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シリーズ “ロコパラ”スペシャル ㈲亀屋菓子本舗(丸彦製菓㈱子会社)鬼怒川『お菓子の城』(栃木県日光市)
丸彦製菓(栃木県日光市、山田邦彦社長)が、2018年6月に完全子会社とした『鬼怒川お菓子の城』がこの夏、本格始動する。東北自動車道の宇都宮ICから日光道に入り、今市ICを経て、温泉郷で有名な鬼怒川へ向かうバイパスに面したお菓子の殿堂は、まさに「お菓子の城」である。
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第3の直売店は夢の城
鬼怒川温泉郷の入り口にある『鬼怒川お菓子の城』(日光市柄倉790-2)のパンフレットのキャッチコピーは「お菓子のワンダーランドへようこそ!」。ファンタジー溢れるイラストの下部には「作り立てのおいしいお菓子をお土産に」と添えてある。
『鬼怒川お菓子の城』は、2018年6月に米菓の丸彦製菓が、鬼怒川の亀屋菓子本舗から買収し、子会社にした第3の直売店。自社生産する洋菓子をメインに、和洋取り揃えたスイーツの殿堂であり、ヨーロッパの城をイメージした威容は鬼怒川バイパスのランドマークといった存在だ。コロナ禍の間、およそ1年半をかけ、新たなコンセプトのもとに店舗を改修し、昨春からカフェも完成して、フル稼働の態勢を固めてきたのである。
「そもそもは温泉饅頭などを作る和菓子の亀屋さんが、バブル景気を背景に新たな事業として構築したものです。銅葺きの屋根や調度など、贅を尽くし、こだわった作りです」(山田邦彦社長)。
しかし、「城」が完成した平成2(1990)年はバブル景気崩壊の前年。観光の大型化で殷賑を極めた温泉郷鬼怒川の観光事業は大きく変容した。さらにリーマンショックや東日本大震災の風評など、相次ぐ試練にさらされて多難な経営の途を余儀なくされていた。
丸彦製菓が買収した2018年は、今に至る新型コロナの感染禍が拡大する前年で、その再建も容易ではなかったはずだ。
世界ブランドの拘り
「亀屋さんのお嬢さんがパティシエで、立派な2階建ての工場があり、洋菓子や和菓子を作っていた。しかし経営の厳しさからお菓子の他にも観光グッズなどさまざまなものを販売していたものを整理し、メインのお菓子の販売品目も大幅に絞り込んだ。また、2階建ての工場も1階に集約して効率化を図りましたね」と山田社長は語る。
おっとりとした口調。米菓の中で育ってきた3代目には、再建の厳しさよりも、将来展望が凌駕しているようだ。
「提供する商品で、ここでしか得られない楽しさ、おいしさで感動して頂きたいし、SNSなどで体験を発信していただけたらよいな、と」
世界遺産の東照宮や、国立公園の自然。日光は世界ブランドである。『鬼怒川お菓子の城』で使用する素材は拘り抜いている。使用する原材料は地元産国内産が基本で、牛乳は日光の大笹牧場から取り寄せ、卵も地元産。北海道産の小豆、小麦粉も国内産で、できる限り国内産原材料にこだわっている。
また、今夏の新製品の『王室御用のかき氷』4品は、天然氷のメッカである日光ならではの「かき氷」に、『鬼怒川お菓子の城』流の拘りを込めたプレミアムだ。
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手ごろ価格にも拘り
販売商品はおよそ50種。人気のアイテムは工場で炊き上げたあんを使ったかりんとう饅頭やどら焼、チーズケーキやアップルパイに、焼和菓子の『鬼怒の月』などなど。あん物では第26回菓子博の金賞受賞の塩羊羹やどら焼、大福まで、和洋がおいしそうな顔を並べる。注目する点は価格である。観光地にありがちな割高感がないところだ。国産にこだわる作りの割に、このお手頃感は嬉しい。例えば『かりんとう饅頭』は1個102円。チーズケーキやアップルパイにはホールとピースが用意されている。
「ギフト商品もありますが、今はご近所に配るという需要は少なくなり、自家用にはたくさんの量のものは余らせてしまう時代。そこで個売りです。買い物かごに好きなものを入れて頂き、箱詰めさせて頂く」(山田社長)
厳選素材のお菓子に囲まれ、カフェでひと休み。ハートを温め&お財布にも優しい『お城』は、まさにお菓子のワンダーランド。世代を超えた観光客のパラダイス誕生だ!
■『鬼怒川 お菓子の城』の概要■ 敷地・3,701㎡、お菓子の城の売場・262.2㎡、カフェ部・62.7㎡、イートインの席数・4人掛けテーブル4つ、厨房を挟むカウンター席6つ。天井が高く店舗内はゆったりとした作りで、店舗部には菓子製造工場(写真下・延べ床面積265㎡)で作られた洋菓子、和菓子に、和洋の焼菓子の他、米菓の約50アイテムが並ぶ。鬼怒川など温泉観光のお客の土産や、休憩のための立ち寄り場所として作られており、土産としての箱入りのほか、好きなものを、好きなだけチョイスして購入できるところがミソだ。店内のカフェではドリンク類が27種、フードが16種。また、家族連れには店外に設けた個室感覚のスペースも用意されている。