
バケツリレーはどういう場合にやるべきか?
災害被災地の活動や日々の朝市運営で「大量の物資を運ぶ」という作業をよくやってきた。そういうときにバケツリレー(数珠つなぎに並んだ作業員による連続手渡し方式)をやりがちなのだが、じつはバケツリレーをやらないほうが圧倒的に速いこともある。
以下、どういう条件においてバケツリレーをおこなうのがいいかを記すので、作業するときに思い出してみてほしい。
じつはバケツリレーを実行するべきシチュエーションを判定する条件は2つだけである。
(1) 運搬路のどこかにボトルネックが発生するとき
(2) 運搬物がひじょうに重いとき
このどちらか、もしくは両方が満たされるときだけバケツリレーをおこなえばよい。
(1)のボトルネックとは、たとえば車両後端だけが開口する幌付きトラックに米袋が山積みされているときだ。トラックの荷台幅はかぎられていて、たくさんの人が米袋の山に同時にアクセスすることができない。また運ぶにつれて作業員が奥に入っていくことになるから、トラックの荷台の段差を上り下りする必要がある。
あとはたとえば運搬していく通路の途中に細い部分やドアがあり大人数が同時にすれちがうことができない場合である。
こういう作業をスローダウンさせる要素(ボトルネック)が存在する現場はバケツリレーを使うといい。
ボトルネックが発生する作業現場の場合、全体の運搬スピードはボトルネック部を荷物が通過するスピード以上にはならない。つまりボトルネック部の速度が最速になるように作業全体を設計するといい。場合によってはバケツリレーのラインを複数本作るといいだろう。
(2)運搬物がひじょうに重いというのは、たとえば20リットルの水が入ったポリタンクとか、30kgの米袋とか、セメント袋とかである。それが山積みになっているのを移動させるという作業だ。
こういうものを手に提げて長い距離を歩くとたいへん疲れるので、ポンポン受け渡して短い運搬と休憩を交互におこなうほうが疲労感が圧倒的に少なくてすむ。
ただし条件がある。荷物の形状が安定していて受け渡しに苦労をしなくてすむことだ。持ち手のない重量物は手渡しそのものがボトルネックを生んだり取り落とす危険があるのでこの限りではない。(たとえばつかみどころのない丸い大石など)
条件はこれだけである。この2つの条件がない場合は大人数が荷物に集まってどんどん運んだほうが速い。なぜならいちばん速いのはなんといっても休んでいる人を減らすことなのである。
つまりはもしボトルネックが発生する現場であれば、まずはボトルネックを解消する努力をしたほうがいいということだ。そうすればバケツリレー方式を採用する必要がそもそもなくなる。トラックの荷台の荷物に3方向からアクセスできるように準備しておけば作業は圧倒的に速くすすむ。
つまりはプロセスの全体設計を前もってやっておくべきだということだ。それができない場合のみ(1)ボトルネック(2)重量物──の2点に着目してバケツリレー方式を採用しよう。