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危機対応のためのバランスシート - 生き残るにはどうすればいいのか。

 「損切丸」は都合約30年銀行に勤めてきたが、そのほとんどが「資金繰り」に関する仕事だ。邦銀での7年間はよく融資業務で「貸借対照表」 ↑ を見る機会が多かったが「財務」と「資金繰り」は切っても切れない

 東上野にある支店で外国課に配属されていた時は約60社の中小輸出入業者を担当したが「財務部長」がいる会社はほんの一握り。ほとんどは社長が兼務しており、皆口を揃えて「資金繰りで頭が一杯」と嘆いていた。

 特に今回のように経済危機が訪れて倒産が相次ぐ事態になると、中小企業は生き残りをかけてバタバタすることになる。今もご苦労されている経営者の方がいらっしゃると思うが、こういう時大事なのは何か。「資金繰り」と「バランスシート」の観点から大まかに3つのタイプに分けてみる。

 (言葉の定義)

短期投資 - 1年以内に回収される投資。商品在庫、短期債券、売掛金、株式(短期売買)等。

長期投資 - 1年以上に渡る投資。工場、設備、不動産、長期債券等。

短期債務 - 満期1年以内の借入、社債、買掛金等。

長期債務 - 満期1年以上の借入、社債、長期コミットメントライン等。

自己資本 - 出資金、株式(固定株)、内部留保(利益剰余金)等。

投資収入 - 商品売買の粗利、配当・利息収入、家賃・手数料収入等。

固定費  - 固定的に支出される費用。家賃、人件費(正社員)等。

流動費  - 事業の状況に合わせ増減する費用。借入金利息支払、広告費、交際費、手数料、保険料、人件費(非正規社員)、事務費等。

 まずは今回のような危機対応に脆いタイプⅠ

危機不適応型

 (特徴)自己資本、保有現金が少ない、*短期債務、固定費が大きい等。

 今回の「コロナ危機」は「公衆衛生危機」であり、人出が強制的に抑制される点極めて特殊であるが、収入が激減すると言う点では重大な経済危機に違いはない。今も大きな問題になっているのが「固定費」、特に家賃と人件費だろう。飲食店などはいつ顧客が戻ってくるか見通せない中、固定の出費だけが嵩む。これは恐怖である。

 バッファーとして「現金」を多く持っていれば凌げるのだが、タイプⅠの企業(もしくは個人)はその余力がない。おまけに短期借入金の返済もどんどん迫ってくる。このタイプはそもそも恒常的に収入<費用=資産取り崩しで凌いでいた、いわゆる「赤字経営」。いずれ淘汰される運命にあったので、銀行に借入を依頼しても断られるだろう。高利の消費者金融などに手を出して傷が深くなる前にこういう会社は畳んだ方が良い

 *リーマンショック前の欧米の大手投資銀行のバランスシートは、実はこのタイプⅠに近かった。過剰な「短期債務」依存。違いは①(目先の)投資収入が大きかったこと、②資金の調達力があったこと、だが、やはり破綻してしまった(政府が救済)。早く畳んだ方が良かったのである。

 そして飲食店や中小企業の多くが属するとみられるタイプⅡ

危機耐久型

(特徴)ほどほどの自己資本、現金、採算ぎりぎりの収支等。

 ①固定費の支出にはまず保有現金で対応し、②流動費の中から無駄な費用を削減③短期投資から回収④余力があれば借入金を圧縮、もしくは金利の安い制度融資に乗り換え、etc. etc. 頑張れば3か月程度は凌げそうだ。

 今回の「緊急支援対策」のメインターゲットはここだろう。せっかく「良い商品」(含. おいしい料理等)が提供できるのに財務上の制約だけで潰れるのはもったいない。救えるなら是非救って欲しい。

 銀行も内情を精査の上、可能な限り融資はしてきそうだ。特に地銀、信金はこれまでお金を貸せなくて困っていたわけだから、ここが出番と張り切っていると聞く。ただタイプⅠとの見分けは実は難しいので、どれだけ「融資ノウハウ」が残っているか、銀行によって成否が分かれるだろう。

 そしてこのような危機になっても万全なタイプⅢ400兆円もの内部留保を抱えてきた日本の大手企業群がこれに入る。

危機適応型

 トヨタのように念を入れて新たに銀行と借入枠を設定する企業もある。守りの面もあるだろうが、おそらく危機後の新たな投資に向けて万全を期すための策だ。個人で言えば「富裕層」がこれにあたるが、虎視眈々と投資機会を窺っている余力があればこそなせる技である。

 このタイプ分けは個人にも当てはまるので、自分がどの辺りに位置するのか、考えて見るのも良い。1番危険なのが、本来コストを減らす努力をしなければならない「タイプⅠ」なのに、「タイプⅢ」のように「投資機会」ばかり窺うこと「お金持ち」のように余力があれば失敗しても次があるが、「崖っぷち」で同じ事をすればあっという間に崖下転落である。

 「投資」はいつの時代もそうであるがチャンスはピンチ(逆も真なり)。自らを客観的に俯瞰してまずは出来る事、するべき事が先だ。今の「富裕層」もそうやってコツコツ財を築いてきた人達が多いと思う。よく「ケチ」と言われたりするが、彼らは「お金」の価値を知り抜いているのである。

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