夫婦になった日 #Xmasアドカレnote2019(14日目)
クリスマスイブは、入籍記念日。
言葉にすると、ロマンチックな感じがする。
イルミネーションが光る目抜き通りを、1組の男女が手をつないで歩き、役所に向かう。婚姻届を提出した後は、ゆったりとクリスマスディナーを楽しむ…そんな感じ。
だが、実態はこうだ。
2008年12月24日
全力社畜の私(25)とNOと言えない優しい彼(27)は、イブに入籍すると決めていた。
・イブなら記念日でも忘れない
・イブならちょっと早く帰れそう
というひどく現実的な理由で、残念ながらロマンチックな想いなど一欠片も無かった。
当時の私は、オフィスを追い出される22時を定時としていた。7:00〜22:00のめくるめく労働。だからイブの日は無理やり19時に仕事を片付け、「おつかれさまでした、お先に失礼しまーす!」と声をあげると、「おっ!デート?」とやはりみんな寛容だった。
よし今だ、とばかりに「いまから入籍してきます!!!!」とドヤ顔で宣言し、「ぎゃあああ」という女子達の悲鳴を気持ちよく浴びながら、オフィスを飛び出した。
電車で家に帰る間、ゼクシィから破ったノウハウ記事を開いて、入籍について勉強する。あ、やばい。証人のサインがいるのか。しかも2人も。なんの準備もしていないけれど、なんとしても今日中に婚姻届は出したい。宣言しちゃったから、未達はまずい。
アパートで待っていた彼と、車に乗り込み実家へ向かう。両親は突然の襲来に驚いていたけど、「入籍は結婚式の日じゃないのかぁ」と言いながら呑気にサインしてくれた。
ついでに晩ごはんをつまみ、ケーキを食べる。たしか手羽の煮たやつとか、そんな熟年夫婦のクリスマス献立だった。
久しぶりの実家にくつろいでしまって、気が付けばもう21時を回っている。どうせ時間外に出すのだからいいけれど、もし間違っていたらやり直しだから、急がなくては。
両親に御礼を言って、車で市役所に向かう。そわそわする。正面入口はもう開いていなくて、裏側に回り、コソコソと守衛室を探す。ぽつんと光が灯る場所に、それを見つけた。
「あの、婚姻届を出したいんですけど」
守衛室のおじさんに声をかける。当たり前だけど、ふつうの、おじさんだ。
「はいはい、お預かりしますね。おめでとうございます。」守衛のおじさんはきっと何組もの婚姻届を受け取ったのだろう、極めて事務的にそう言って、私たちの入籍はあっさりと受理された。
守衛におじさんが2人いて、ふたりの間には封をあけたマシュマロの袋が置いてあった。それだけが「クリスマスイブ」をほんの少しだけ醸していた。
拍子抜けしながら、夫と手をつないで自動ドアを出る。ドアが開くまでの一瞬の間、ガラスに映ったふたりの顔がにやにやと緩んでいて、「ああ、私たちは夫婦になったのだ」と思った。
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あれから、11年。私たちは入籍記念日なんてとっくにどうでもよくなって、クリスマスにはごちそうを食べ、子ども達にプレゼントを贈る。
うちの玄関にはクリスマスツリーがあり、毎年1つずつ、オーナメントを買い足している。
初めての子連れ旅で買ったmacy's、アナ雪が流行った年のオラフ、夫の出張土産、スタバのタンブラー型、レゴランドのレゴ…うちのクリスマスツリーには、家族の歴史が詰まっている。
だから、入籍なんてどうでもいい。積み上げたものがあって、今が幸せなら、記念日なんてもうどうでもいいんだ。
でもあの日、ドタバタでも入籍しておいてよかったな、と思う。マシュマロを食べるたび、あの光景が少しだけ脳裏をくすぐるから。
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#夫婦
Xmasアドカレnoteにお誘いいただき、参加させていただきました。なんというか、恐れ多くて胃が痛む。
前日は、嘉晶さん。なんてうつくしい漫画…!
え、前日にこれは、と動揺してしまった。やさしい読後感が体をあたためてくれます。
さて、明日は誰でしょう?
・分析界隈から無償の愛をnoteに捧ぐ、皆のアドバイザー
・note子育て界のパペット・マペット
そう、あの方です!
おたのしみに。
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