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進歩的資本主義-崩壊からの脱出

おはようございます。中流階級のアルキメデス岡本です。

香港問題が混沌となる一方、アメリカでの暴動が拡大しています。

アメリカの人々は、コロナ禍の自宅待機中、こうした人種がらみの問題を自宅で見続けてきた。
もちろん人種差別問題は昔から続いているが、今回はトランプ大統領のツイッター上の発言も、火に油を注いだ。

トランプ大統領は、ツイッターで、暴動に対し「略奪が始まれば銃撃が始まる(when the looting starts, the shooting starts)」と武力行使を辞さない構えをみせた。実はこの表現、1960年代の公民権運動の取り締まりで使われた言葉と同じなのだ。多くのアメリカ人は、この言葉から強い黒人差別を連想する。実際、歌手のテイラー・スウィフトなどは猛烈に批判している。

この投稿に対し、ツイッター社は「暴力を賛美する内容」とし警告文をかぶせたが、怒りの収まらないデモ隊はホワイトハウスに押しかけた。アメリカは、最初のデモから5回目の夜を迎えている。SNSでは、「PLEASE BE SAFE(どうか安全に)」という言葉がトレンドに入った。

米中関係が悪化し脱中国への足並みを揃えたいトランプ政権にとってこれは大きな逆風だ。トランプの長所は大胆な行動力にあるが、短所である過激な発言が災いしてこの暴動は起こった。このままだと、大統領選の再選も危うい。既にアメリカ全体が冷静さを失い感情的になってしまっている。

アメリカ資本主義の崩壊

黒人差別、コロナショック、経済格差、資本主義など色々な要因が重なり合っているが、そもそもの原因はなんだろうか?

それはやはりアメリカ型の資本主義システムにあると言わざるおえない。アメリカ型の資本主義とは一体何なのか?

つまり倫理がない貪欲な自由主義経済だ。

現在、アメリカなどの先進国で事態がいい方向へ進んでいないというが、それどころではない。世界中に不満と憎悪が蔓延している。

過去四半世紀にアメリカを支配していた経済学や政治科学の考え方によれば、こんなふうにはならないはずだった。1989年11月9日にベルリンの壁が崩壊すると、フランシス・フクヤマは「歴史の終わり」を宣言した。ついに民主主義と資本主義が勝利を収め、これからは経済がかつてないほどの速さで成長を遂げ、豊かさが全世界に広がるだろうと考えられた。アメリカはその先頭に立っているはずだった。

だが2018年になるころには、この高邁な理想も地に落ちて砕け散ってしまったようだ。2008年の金融危機により、資本主義がかつて思われていたほど完全ではないことが明らかになった。資本主義は効率的でもなければ、安定しているわけでもなかった。その後の相次ぐ調査により、過去四半世紀の成長の恩恵を主に受けていたのは、最上層にいる人たちだということがわかった。

市場に任せておけば製品やサービスの生産を効率的に管理できるという思想が、これまで深い影響を及ぼしてきた。それが資本主義の理論的基盤とされてきた。だが2世紀にわたる研究の結果、私たちはようやく、アダム・スミスの言う「見えざる手」がなぜ見えないのかを理解した。そんなものは存在しないからだ。

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「市場に任せる」というスローガンはもはや意味を成さない。かつて右派はこう考えた。市場を再編し、それに伴い政治も変えていかなければならない。こうしてレーガン政権時代から、最上層の人々に有利な市場の再編が始まった。だがそこには、大きな過ちが4つあった。

第1に、格差の拡大が多大な影響を及ぼすことを理解していなかった。第2に、長期的な思考の重要性を認識していなかった。第3に、共同行動の必要性に気づかなかった。公正で持続可能な成長を実現するには、政府がそれを推進していかなければならない。そして第4に、これが何よりも重要な点だが、イノベーション経済を推進しながら、知識の重要性や、テクノロジーの基盤となる基礎研究の重要性を十分に理解していなかった。

つまり、過去二百数十年にわたり資本主義の成功を支えてきた重要な要素を軽視した。その結果、当然予想すべきだったことが起きた。成長の鈍化と格差の拡大である。

コロナショックはその引き金に過ぎない。

国の富を生み出す3つの要因

今回の目的は、何よりもまず、国富を真に生み出すものが何かを示し、経済を強化しながらその利益を公平に分配していくにはどうすればいいかを明らかにすることにある。成長を万人に行き渡らせるためにはまず、国の富を真に生み出すものが何かを理解しなければならない。

富を真に生み出すものとは、第1に、国民の生産力・創造力・活力、第2に、過去2世紀半の間に見られたような科学やテクノロジーの進歩、そして第3に、その同じ期間に見られたような経済・政治・社会組織の発展である。経済・政治・社会組織の発展には、法の支配、規律正しい競争市場、抑制と均衡により制御され、「真実を語る」機関を幅広く備えた民主主義体制の確立が含まれる。これらの発展が、過去2世紀にわたり生活水準の大幅な向上を支えてきた。

だが、40年ほど前から憂慮すべき2つの変化が見られるようになった。成長の鈍化と、大多数の国民の所得の停滞または減少である。それとともに、最上層にいるごく少数の国民と残りの大多数の国民との間に、巨大な溝が生まれた。このまま進路を変更しなければ、何も変わらない。経済や政治や社会はますます機能不全に陥っていく。これまで数世紀にわたり進歩を支えてきた科学や機関や制度、とりわけ真実を語り評価する機関への攻撃が続けば、成長はさらに鈍化し、格差はさらに拡大するばかりだろう。

中流階級を復活させる経済の実現

ここで、希望に満ちた一言を加えておこう。豊かさの共有を推進できる簡単な改革案がある。政治的には必ずしも簡単ではないかもしれないが、経済学的には簡単な改革案である。

私たちは、広く共有されている基本的な価値観(銀行家が示してきたような貪欲や不誠実ではなく、経済・政治・宗教の指導者がよく口にするようなもっと高い価値観)と一致する経済を生み出せる。そのような経済は、私たち個人や社会を望ましいものに変えてくれるに違いない。それは、大多数の市民が望みながらも、手の届かないものになってしまっていた「中流階級」の生活を市民に提供する、より人間味があり倫理のある経済システム。「進歩的資本主義」である。

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言うまでもなく経済は目的達成のための手段であって、目的そのものではない。第2次世界大戦後の数年間にはアメリカ人の生まれながらの権利だと思われていた中流階級の生活は、いまや大半のアメリカ人にとって手の届かないものになってしまった。(日本も同様だ。)

だがアメリカは、当時よりはるかに豊かになっている。大半の市民にその生活を提供するだけの力は十分にある。適切に設計され、十分に規制された市場と、政府や市民社会のさまざまな機関とが力を合わせるしか、新たな世界を切り開く方法はない。

過去の失敗は、未来のプロローグとなる。テクノロジーの進歩を適切に管理できなければ、アメリカはディストピアへと突き進んでいく。格差はいっそう拡大し、政治はさらに分断され、市民や社会は理想とかけ離れたものになるだろう。

自らの首を絞める資本主義を救う時間はまだある。











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