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タイムマシーンに乗って51日前のわたしから届いたハガキ

40代の最後記念にスペインとポルトガルを旅したのは8月末のこと。もうずいぶん前のような気もするけど、まだ2ヶ月ほど前の話し。先週、旅の思い出がふわっとよみがえってくる出来事がありました。1枚のハガキにまつわるお話しです。

旅の最後に郵便局へゆく

旅の最後はリスボン。帰路につく前日、Baixa-Chiado(バイシャ・シアード)駅のすぐそばにある郵便局に行きました。目的は、ハガキを出すこと。1枚は札幌に住む友人へ。もう1枚は自分へ。ポルトガルへ来た目的は、ユーラシア大陸の西端のロカ岬へ行くこと。ロカ岬は、宮本輝の小説「ここに地終わり海始まる」を読んで行ってみたいと思っていた場所です。この小説の中で主人公はポルトガルから届いたハガキに励まされ続けるのですが、わたしと同じくこの本が好きな友人が札幌に住んでいるのでロカ岬に行ってきた日に彼女へのハガキを書きました。自分へは、リスボンを発つ日までわたしは49歳、プノンペンに到着すると50歳という歳をまたぐ面白い旅だったので、40代のわたしから50代のわたしへのメッセージをしたためたハガキを出しました。

ポルトガルの郵便事情

観光地だからか、お土産屋さんや雑貨屋さんでポストカードを買うと、(スペインもそうだった)「切手はいる?」と聞かれました。お願いすると、すてきなシールの切手を売ってくれます。それを貼って出せばいいわけですが、街なかのポストから国際郵便は出せるのかどうかが不安だったので、一応郵便局に持っていきました。窓口にいたふくよかなおばちゃんにポストカードを見せると、外のポストに出すようあごで指示されました。せめて指か何かで指してほしかったけど、外に出てみると郵便受けみたいな穴があったので、他にそれっぽいものも見当たらないし、中に戻って聞いてもまたあごをしゃくるだけかもしれないし、えいやー、と投函してみたのです。この穴がポストでありますように・・・。

 cttが郵便局。右端の青いところに投函できそうな穴があった

地球をぐるぐるしてやってきたハガキ

プノンペンに戻ってから数日間は、ポルトガルで出したハガキのことを覚えていました。しかし日々のあれこれに忙殺されて、すっかり忘れてしまった10月半ば。そういえばと思ってプノンペン中央郵便局に借りている自分の私書箱の中を覗きに出かけました。私書箱を開けてみると、ポルトガルのタイル模様のハガキが1枚、底にへばりつくようにそこにいました。

この無機質な感じのロッカーのようなものがプノンペン中央郵便局の私書箱

来た! キタキタキタキタ! 投函したのが8月28日。ハガキに押されたプノンペン郵便局のスタンプの日付が10月14日。投函から47日かかってプノンペンの私書箱に入ったことになります。届いてから4日後にわたしが手に取ったので、手元に届くのに51日。ポルトガルからプノンペンまでは同じユーラシア大陸上にありますが、地球をぐるぐる2周くらいしてきたんでしょうかね。ハガキ殿、長旅、お疲れさまでございました。

ハガキはタイムマシーンに乗って

ハガキに書かれていたのはわたしの文字(自分で書いたのだから当たり前)で、照れくさいけどまずは自分への「誕生日おめでとう」。続いてこれからやりたいことが2つ書かれていました。最後は、「笑顔いっぱいの自分でいよう!」でしめくくられています。自分で考えて書いたことだけど、忘れているものですね。51日前のリスボンからプノンペンにやってきたハガキは、まるでタイムマシーンに乗ってきたみたいな感じ。自作自演のタイムマシーン。覚えておきたいことや備忘録ならスマートフォンに打ち込んでメモっておくのが手っ取り早いのかもしれないけれど、時空を超えてやってきた文字には何かが宿っている気がします。ときどき読み返してみようと思う何かが。

またいつか自分にハガキを書いてみようと思いました。文字をタイムマシーンに乗せて。

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