リスボンで5日間だけの屋根裏暮らし
8月30日が誕生日なのですが、その前に自分を労い誕生日プレゼント的な旅に出たのは8月17日のこと。まずスペインに滞在して25日にポルトガルのリスボンに移動。ホテルではなく、滞在型のアパートを予約してみた。
PINコードが来ない
宿泊先のアパートを予約した際、建物や部屋に入るためのPINコードは直前にお知らせしますという連絡だった。だいたいこういうのって前日か2日前くらいに届くもの。マドリードのアパートではずいぶん前にお知らせが来た。しかしながら、昼ころリズボン空港に着いてメールをチェックしてもまだなし。チェクインが16時からだからのんびりくるのかなぁと構えて、とりあえずアパートまで行ってみることに。道中何度もメッセージを確認したけれどなしのつぶて。やっぱり16時直前まで来ないものなのかと思い、アパートの向かいにあったカフェでしばし時間をつぶす。16時になっても、やっぱりメッセージは、ない。そういえば、宿主と何度かメッセージをやりとりしていて、わたしの名前がいつのまにかユーカからセーラに変わっていた。もしや、PINコードは、どこかの国のセーラに届いているのか? もやもやしながらここで部屋に入れない場合のプランBを考えてみた。リスボン5日間野宿、荷物はあるし可能。いや、ぜったい無理だ。
いたしかたなく国際電話
予約サイトにはアパートの宿主の電話番号があったので、意を決して電話をかけてみた。eSIMを買うときなんとなく電話番号がついているのにして幸いだった(ただし欧州周遊タイプなので番号はフランスのもの)。コールしてすぐに女性が出た。「アパートの前にいるのだがPINコードがなく入れません。教えてください」的な話を切実にしてみたところ、「フランス語でお願いします」と返ってきた。はて? わたし日本人、ここポルトガル。「英語しか話せません」と答えると「フランスの電話番号だけど?」との切り返し。知らんがな、買ったSIMがそうだっただけで。どうやら昨日の夜にPINコードを送付済みとのことだが、何度見ても届いていない。やっぱりセーラに送ってるんじゃないだろうか? SMSにPINコードを送ってもらいなんとかリスボン無宿生活は回避できた。海外を旅するときは英語ができれば十分と思っていたが、ストレートにはいかないものだ。
屋根裏だった
メッセージの指示によるとわたしの部屋はG。1階からA,Bとおかけていくと、4階まで階段を上ることに。GのドアにまたPINコードを入れてドアを開けると、目の前には階段が続いていた・・・。もう一個上? キャリーケースを抱えて階段を上がると、そこは屋根裏部屋だった。屋根裏、それはアルプスの少女ハイジを見て育った女児たち憧れの部屋。干し草のベッドはないが、屋根裏の真ん中には寝心地のよさそうなベッドが鎮座していた。天窓からやさしい太陽の明かりが入り、窓を開けると屋根の上だった。なんて素敵なんだろう。周りに高い建物はなく、向かいの部屋のバルコニーでは洗濯物が揺れていた。上半身はだかのおじいちゃんがタバコを吸っていた。リスボンの日常が丸見えの窓だった。
暮らすような旅
たった5日間だが、このアパートを起点に、リスボンに暮らすように旅してみようという計画だった。石畳の坂道を無駄に散歩してへこたれたり、暑い時間は一旦昼寝に帰ったり。キッチンがあるので夕食は外食せずにトマトやツナ缶を買ってきてサラダを作ってボトルで買ったワインで一杯やったり。ちょっとだけ、暮らしごっこを楽しんだ。写真映えスポットで有名なケーブルカーの写真を撮っていると、「なんとかかんとかのオーナーですか?」と欧州系の男性に話しかけられた。「いいえ違います。わたし日本人ですから」と答えると、「そのなんとかかんとかのオーナーは日本人で、ビジネスで大成功しているんだけど、あなたがよく似ていたから」と。ほほぅ、わたしと似た人物が欧州でカスタマイズしたアクセサリーで成功しているんだ、と、自分のことではないのにちょっとうれしくなったりした。なんとかかんとかの部分をよく聞き取れていないのでググることもできない自分がくやしかったが。
いつもと違う場所でいつもと同じことをする
ひとり旅だと寝る時間や起きる時間、食事をとるとかとらないとか、無計画なことが多い。わたしは書き物をしたりドラマを見たり、プノンペンのアパートにいるのと同じようなことをして過ごす。それって、わざわざ外国にまで行ってやるのもったいなくない? と思う人もいるだろう。けど、”いつもと違う場所”で”いつもと同じこと”をするのがいいのだ。観光地はたくさんあるし、全部見ようと思ったら分刻みのスケジュールでヘトヘトになってしまう。疲れに行く旅ならいいけど、ゆっくり自分の時間を楽しみたいなら、これこそが最上の贅沢だと思う。そして、掃除が入るとか邪魔しないでとかの気を使わなくていいので、のんびり派にはアパートがいいと思う。のんびりしていたけど、念のため報告すると、世界遺産のジェロニモス修道院に行ったり、お城に登ったり、リスボン大聖堂を見たり、そういうこともちゃんとした。
今朝、分別したゴミを公共のゴミ集積場に出してから、アパートを後にし、いまリスボン空港でキーボードを叩いている。ホテルに滞在していたら自分で分別してゴミを出しに行くなんてこともないだろうから、アパートに滞在したよい経験だと思っている。
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