ブリしゃぶならぬ、ツバスしゃぶというライフハック
ブリしゃぶが好きだ。
昆布でとった出汁に、白菜や白葱を入れてくたくたにし、ブリをさっとしゃぶしゃぶする。つけダレは、かぼすポン酢か、柚子胡椒。じんわりとろける脂ののったブリ。湯気のむこうに、満面の笑みの家族が見える。
実は先週末にも食べて、あぁ、ブリを倍量買えば良かった…と悔やんだ。だから今週も満場一致でブリしゃぶリクエスト。よしきた、と私は午前中から鼻息荒くスーパーへ乗り込んだ。
が、ブリは高い。扇状に8切れほど並べられた小さなパックが820円。仮に3パック買ったならば、2460円。ステーキが買えてしまうではないか。
ううーん、私の意欲はあっという間に萎み、豚しゃぶ?海鮮鍋?どうしよう、と惑い始める。ブリも、あらだったらとっても安いなぁ。
けれど私の心(胃)は簡単には首を縦に振らない。今夜はブリしゃぶだ!と高らかに宣言したまま、まっすぐにブリを見つめている。
ふと、すぐ隣にあるツバスの刺身が目に入る。大きな2つの柵がパックからはみ出さんばかりに詰められて、698円。あれ、ツバスってブリみたいなもんだよね?ちがった?
カバンからスマホを取り出し、 「ツバス ブリしゃぶ」と検索。うん、いけそう。いける。私みたいな人がわんさかいる。ツバスは、ブリみたいなもん。私はツバスのパックをカゴに収め、意気揚々とビール棚へと向かった。
・・・
出かけていた家族が帰宅した夕方、18時を回った頃、ようやく私はよっこらしょと立ち上がる。土鍋に火をつけ、オレンジ白菜と葱を切り、昆布を浸しておいた出汁に放り込む。オレンジ白菜ってはじめて買ったけど、濃い黄色で美しい。この出汁の海を、もうすぐツバスが泳ぐのだ。なんてラクちんなんだろう。
ちなみに、取り出した昆布はもったいないから刻み、水で戻した切り干し大根と合わせてぎゅっと絞る。キムチの素を大さじ2、ポリ袋に入れてぎゅぎゅぎゅと揉み、置いておく。この間ブッフェレストランで食べた切干大根キムチ、これがおいしいのなんの。
あ、そういえば、と娘が食べたがっていたマッシュルームを適当に切り、にんにくとオイルで炒め、適当にウインナーも足す。箸休めはこれくらいで十分。
そして、ツバスの柵を切る・切る・切る!
大皿に山盛りのツバス。脂はブリより少ないけれど、この量は歓声もの。軽い足取りで冷蔵庫からビールを取り出し、夫と小さなグラスに分ける。
「わぁ~ぶりがたくさーん」子どもたちもウキウキとツバスを泳がせる。かぼすポン酢にどぼんとつけて、えびす顔。ツバスだなんて、訂正はしない。将来、きちんとしたブリしゃぶを食べたら、「このブリしゃぶ美味しいな!?」って驚くだろうし、いいんじゃないの。
こんなに安く、ラクに、幸せな夜を過ごせる。
週末の夜、ツバスしゃぶというライフハック、いかがですか。
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