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ことばのチカラ - 友人の手紙は宝物 -

プノンペン中央郵便局に私書箱を借りて7年。手紙やハガキを時々出すし、時々もらいます。高校の下駄箱より地味で無機質な小さなロッカーが並ぶ私書箱用の薄暗い部屋。わたしにとっては日本と世界とつながるワンダーランドなのです。

手書き文字で伝わること

日本に住む友人とも、いまやインターネットを使えば各種方法で瞬時に連絡がとれるし、リアルタイムで顔を見ながら会話だってできる昨今。手紙はもはやオワコンなのでしょうか? わたしの考えはハゲシク、否(イナ)! です。手書きの文字には、その文字が示している意味以上に伝わってくることがあるからです。文字の動きや筆圧で急いで書いたのかな、丁寧に時間をかけてくれたのかなとか感じることができます。紙の端っこが汚れていたりしたら、あらぁコーヒーでもこぼしたのかしら? チョコレートでも食べながら書いたのかしら? などという想像もできて楽しい。間違い文字を二重線したり、毛虫を描いたり、そういったことも愛しい。わたしが大好きな本『雲と鉛筆』(吉田篤弘)の帯に書いてある「人は言葉を手で書いた」という一文がとてもいい。まさに、それだ! と思うのです。

文通武者修行のお返事

先日、私書箱に2通のお便りが届きました。1通はもう6,7年文通をしている友人から。彼女とのやりとりをわたしは”文通武者修行”と呼んで楽しんでいます。パンデミック以前は世界中を仕事で飛び回っていた彼女。手紙もいろいろな場所から届きました。わたしが返信するのは東京宛だったけど。今回は、大きな文字で3枚の便箋から飛び出してきそうな勢いの文章でひとつのニュースについて綴られていました。「うれしくてたのしくてしょうがないことが起こった、それを早く伝えたい! 」そんな気持ちの込められたものでした。読んでいて彼女のわくわくが瞬時に伝わってきたのです。早く伝えたいならLINEなりInstagramなりで、というのが普通(しかも超早い)かもしれませんが、キーボードで叩かれてウェブに乗ってやってきた文字では、もしかしたらわくわくがそこまで伝わらなかったかもしれません。今回も本当に楽しいお手紙でした。

ポルトガルから送ったハガキのお返事

もう1通は、会社員だったころの同僚から。彼女には、8月の終わりにポルトガルを旅した際、ロカ岬に行ったあとリスボンの郵便局からハガキを出しました。そのお返事がプノンペンまでやってきたのです。ブログでもFacebookでも魅力的な文章(と人柄)でたくさんの人を惹きつける彼女。届いたハガキには、おそらく0.5ミリのペンを使ったのだろう見惚れるくらい美しい、あの懐かしい文字が等間隔で並んでいました。「会いたい人に会い、行きたい場所に行き、食べたいものを食べ、飲みたいものを飲む(呑む?)」とわたしを表現してくれたことに、笑っちゃったし、同時に大きく励まされました。そうだ、わたしはそうありたいしこれからもそういうふうに生きて行こう! と。手書き文字で書かれたことばのチカラを感じて、思わずハガキにハグをしました。

私書箱を借りて友人と手紙やハガキのやりとりをするって、もしかしたらものすごく贅沢な遊びかもしれないと思っています。こうして、宝物が増えてゆくのでした。
Thank you for your warm letter.

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