組織と理想の指導者像(1)ゆるぎなき組織づくり(1)「現代人物論 池田大作」小林正巳著(昭和44年9月25日)第38回

秩序ある組織体
 「人体こそ最高に完璧な組織体である。また、およそ社会機構で組織の存在秩序ある組織体 しないものはない。(略) 組織はその団体の目的、使命達成のためにより価値的に、より効果的に指導、伝達の徹底がなされ、共に全員が、その恩恵に浴し、幸福になるためのものでなくてはならない 」(人間革命)
 組織に対する池田の考え方である。たしかに、政党もそうだし、官僚機構、会社、労組など、今日の社会はすべて組織の時代だ。ほとんどの人が何らかの組織の中で生活しているといってもよさそうだ 。
だが、ゴマンとある組織の中でも、創価学会の組織は団結の堅い点で、きわだっている。世間にはわずか数十人、数百人の組織でも、派閥争い、人間関係の感情的反目はざらにある。その一方で,この何百万人という組織が、それ自体生きもののように整然と秩序だっているのも対照的である 。
 折伏関係を軸とした、いわゆるタテ線、住居地を中心としたプロックシステム。このほか壮年部、婦人部、男子部、女子部、学生部など性別、年代別グループ、教学部、言論部、芸術部など活動の目的別構成、これが複雑にからみあっている。それでいて、一糸乱れず、整然と有機的に機能する様は見事というほかない。

適材適所の人材
 ある警察職員は東京文化祭をみて、「統制力を身上とする軍隊、警察でもあれほどの統一は難しい」といったが、上から命令で動く階級組織の限界を越えたものを感じたからに違いない。
 では、それほど強固な組織を造り上げている要素は何か。社会学的にも興味深い。そこで私は組織の要諦について池田にきいてみたことがある。
「完全に近い適材適所です。親は子の特質が本能的にわかるものですが、それと同じでほんとうに愛情をもって接すれば、自然とその人の特質がわかる。これを最大限に発揮させることです。しかしいうべくしてなかなかできない。そのためには、愛情と包容力そして勇気と決意が必要です。それも急激ではいけない。漸進的でいかねば」また、別の機会には、こうもいった。
 「組織といっても、人間の集団です。したがって 人によって始まり、人によって有終の美を飾るといってよいでしょう。たとえば、地区部長としては優秀だが、支部長としては力が出せない人もいる。そこは画一的な年功序列だけでいくものではない」
 ただ、ここで見落としてならないのは、創価学会における役職のイメージである。それは世間一般の考える名誉職的なものとは違うことだ。この点、池田の指導は徹底している。
 「幹部は名誉職でなく、あくまで責任職です。他の団体、教団などは幹部になれば、それだけの利益があるかもしれません。しかし創価学会はその反対であります。幹部になればなるほど責任が重く、また活動の範囲も広いため交通費もかかり多忙になります。しかし、こうした多忙な学会活動にこそ人間革命があることは、御書に照らして厳然たる事実です」
 「創価学会は会長はじめ理事長、副理事長、また一会員にいたるまで全部平等であり、組織上役職が上だからといってその人が優れていると思うのは間違いです。ともすると、自分を卑下して、そうした人たちを違うように見がちですが、そうした卑屈な心を革命していくのが信心の目的なのです。役職の上下はあくまで単なる役目の違いであり、それによって後輩を見下すようなことは断じていけない。この精神は、永久に忘れてはなりません」

広宣流布の組織
 いずれも、これまでの会合における池田の指導の抜粋だが、四十三年秋の男子部総会の発言では、さらにこの点が強調されている。
 「私達のこの尊貴な組織は、広宣流布を容易にするための唯一の効果的な組織であり、全学会員のための組織であります。断じて幹部が威張るための組織でもなければ、なにかを強制するための組織でもない。また要領をつかう組織でも、卑屈にへつらうための組織でも決してない。皆が安心して溌剌と信心に励むための組織であります。
 これに対し、あらゆる団体の組織は官僚主義の悪弊を免れぬことは明らかです。どんな善意による組織も、そ の主体が妙法なき凡夫であったがゆえに、そうした悪弊を回避することができなかった 。
 妙法を主体とする組織である以上、御本尊の前においては、ことごとく平等であるはずであります。慈悲広大の仏は、決して差別を好まない。私達の組織に役職があるのは、成仏への脱落者をつくらず、全員が幸福への直道を進み、強固な団結をもって 、魔(障害の意味)との闘いにことごとく勝利するためであるということを、私は未来のための遺言として申し上げておきたいのであります」
 遺言というような言葉をあえてつかっていることでも,組織の正しいあり方にどれほど心を砕いているかがわかる。
組織運営のカギ
 「組織論のポイントのひとつは源遠ければ流れ長しです。上流が濁っていれば下流も濁る。たいていは上が濁ってしまうものです。」
つまり、幹部が堕落すれば一般会員にも波及する。そしてやがては組織がくずれるという意味である。「大衆組織の興亡はことごとく指導幹部の責任にかかっている」(人間革命)からだ。
 池田はまた、
「創価学会の強さは 、指導主義を一貫して貫いたことだ」と断言する。それはあくまで人間性の尊重を中心に権威主義にならず,みんながお互いに人間として尊敬しあうことなのだ。
 「自分一人が偉くなろうという態度は、名聞名利に流され、団結を破る行き方になるおそれがある。一般社会の“一将功成りて万骨枯る”という利己主義の方式は、あくまで排撃しなければならぬ。一人が百歩前進するよりも、百人が一歩前進する方が、どれだけ尊いか、測り知れない(大白蓮華 巻頭言)