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怪しい紙を買っていた時代
『情況』2025年冬号からはじまる五庵保典さんの連載『危ない編集者・ライターは何処にいるのか 吉永嘉明を探せ!』に取材協力させていただきました。
初回から青山正明さん、ねこぢるさん、山野一さん、根本敬さん、宇川直宏さん、末井昭さんら、錚々たる面々の名前が出てくる中、吉永さんの元担当編集者で「失踪直前まで親しくつきあっていた」という立場で不詳わたくしも(かなり)登場します。
このような先輩方に紛れて自分の名前が出てくることも感慨深いですが、なにより『情況』に載る日がくるなんて夢にも思わなかった……。
大学生の頃、DUNEの林文浩さんから宮崎学さんの『突破者』を薦められたのがきっかけで宮崎さんにハマり、宮崎さんが学生時代に民青系のゲバルト部隊に属していたことから「左翼」という存在に突き当たった。そして、ゲバを調べるうちに、新右翼団体『一水会』の見沢知廉さんにたどりつき、ハマる。
自分自身は右でも左でもなくアル中だったが、国に対してなにかしら強い想いを持つ人たちの意見に興味を持った僕は、新宿の模索舎に通い、一水会の機関紙『レコンキスタ』をはじめ、『ざ・右翼』『インターナショナル』『コミューン』などを買い漁っていた。その左右関係なく思想強めの紙媒体を蒐集していた頃、「最左派雑誌」と目されていたのが『情況』だった。
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そのうち、模索舎だけでは満足できなくなった僕は、下北沢の某所で怪しい紙を買うようになった。そこには、「極秘」と書かれた公安調査庁資料などが販売されており、当時の僕は狂喜乱舞したが、今考えればそんなものが千円やそこらで市場に出回るものだろうか……。真贋は定かではない。
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同じ頃、すでにグラフィティマガジンの『KAZE MAGAZINE』が発行されており、こちらも林さんから薦められたが、自分にはまったく理解できず、〝非合法の文字〟ならゲバ字の方がクセつよだろと『アジビラ集』を眺めていた。
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まわり回って今ではすっかりグラフィティ好きになり、『情況』に載る。人生なにがおこるかわからない。