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お供え

晩ごはんを食べようと居間に入ったら、なんだか懐かしい匂いが立ち込めていました。

香水のような華やかなものでもなければ、お茶のようなよい香りでもありません。どちらかというと、人の生活臭とでもいうんでしょうか。実家から離れて生活している人なら分かると思うのですが、久々に実家に帰ったときに部屋の中に漂ってる匂いのような、そんな匂いが漂っていました。

『はて? この香りはなんじゃ?』と不思議に思いながら、準備された今日の晩ごはんの小鍋に箸を伸ばします。

小鍋の中のさつまいもを熱さに苦戦しながら食べていると(ぼくは猫舌)、母が「今日はじいちゃんの命日だぜ」と教えてくれました。

「あれ? じいちゃんの命日って10日じゃなかったっけ?」と振ると、それはぼくの勘違いでして、実は今日なのだそう。もう極楽浄土に旅立ってだいぶ経つからね。勘違いも仕方ないですわ。

ここで、フと居間に立ち込める匂いの正体を思い出しました。

これは、小さいころに遊びに行くと必ず感じていた、じいちゃんの家の匂いでした。

台所でふたりでいちごに溶かした砂糖をまぶしてイチゴ飴を作ったり、冷蔵庫から出してきた冷たい玄米茶を二人で笑いながら飲んだり、秘蔵の日本刀を二人で眺めてガクブルしたりしてたときに必ず感じていた、じいちゃんちの匂い。

その匂いが、居間から漂ってました。

「ひょっとしたらじいちゃんが遊びに来とるのかもしれんのう」

そう思いまして。

だったらちょっと菓子でも出しといてやろうかと思い、先日パン屋で買ったかりんとうドーナツごまきなこ味を3つほど皿に乗せてテーブルの上に置いておきました。甘党だったからね。言うほど柔らかいものでもないけど、その辺は大目に見てくれじいちゃん。

そういうことをすると普段なら『なにやってんのwww』と必ず茶化してくる母ですが、不思議と今日は「じいちゃんにお供えじゃ」と言うと、それ以上は何も言ってきませんでした。

命日にじいちゃんの匂いを感じるなんて、不思議なこともあるもんです。

なんだか懐かしい気持ちになった、2021年初冬の日曜日でした。

今日のこの体験は何かに残しておきたいなぁと思いまして、久々にnoteに投稿した次第でございます。

しかしこの寒さ、どうにかならんもんかね(;・∀・) じいちゃんよ。遊びに来てくれてるならこの寒さをなんとかしてくれ。

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