見出し画像

韓国「外貨準備高」の怪 - 介入資金に4,000億ドル全部は使えない?

 お盆明け、いきなり株安、円高に見舞われ、連休を取っていたトレーダーの中にもバカンスをキャンセルした人もいるかもしれない。仮に休んでいてもこんな相場では気が気ではないだろう。

 「損切丸」、あまり同じネタを追いかけるのはスキではないのだが、韓国ウォンと株式指数(KOSPI、KOSDAQ等)には触れざるを得ない。ウォン安と株価下落は歴史的な出来事になる可能性があるからだ。

 円高と株安に正しく対処できなかった日本の民主党政権同様、現在の韓国政府もはっきりいってマーケット音痴である。昨日も「ホワイト国除外返し」発表をきっかけに、日本の休日にも関わらず為替市場でウォン安が進行した。おそらく市場に精通したスタッフがおらず、適切な対処方もわからないのだろう。(もっとも市場など無視しているだけかもしれないが...)

 まあしかし、やっと韓国副首相がウォンの「変動率」(安くなった、とはいいたくないのだろう。どこまでも虚勢)に言及した、という記事を為替相場に専門性のあるロイター社が今朝報じた。多くの為替関係者が既に指摘しているが、ここ2か月近くのウォン安局面では、不自然にウォンが反発する場面が何回も見られ、公表されてはいないものの韓国政府によるウォン買介入があったと認識されている。

 しかし不思議なことがある。韓国の外貨準備が6月末でも4,000億ドルのままだという。??? 今の政権だと嘘でも本当のように言ってしまうので、発表をそのまま鵜呑みにはできないのだが、外貨準備の内容を見ると日本などと比べて不自然なことがある。( ↓ ご参照。「新宿会計士」さんのブログより抜粋させて頂きました。)

画像1

 日本の外貨準備は、そのほとんどが溝口財務官の時の大規模なドル買・円売介入によって得た米ドル。財務省による運用は「安全運用」を基本としているので、表のようにそのほとんどが米国債(93%)だ。米国債市場は世界で最も流動性の高い市場の1つなので、いざドル売・円買介入を実施する場合はすぐにドルに換金できる。

(参考)ドイツ、スイスの米国債のほとんどは民間保有分で、実際の国の外貨準備は欧州通貨がメインであると考えられる。

 さて、韓国の外貨準備。中国もそうなのだが、日本と違い外貨準備と米国債の保有高に相当の開きがある。韓国は米国債の比率が25%しかない。(中国は37%)それでは何に投資されているのか? 可能性は大きく2つある。

1. 自国の銀行に対するドル資金貸出

 韓国は言わずと知れた「貿易立国」であるが、決済のほとんどはウォンではなくドル建である。従ってドル資金の需要は相当高いと思われるが、国内の銀行は信用が低く、必要なドルを余裕を持って調達できる状態ではない。実際筆者もドル資金を扱う部署にいたが、韓国の銀行の人と会うたびに「ドルを貸してくれ」と繰り返し言われて辟易したものである(これは日本の地銀なども同様)。ドルの調達力は銀行の信用力を計る1つの目安だ。

 そこで、これは中国にも共通なのだが、政府が国内の銀行に外貨準備のドルを貸している可能性が高いと思われる。運用面で見ても米国債に比べればかなり高い金利が得られるため一石二鳥のようだが、これには大きな弱点がある。喫緊のドル売りの介入資金に使えないことだ。仮に国内銀行に貸しているドルを回収しようとすれば、今度は銀行の資金繰りが逼迫するからだ。中国であればAIIBなどに資金が回っている可能性もあるだろう。

2. 高利回り債、ジャンク債、あるいはその他のドル建投資

 利に聡い韓国人、中国人のことである。巨額のお金が手元にあれば当然高収入を目指すことは想像に難くない。格付けの低い高利回り債、ジャンク債などを購入している可能性もあるし、場合によってはドル建の不動産投資などに手を出している可能性さえある。ただ、これらは米国債と比べれば市場流動性がかなり低い。途中で換金してドルを引き上げようとしても大きな損がでたり、買い手が見つからなかったりするので、やはり喫緊のドル売り介入資金としては使えないのである

「損切丸」の推論:韓国で実質ドル売・ウォン買介入に使える外貨準備は4,000億ドルではなく、米国債を中心とした900億ドル(9.5兆円相当)程度。それも既にかなり介入に費やしてしまっている

 副首相の発言から市場にはやや警戒感が見られ、ドル/ウォンも一度1220に突っかけた後1218台でもみ合っているが、どうも戻す気配が見られない。ウォン買介入しているのかもしれないが、マーケットの後追いになっていて効果も薄い。市場との駆引きで揉まれてきたアメリカや日本と違い介入手法も熟練されておらず、外貨準備のドルが底をつけばひとたまりもなかろう。結局馬鹿を見るのはウォン安で資産を失う韓国国民である。

 ウォン売りをしかけているトレーダーが今一番恐れているのは、韓国が日本と和解することである。そうすると全てが逆回転する。しかし...なにしろ元大統領がいつも投獄されたり暗殺されたりするお国柄である。それでは国内的に政権が持たないであろうから、可能性はかなり低い。

 何せ出てくる対策、発言などが市場的には「的外れ」なものばかりで、リスクをとって仕掛けるには絶好の状況。韓国の方にはお気の毒だがこのままいくところまでいくのではないか。これをひっくり返すには、韓国内の民意の変化が必要だが、「不買運動」などに血道を上げている現状を見ると見通しは暗い。(気持ちはわかりますよ。日本人も「自民党政権を打倒した!」と酔っ払っていた時期が長くありましたから。でもその結果は...)

 もちろん韓国だけでなく、香港もイギリスもアメリカも中国も結構際どい状況に陥っている。「熱い夏」はまだまだ終わりそうにない。

いいなと思ったら応援しよう!