#17 シナイ山で死にかけた話⑫
シナイ山7合目くらいの小屋で、小屋番のおっさんが入れたティーをひとしきりシバいたので、出発です。
時刻は深夜0:00から1:00くらい。
小屋番のおっさんも「この時間から登ってどうする~~」的な感じですが、ここに居てもね。
煙草無心されるだけだし。
自然石階段750段
ラクダの道はここから悔い改めの階段と合流し、自然石で出来た階段を登ることになります。その時は知らなかったけど、ネットで調べたら750段くらいだそうです。
ここからはオンザキャメルことはできず、ノンザキャメル、自分の脚で登るしかありません。
階段は基本的にシナイ山の岩肌で、そこに多少人の手が加えられ、登りやすいように付近の岩で段差をなだらかにされています。
膝丈くらいもしくはそれ以上の段差もありますが、おおむねそれ未満。時間をかければ、老人や子供でも登れる感じ。実際、巡礼者には高齢の人も多いようです。
余談ですが、膝丈を超える段差の登山をするときは、基本四つ足のイメージで前に手を着きながら登ると、脚だけに負担がいかずに全身に負荷を散らしながら、サクサク安全に登れるイメージです。
血気盛ん
山頂が近いことを知っているだけに、テンションは上がってきます。
振り返ると拡がる超満天の星空に照らされつつ、勢い良く登っていきます。
気温はだいぶん低いですが、10分もすると心拍数はあがり汗が流れ始め、暑い&キツイい。
防寒着はリュック&ボストンバッグの中にねじ込み、中に来ているパーカーも前のチャックは開ける。何ならTシャツになってもいいくらい。
乳酸が溜まって休憩を申請したいですが、それの言い出しっぺになるのはダサいイキフン。
ラグビー選手ばりにボストンバッグを抱えてひと際キツそうなユウキにもっとキツい思いをさせたいという愛情も相まって、止まることは能(あた)わず。
最近思う事
私は2021年の年始くらいから一念発起して、もう1年半以上肉体改造をしています。
運動ゼロ、仕事上(?)の深夜の飲食で、高校時代56キロ、大学時代60キロだった体重は、76キロまで増加、首回り、腹回りにもでっぷり肉がついて肉体的にもしんどかった所、肉改造開始半年で体重は18キロ減の58キロまでダウン。痩せすぎて逆に体調を崩したので今は64キロくらいを維持するようにしています。
筋トレと食事制限なので、筋肉量も大幅に増加したうえで、体脂肪率は27%から今10%ちょっとくらい。肉体年齢も44歳くらいだったのが27歳にまで下がりました。
サウナに行くと、周りの男の子達がエッチな目で私の身体を見てくるのが少し快感な、グラマーな女性の気持ちが解りみになってきた41歳です♡
いけない!筆が止まらない!!
最近筋肉の話ばっかりするから、「noteではてめーそれ絶対禁止な」とウシロに言われていたんでした。
ニーズは絶対あるでしょうが!!
とはいえ、絶対ダイエットとかボディメイクについてはニーズがあると思うので、この「シナイ山で死にかけた話」シリーズを終わらせ、ちゃんと会社のPRもした後に、ウシロのOKが出れば、いつかその話もしたいと思います。
言いたかったのは、若さに関係なく、普段から足腰を使ってないと歩きとか登山ってキツいということ。
逆に年齢がいっていても普段から運動していると、運動していない20代の時よりも肉体的パフォーマンスは高いということ。
最近は、小倉で飲み事があった帰りは6キロくらいある門司の自宅まで歩いたり、朝は自宅の背後にある戸ノ上山の途中まで登ったりしていますが、たいしてキツくなく、寧ろ心地よい。季節も感じれるし。
肉体的にも精神的にも、運動を習慣づけることは非常に大事だと40になって気づきました。
でも、痩せると風邪はひきやすくなります。その面においては、ぽっちゃりボディーは最強の抗ウイルス効果があると思います。
とりあえず、今の私なら、このシナイ山の階段もたいして息も乱さず登りきる自信があります。
武士は食わねど高楊枝
正直シンドイけれど、それを言ったら負けゲーの様相。
ユウキだけが「キツイ」「ダルイ」「カエリタイ」的な不平不満を躊躇(ためら)いなくまき散らします。
今だったら「勾配きちいど」って言うんだろうなぁ。
うーーん。いい音色(こえ)で囀(さえず)りおるわ。ヨキヨキ。
ユウキに不平不満を言わせるのは私のライフワークの一つです。6歳からだからもう35年、そろそろこのゲームも折り返し地点かな。
でもちゃんと離脱せずに付いてくるから偉いよね。ボストンバッグもうぶん投げ始めてるけど。
既に標高2000メートル。標高が高いことが関係あるのかどうかは知りませんが、イキって登り続けるので、インナーのTシャツは汗だく、周りの温度は低いので身体からは湯気が軽く立ち上がってます。
視界からは岩肌の割合がどんどん減っていき、星空の割合がどんどん増えていく。
感じる、感じるぞ、頂上が近いってことがな。
ついに着いたぞ!シナイ山頂!!
視界から岩肌が消えた。
角度のある傾斜最後の岩を踏みしめる。
時刻午前2:00くらい(多分)、標高2285m、シナイ山の山頂に到着。
身体からは白い闘気が立ち上がっている。
着いたぞ!!
当然誰もいない。
山頂は50メートル四方か、そこまではないけど100メートル四方くらい岩だらけのまあまあ平らな空間になっている。
その中の高い岩に登り周りを見渡すと、視界には空しか存在しない。
360度パノラマの超満天の星空~大量の流れ星を添えて~
宇宙空間に放り出されたような感覚。
母なるマザーの胎内に戻ったような感覚。
やだっ!
イッツソーロマンティック!!
ナウ、ロマンティック!!
台無しボーイ着到
没入感の深い所に浸っていると、背後からドサッという音。
振り返り下を見ると、ヴィトンのボストンバックが転がっている。
息も絶え絶え、キツさを通り越えて半ギレ状態のユウキが到着です。
ドサッというのは歓喜のぶん投げで飛んできたヴィトンのボストンバックが地面に落ちた音のようです。
「ユウキこっち来てん。すげえけん。」
(はぁ、はぁ)
「どうせ星でっしゃろ?わて、それどころやおまへんねん。勘弁してつかーさい。」
※実際は関西弁ではない。
岩を背もたれにして、地面に座り込む。
息を整えながら、ポケットから煙草を取り出しマッチを擦って紫煙を吐き出す。
うーーーん。
ノーロマンティック!!
俺も一服しよ!
小屋はどこだぁ?
台無しボーイのお蔭で現実に戻り、火照った身体のままご来光まで時間を潰す小屋を探します。
一番乗りの特権じゃい!
当然安全のための柵などあるはずもないので、星で目は効くといえど変なところで足を踏み外したら崖下まで転落?滑落?の恐れもある。
慎重に山頂を探索。
あった!小屋!!
三匹の子豚の小屋はこれくらいかなーといった大きさの小屋発見。
中腹の小屋みたいに粗い絨毯が敷き詰められているといいなぁと思いつつ、入り口のドアを開けようとする。
ガチャガチャ。
開かんやんけ!!
よく見るとドアノブが鎖と南京錠で固縛されている。
こんな所の小屋に施錠してどうする~~!!
お、キリの良い文字数になりました。それでは次回。
あと1話、いや2話かな。