ポストアンコール探訪2- 心の目で見る古都ロンヴェークの城壁に勝手に浪漫
ポストアンコールというのは、アンコールワットで有名なアンコール王朝の後の時代のこと。ポストアンコール時代の都のひとつであるロンヴェークを探訪しに出かけた我々3人は、シルバースミスの村を経て午後3時をすぎてようやくロンヴェークに到着したのでした。
ロンヴェークは何年ごろの都?
カンボジアの都で有名なのは、言わずもがなアンコール、そして現在のプノンペン。その間には、スレイサントー→プノンペン→ロンヴェーク→ウドンと都が転々としています。わたしのイメージでは、奈良時代に平城京から恭仁京、信楽宮、難波宮に遷都した、それと被ります。ロンヴェークは16世紀ころに都が置かれていたそうです。16世紀の日本といえは、戦国時代、そしてイエズス会の布教によるキリシタンの時代でもありました。それでこの時代ロンヴェークに日本のキリシタンたちが禁制を逃れて住み着いた日本人街もあったようなのです。地図で見ると(下の地図をもっと拡大すると)ロンヴェークには10以上のお寺があります。そのことが、ここに都があったということを物語っているのかもしれません。しかし、行ってみると、普通の田舎の村でした。
王都へと続く道
我々3人組は、カンボジアに住んでいる日本人というだけで、学者でもとくに歴史に詳しい人ではありません(先輩は比較的詳しい)。なのでここで書かれていることは史実とはかけ離れたものであることを忠告しておきます。ただ、今回のミッションのひとつは、「都を囲んでいた城壁(のようなもの)があっただろう場所に行く」でした。文明の利器google mapを頼りに進んだ国道5号線からロンヴェークに向かう道は、真っ直ぐで街路樹に迎えられました。
「まさに王都に向かってるって感じじゃないっすか? 」「街路樹が王様をお迎えする家来見たいですよね」思い込みというのは恐ろしいもので、我々はすっかりそんな気分になってしまいました。
心の目に写った城壁
ロンヴェークの真ん中あたりで、google mapを見て、城壁があったんじゃないか的な、それっぽい場所で車を止めてもらいました。城壁と書いていますが、中国の城塞都市ような壁ではなくて、イメージは土が盛られただけの土居。そういう想像をしながら、歩いてみたら、なんと。
この感じ。お堀のように見えなくもない。そして左側のこんもりした感じは、そこにいたおばあちゃん曰く「牛が入らないようにしているもの」と言っていましたが、それは現代の話で、土居のような城壁ではないか? と思ったのです。ここだけじゃなくて道路を横断した反対側もこんもりと続いていたからです。
王都に続く道に引き続いて、我々の心の目には、これが古都ロンヴェークの城塞に見えたのです。嗚呼浪漫、勝手ながら。しかし、王都に続く道にしろ、城塞にしろ、本当かどうかはともかく心の目で見て楽しむ、それでいい気がします。歴史探訪は、フィーリングを楽しむものであり、歴史は感じてこそ面白いのではないかと個人的に都合よく思っています。そう考えると、今回のロンヴェーク訪問はかなり満足の行くものでした。
ロンヴェーク探訪こぼれ話
今回のポストアンコール探訪で、シルバースミスの村を経てロンベークの城壁を見に来たのですが、その前に、2つ寄り道をしました。というわけで本題のロンヴェークに至るのが午後3時になってしまったのですが。まず、プノンペンの郊外のルッセイケオというチャム族が多く暮らす村の魚市場を覗いて見ました。いつも車で通りすぎるだけで、一度寄ってみたいと思っていた場所に、今回は思い切って。
いつも見ていた光景は、表で魚が売ってある場所、つまりこの市場の氷山の一角。奥に進んでみると「へい! いらっしゃい! 」的な活気のいい魚市場でした。魚のにおいや何かの汁たっぷりの水たまりでスニーカーに水をひっかけながら突き当たりまで行くと、川岸へ続く下り坂がありました。降りてみると、魚を干している棚がたくさん。奥からHello! と声をかけてきた家族はチャム族の方々でした。こぼれ話だから言ってしまうと、わたし以外の旅友2人は前夜の深酒がたたって二日酔いヘロヘロ状態。この干し魚を見て真剣にこれをつまみに一杯やりたいと思ったのは、きっとわたしだけだったと思われます。
それから昼食をとりにウドンへ。香川県で有名なアレではなくて、プノンペンに移る前の都の地名ウドン。今もプノンペンから日帰りで行ける観光地としてにぎわっています。板敷の上でくつろぎながら、チキンの丸焼きやらスープやらを堪能していると、「お金をくださいな〜」みたいな人たちもやってきます。そしたら、この方もいらっしゃいました。
ゆらゆら踊りながらやって来たこの愉快なお方。シャツの第3ボタンあたりが外れているわよ、と思ったら、地黒なおじさんがニヤニヤしながらこちらを見ていました。あまりにも面白いので、ついつい寄付をしてしまった我々です。
カンボジアといえばアンコールワットを目指して旅する人が多いと思いますが、結構じわじわと面白い場所があるんだなぁと思った日帰り旅でした。ポストアンコール探訪は、これからも折を見て続けたいと思っています。仲間募集中。