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星野源を知った時の話
2016年の12月頃、見るとはなしに朝のニュースを見ていたら、「紅白初出場が決まった星野源さんにインタビュー」というコーナーを偶然目にしたのだった。その時見た「SUN」のMVと曲そのものがとても印象的で紅白が楽しみになった。他の曲も気になったけれど、当時の星野源は「CDで聞いてもらう」というスタンスだったので、CDショップが近所になく、まだネットショッピングの使用に慣れていなかった自分はそれを利用することも考えつかず、ボー、と見送っていたのだった。
そして翌年、いつもはドラマなど見ないのに、その日はたまたま何の予備知識もなく「逃げるは恥だが役に立つ」(逃げ恥)の2回目を見た。ドラマ自体も大変面白くて翌週が楽しみになった。久しぶりに面白いドラマに出会った気がした。と、思ったところでエンディングで「恋」が流れた。劇中では頼りなげな役を演じた男性が、歌ってキレキレのダンスをしている!「恋」をテーマにして「二人を超えていけ 一人を超えていけ」なんて。なんて不思議な歌詞なんだろう!え、星野源?確か紅白で見てたよね私。この人こんなにお芝居も上手なんだ。(※この段階では「コウノドリ」での出演、演技を知らない)
そして今度こそ本気で掘ろうと決めたのだった。で、掘っているうちに気がついた。2012年NHKBSで「LIFE」というコント番組を見て、1人だけ若くて何となくおかしみがあるのにお笑いの人ではなさそうな俳優さんがいたことを。名前もわからないまま記憶に残ったその人が、星野源だったことに。(2007年のファイブミニのCMでも見ていた、とさらに後で知る)
私は「逃げ恥」や「恋」で、やっと自分の中に散らばっていた星野源のカケラを1つにできたと思う。1度そうやって星野源を掴んだ後は、もう掴まれっぱなしである。学生時代、クラスメイトが「誰それが好きだ。誰それのファンだ。」と言っても、全くそのような対象はいなくて、大人になったらもっとそういったこととは遠ざかってしまっていたのに。そんな私が,生まれて初めて自ら進んでライブを聞きに行こうと考え、実行してしまったのはすごいことだ。自分再発見である。想像以上の喜びと楽しさワクワクした気持ちは、年を取って硬くなったと思っていた自分の感情や精神が、まだしなやかでいるのだとも思えて嬉しかった。
因みに私が星野源のエピソードで一番好きなものは、病気後の静養期間、夜の散歩中にプリンスを聞いた瞬間、それまで暗く沈んで見えていた町が一瞬で輝いた、というものである。音楽は人を救う、ということを改めて実感する場面は美しく、本人の言葉で語られ書かれる体験を私もまた追体験する。そして音楽のその力を知る人が、自分の才能をかけ心を込めて作る作品によって、私は自分を肯定され日々救われているのである。