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今世紀最大の恐怖の『思い出』
はるか昔、うん十年前に看護師国家試験を受けました。(以下国試) あの頃は看護師ではなく看護婦の時代、看護婦国家試験と呼ばれていました。
問題数は250問、9時から13時までで、途中15分の休憩、、、だったと思う。あまりにも遠い記憶で曖昧です。(もしかしたら240とか中途半端な問題数だったかも)
国試を受けたのは30歳目前「これを逃したらあとがない」と、この国試に賭けていたのでとにかく必死だった。また、わたしが受けた年から状況設定問題というのが新しく設けられ、過去問は無いしでとにかく緊張していました。
試験中、だいたい半分くらい過ぎた頃に、問題用紙と回答のマークシートになんとも言えない違和感を感じました。
「んっ?」「あれ?これ何問目だっけ?」自分が解いている問題は『160』、でも鉛筆で黒く塗っているのは、、、『161?』、、、はっ⁈
国試不合格の大半がこのマークシートミスと言われている。何度も何度も自分に言い聞かせていたのに、、、やってしまった。それも回答用紙を追っていくと、なんと26問めからズレている!
衝撃という言葉では片付けられない、どんな言葉も当てはまらない感情が押し寄せる。恐怖でがんじがらめになっていく。
そうこうしているうちに、
ドキドキ ドキドキ これでもかってくらい聞こえてくる
頑張らないと息ができない
気持ち悪くなってきた
動かしてないのに手が震えてる
鉛筆をうまく持てない
どうしようどうしようどうしよう
完全にパニックを起こしている。
しかし、パニックになんてなっている余裕は1分1秒たりとも無く、次に進まなくてはならない。自律神経を落ち着かせるため授業で習ったのを思い出し、何度も深呼吸をしてみたが1ミリも効かない。
こんな状況で投げ出してしまったら、もう二度と立ち上がれないし、(落ちた時)人は次があると言ってくれるかもしれないけれど、多分無理だろう。来年もう一度受ければいい?冗談じゃない!学力云々の前に気持ち的に絶対に無理だ。今ここで投げ出したら間違いなく次は無い。「どうする?やるか?やらないか?」、、、やるしかない。
できるならその場で泣き叫びたかった。
できるわけがない。
再度深呼吸しようと上を向いた時、『んっ?なに?』という顔をした試験官と目が合った。その瞬間こんなことしてる場合じゃない!と我にかえり、いま頼りになるのは自分だけだ、とにかくやろうと、急に腹が決まり、そこからは問題と回答を確認し、見返す時間はないので、慎重に一問一問マークシートを消しては塗り消しては塗りを繰り返していきました。
途中「間に合わなかったらどうしよう」と弱い気持ちが襲って来ましたが、持ち前の『弱さ』で振り切りました。無理して強くならず、弱いまんまで突き進もうと、がむしゃらでした。(強くならなきゃ、と切り替える時間もなかったです)
最後の問題が終わった時は終了10分前、周りは既に終わっている人たちばかり、みんな余裕でぼーっとしている。
その中で、やった!わたし乗り切った!もうどうなってもいいや!というもの凄い達成感に満たされ、「これでダメなら来年があるさ」という気持ちになっていました(笑
仕事やプライベートでしんどい時、もう逃げ出したいなという時、いつもこの時のことが頭をかすめ、『あれと比べたらなんでもないかも』と辛い出来事の比較対象になっています。また、最近では笑い話に昇格してきました。
あの時の試験官、まだ顔を覚えています。あのキョトンとした顔がわたしの背中を押してくれたんだなー、と最近思えるようになりました。
わたしの人生最大の『思い出』はこれで終わり。
あー、恐ろしや。
最後まで読んでくださりありがとうございます ♡
#思い出 #国試 #エッセイ #今世紀最大 #恐怖