか気が引ける、申し訳ない、こんなことやらせるなよって思われるのではと、相手への配慮や思いやりがあるからこそ頼みづらいと感じるのでしょう。
でも、逆の立場だったらどうでしょう?
目の前で困っている人が「誰か助けて」と言っていたら(あるいは言わなくても様子を見るだけで)、思わず助けたくなりませんか?
そして、「もっと気軽に頼ってよ」「遠慮せずに言ってね」なんて声をかけるのではないでしょうか?
頼ってくれたらうれしいですし、例え雑用でも助けになったのならうれしい気持ちになるはずです。
配慮も行き過ぎると遠慮になり、疎遠になります。
『頼られる側だってうれしい』
そう考えて、どんどん指名して助けを求めてもよいと思いませんか?
2.聞いた側の気持ち
ところが「誰か助けて」という言葉を聞いた側は、3つの反応を示します。
①「わたしがやらなきゃ」=当事者意識タイプ
人を助けることが好き、誰かの役に立ちたい、感謝されるとうれしい、という方は自分の仕事を後回しにしても手伝います。
あらゆることに当事者意識を持てるとも言えますが、反面誰がやってもよいこともすべて自分がやらなければと感じてしまい、たくさんの仕事を抱えてしまうことも。
冷静になって自分がやるべき仕事とのバランスを見て、適宜対応することが望ましいですね。
②「わたしはできないから誰かお願い」=冷静沈着タイプ
自分が手伝いたい気持ちはあるけれども、いまやるべきことを後回しにするのは違うと考え、他の人に任せるタイプです。
いま何をすべきかを冷静に判断でき、組織としての役割や仕事の分担を考えられることがよい点です。
ただし、きちんと声に出して他の人にお願いしないと、頼まれていることを無視する形になるため周囲の誤解を生みます。また、いつも断ってばかりいると自分のことを優先する自己中心的な人と捉えられることも。
手伝えない代わりに、コミュニケーションはしっかりと取ることが望ましいですね。
③「わたしじゃなくてもいいよね」=役割分担タイプ
そもそも「その仕事は誰がやるべきなのか」と考え、自分がやるべきことでないものはやらないという判断をします。
役割分担がより明確で厳格なタイプです。その人にしかできないことや、専門性・特殊性のある仕事に集中したいタイプです。
責任の範囲も明確にしたいため、「それは誰がやるべきか」と捉えることができる一方で、やりたくないことはやらないという態度に見えると、チームの雰囲気を阻害することも。
誰かというのはチーム全員を指していて、全体で取り組む課題を与えられたと捉えると、積極的に自分から関わる気持ちが増しそうですね。
いずれも正しい/間違っているというわけではなく、捉え方が異なるために反応が違うというだけです。
でも頼む側はどこかで「きっと誰かが助けてくれる」という期待を抱いています。その期待に応えられるのは、自分(を含むチームメンバー)しかいません。「わたし」から「わたしたち」と置き換えて、チームとして協力することが大切だと思います。
3.ネームコーリング効果
「誰か」「誰でも」という便利な言葉。わたしもつい使ってしまいます。
でも「誰か」という人はいません。
「誰か」「誰でも」は、他人事として捉える要因になります。
だったら「○○さんに」「あなたに」と指名することで、自分事として(当事者意識を持って)捉えられるようにしてはいかがしょうか?
このように名前を呼ぶことを『ネームコーリング効果』と言います。
名前を呼ばれると親近感が湧き、一個人として認められたという心理効果があります。さらに呼んだ側の好感度がアップするというメリットも。
だったら、例え雑用であっても「○○さんお願いします」と頼む方が自分事として引き受けてくれるだろうし、頼んだ側の好感度もアップして、さらに手伝ってほしいことも解決します。きちんと感謝の言葉を伝えれば、お互いが気持ちよく働けます。まさにWin-Winですね。
コミュニケーションにおけるちょっとした工夫で、「誰か」「誰でも」問題から「わたしがやらなきゃ」という課題に変わります。やる気にさせる仕掛けとも言えますね。
誰にでも読者の“あなた”にも、すぐにできる簡単な方法です。
早速チャレンジしてみはいかがでしょうか?
明日も佳き日でありますように