PKを外すことができるのは、PKを蹴る勇気を持った者だけだ
タイトルにした名言ですが、皆さんご存知ですか?
もうあれも29年前の出来事なのか、と思うと自分も歳とったと思うわけですが、94年W杯決勝のPK戦、イタリアの名手ロベルト・バッジョが最後5人目でPKを枠外に外したんですね。
それでイタリアは優勝を逃したわけですが、そんな彼が残したオールドファンなら誰でも知っている名言です。
ところで、サッカーのプレイ経験者は結構世の中には多いと思います。ワタクシもその数多くいる中の1人ではあります。
そして、試合だとしても、練習だとしても、PKを蹴ったことがある人も一定数いるでしょう。
ですが、公式戦のPK戦で蹴ったことある人はどのくらいいるでしょうか?結構少ないと思います。
いわんや、そのキックが直接勝敗を決める場面で蹴ったことがある人は、数えられるほどでしょうし、さらに「負けたら即引退」的な場面だったら尚更です。
そもそも今はどのカテゴリーもリーグ戦が中心になっていて、試合数のわりにはPK戦までもつれ込む数は少ないです。トーナメント形式の大会で、しかもその大会中に上に行けば行くほど実力が均衡した時にはじめてPK戦までもつれ込まれるシーンが出てきやすくなるかと思います。
昨日、中学生である愚息のチームがそんな試合になりました。負けたら終わりのトーナメント、3年生の主要大会はこれが最後。地域の代表決定まであと2勝。準決勝的な試合でした。
正直言うと、力関係で言えば明らかに我がチームの方が上。ですが、昨日はあいにくの大雨。しかも、人工芝グラウンドに水たまりがそこそこ出来るほど。当然ながら実力差がうまり、何が起こってもおかしくない状況に。
さすが、我がチームは終始押し込むことは出来たが、最後決めきれず。前後半・延長戦含めて0-0で終了。PK戦に突入。
ちなみに、愚息はスタメンで出るも途中足を削られて負傷退場。
PK戦、我がチームは後攻。
先攻 〇→〇
後攻 〇→〇
で迎えた3人目、相手チームのPKを見事ストップ。一方で、我がチームは成功。1つリードを持つ
その後、運命の5人目、相手チームは成功し、我がチームは5人目が決めて勝利を狙う
先攻 〇→〇→×→〇→〇
後攻 〇→〇→〇→〇
そしてキッカーは、愚息が負傷退場した際に交代で入った選手。そりゃものすごいプレッシャーだと思ったよ。
まさかのキックミス。6人目に突入
先攻 〇→〇→×→〇→〇
後攻 〇→〇→〇→〇→×
うなだれる5人目の選手。勇気づけるGK。「俺が次止める。」そう言ったかどうかはわからないが、そんな言葉が聞こえた気がしました。
そして、運命の6人目
相手チームのキックは、、、、見事GKがストップ。本当に止めた。湧き上がる会場
そして、我がチームの6人目、あっさり決める。緊張なんてなかったのように。湧き上がるチームメイト、ベンチの選手、ベンチ外の選手、そしてスタンドで見た家族の方々。
でも、その瞬間、相手チームの6人目の選手が、膝から崩れ落ち泣きじゃくる姿を確認しました。
正直、このPK戦。愚息は引っ込んでたので蹴らないとはいえ、見てられなかった。去年のワールドカップのクロアチア戦や2010年のパラグアイ戦。あれより怖かった。
このチームをもっと見ていたい。その気持ちが強すぎて、本当に負けるのが怖かった。
でも、その気持ちは相手チームとその関係者も同じ。これで3年生の主要大会は終わり。中学サッカーが終わりを告げる、そう思うと自分の目から熱いものが、、、
最後外した選手、スタンドに挨拶したときも泣き崩れてたのよ。きっと家族も来ていたんだろうな。家族だけじゃなくて、必死に応援してくれた仲間やその家族の皆さんの思いを感じたんだろう。もう立てなくなってた。
そして、チームメイトも素敵だった。寄り添って、肩貸してあげて、慰めてた。みんなも悔しいだろうに。
ワールドカップだろうが、中学の大会だろうが、背負うものは一緒なんだ。と思い知らされました。みんな、何かを代表して、背負って、人生かけて、サッカーしてるんだ、と。
あの選手、高校でもサッカー続けてくれるかな。
そして、また対戦するところを見たいな。昨日の試合でも、CBの愚息とマッチアップだったし。
その時は、晴れたグラウンドで返り討ちにしてやるから、めっちゃ強くなって欲しいな
つらつらと書きました。
思うままに殴り書きしました。でも、自分の30年以上にわたるサッカー観をめちゃくちゃアップデートするような試合だったので、書き留めておきたいと思い、こうやって残しました。
最後になりますが、最後の選手だけでなく、今回PKを外した3人の選手に送ります。
君たちの「PKを蹴る勇気」は、今後の人生の糧にしかならない。胸を張って欲しい。