絞め殺しの樹とか
絞め殺しの樹を読む。うーん、つらくておもしろい。
昭和初期、十歳になるミサエは根室の元屯田兵、吉岡家に働きに出され、奴隷労働させられる……というハードな朝ドラのような話。1部ではこのミサエの一代記を、二部ではそのミサエの息子いろいろあって高校生になって大学を出るまでが描かれる。
ハリーポッターの序盤、ハリーがダドリー家にいじめられる中、魔法学校の招待状が届き世界が一変する展開だけど、絞め殺しの樹ではハリーが魔法学校に行ってもダドリー家が待ち構えている……。ちょっとあげたと思ったらすぐに落とす。要するにつらい。そんなところが魅力的なお話です。
絞め殺しの樹というのは、もう言っちゃうと菩提樹のことで、菩提樹は中心となる樹に巻きついて絞め殺すのだそうだ。中心の樹が枯れたあとも空洞を覆うように菩提樹は立つ。そんな樹の下で眠れるやつはよほどの聖人かはたまた、みたいな。この挿話からタイトルがとられているらことからわかるように、菩提樹と中心の樹は小説全体のモチーフとなっている。たのしいね。
私がこの小説ですごいなーと思ったポイントのひとつはヴィランで、何言っても無駄な強キャラ感がよかった。あとつらいイベントの起こし方。わりと予想できない方向から悪意が飛んでくるのでびっくりして泣いちゃった(Twitter)
出てくる男が軒並みひどい……というか、多少歪みがあれど、男たちに対するミサエの視点が切実なので、男は滅びるべきなのかもしれないと思わされる。わたしもアンチ男になりました。
猫小説でもあって、白猫が幼少期のミサエの湯たんぽになるし、そいつの子孫がたびたび現れる。この小説の数少ない癒しを担当するねこたち……。
猫はいいよね。リリンの生みだした文化の極みだよ(?)
いやしかしなんといってもこの陰湿さ、閉塞感、ジャパニーズみがあるというか、なんというか、なんともかんとも……。
直木賞候補筆頭なんじゃないかな。知らんけど。