人類みな一つ(2)広がる海外布教の輪(1)現代人物論 池田大作」小林正巳著(昭和44年9月25日)第43回
驚異の成長率
ここ数年来、創価学会の海外進出は目覚しい。北、南米を中心に世界八十数か国に分布しており、その数も二十五万世帯(四十四年現在)といわれる。
北米では、池田がはじめての悔外指導で訪米した昭和三十五年十月、僅か三百人だった会員がいまでは十万世帯を越えるというから、十年間で三百三十倍という驚異的成長率。しかもなお、月々七千人ほどの新会員が増えているという。それも、はじめのころは日系人がほとんどだったが、今では入信者の九十五パーセントまでが現地人。ときとし日本人旅行者が、外国人に折伏されて入信するサカサマなケースもでてきている。
四十四年、富士大石寺で行なわれた恒例の夏季諧習会には、三十七か国から約二千百人の代表が参加したが、これに先立って、米国サンタモニカで開かれた第六回全米総会には、全米各州および南米の代表約一万五千人が結集。四十七年大石寺の正本堂完成の際は、全世界から一万五千人の代表の訪日が予定されるなど、その動きはいたって活発だ。
そして米、仏、独、プラジル、ペルーなどではその国語の新聞、香港を中心に東南アジアでは中国語の機関誌が発行されている。また 、アメリカではサンフランシス 、シカゴ、サンジェゴ、ニューヨーク、ワシントン、ハワイのほかメキシコ、それに欧州ではパリ、ジュッセルドルフ、アジアでは香港に布教活動の拠点となる会館が設けられている。
海外では、教材として「人間革命」その他が数か国語にも翻訳され、東京の本部とニューヨーク、パリなどがテレックスで結ばれるなど、布教活動はまさに世界的規模に広げられているのである。
外人の入信動機
だが、なぜこうも多くの外国人が入信するのか。日本人のキリスト教信仰は別に不思議と思わない人も、外国人の日蓮正宗への入信には納得のいかないような顔をみせる。この問いに対する彼ら自身の答えはこうだ。
「 ニュー レフト(新左翼)の動きが世界中で活発だが、アメリカの各大学はキャンパスを血に染め、学生運動のすさまじさを物語っている。他方、ヒッピーの思想はより消極的、退廃的な人間群像を生み出している。
この二つの運動は極端に走り、これらの運動に対する反動はますます混迷の度を加えている。良識ある米国の学生が求めているのは、こうした混乱の社会をリードする真の哲学の台頭である。それは抽象論ではなく、力ある哲学である。そして単に多くの知識を求めるよりも知恵を求めているのである。その実体こそ、生命の本質を説いた日蓮正宗の生命哲学なのである。今日、アメリカでは多くの青年が入信し、毎日の実践を通じて、この仏法の偉大さを現実生活のうえに実証している。そして自らが人間革命する姿に喜びを感じ、悩み多き友人たちに話しかけている。アメリカにもこうして新しい時代の潮流が流れはじめている」(四十四年八月、東京で開かれた創価学会学生部主催「第一回世界平和会議」における米人学生の討論の一部)
また数年前入信したアメリカの通信技師はその動機をつぎのように語っている。
「座談会で、宗教は精神修養でないという言葉に興味を覚え、座談会終了後中心者と話しあった。彼は人生に とって一番大切なことは何かを教えてくれた。『正しい思想、哲学をもつことであり、その思想を根本とした指導理念、人生観を理論的に把握しなければならない。宗教とは、その一切を包含した基本ともいえる哲学を指していうのであり、単なる精神修養でも、道徳律でもない』この日を境にして 、私の人生は大き く開かれ 、第二の人生がはじまったといってよい」
このように頭で理解して入信したケースもあれば、
「座談会に誘われて私は驚くべき事実に気がついた。それは先に入信していた友人のめざましい変化だった。生活のすべてに大きなエネルギーと確信を得ているようであった。このような生活のうえでの実証をみて、この宗教はいままでの宗教とはどこか違うものがあると実感した」( アメリカ人、ジャーナリスト)というケースも多い。
外国に見る集会
一般的に 日本国内の場合と同様、はじめは折伏に 強い抵抗を感じていた人たちがやはり圧倒的に多い。それでも、人前ではロクに口もきけなかった知人などが、入信後まるで人が変わったように生き生きとし、確信に満ちて堂々とした態度に変化する様子を実際に見、また友人などに 誘われた座談会の人間味豊かな雰囲気に野せられて入信する傾向が指摘される 。
そして宗教の目的を、生活苦や病身などで人生に明るい希望を失った人々が、精神的な慰めを求めてやるものだという程度に思いこんでいた人たちには、今までの宗教にない何かを感じさせるのだろう。その入信した人たちは幸福を実感するからこそ、まだ信心を持たぬ人への折伏にはげむ。こうして布教の輪はどんどん広がっていくわけだが、池田は四十一年から海外における「創価学会 の組織名を「日蓮正宗」に改称した。認識の浅い海外で創価学会がそのまま、政治団体のように見られることを避けるためであったが、裏返せば、それほど活動が目立つようになってきたからともいえよう。
たとえば、フランスでの学会活動について、パリ在住の幹部は「フランス人は理論好きなので、教学になると目の色を変えて集まってくる。そのため、はじめは月一回だった教学の勉強を毎週日曜日に開くようになった」と伝え、 米コロンプス支部の米人(婦人部長のRさん,二十七歳)は日本の婦人部員との対談で現地の実態をつぎのようにいう。
「座談会でヒッピーがハッピーになった(ヒッビー族が入信で立ち直った意味)光景があとを絶ちません。息子の姿があまりに変わったのにビックリして、親が進んで入信したケースもずいぶんあります。婦人部員の三分の一強が車をフルに活用しています。 片道六十マイル( 約九十六キロ)もあるところで、 多くの学生が入信したので週二回は指導に出かけます。また、郊外に住んでいる人達は車を使ったり、四十分、五十分とバスを使って座談会に 出てきます。何といっても池田会長の指導をよく読んでいくことが一番大事なことだと思っています」
そして「 好きな文証は?」との問いに一般の日本人がきいても意味のわからない「行解既に勤めぬれば、 三障四魔紛然として競い起る」( 日蓮の「御書」の一節)と答えるのだから、正直なところ妙な感じがしないでもない。